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僕はあいみょんを聴いてる(3)

あいみょんの3枚目のアルバムを聴いている。「ホップ・ステップ・ジャンプ」とか「アン・ドゥ・トロワ」とか、何でもいいけれど進歩の三段論法を明確に体現しているアルバムだと感じた。

なんという上から目線だ、と自分に恐ろしくなるが少々の感想を述べさせていただきたい。

メロディーも、歌詞も、尖っているけれど洗練されている。
メロディーはキャッチーになったと言ったほうがいいのかもしれない。

歌詞に使う言葉がシンプルで、組み合わせも単純と言えば単純なのだけれど、一曲の中での構成が上手だと思う。

その言語センスは、もちろん曲の中で発揮されてると思うのだけれど燃え殻さんの『ボクたちはみんな大人になれなかった』の巻末コメントで遺憾なく発揮されていると感じた。

全部載せたいけど、それは書いた人にも悪いし、買った者の特権を自ら溝に捨てている感じがするから、ちょっとだけ。ちょっとだけよ。

思い出さないでいるつもりだったことを思い出したんだ。
私たちがいるも大切にしていたことを、思い出したんだ。
いつだって初めてに近い触れ合いをすること。
慣れないこと。それが自然になること。
指さえも愛おしくなること。思い出してしまった。

「天才になるには天才のふりをすればいいってダリは言ってる」と、豪語していた。
気づけば365日×4を過ぎ、結局オザケンにもなれず、カジヒデキにもなれず。
あなたの最後の人にもなれなかった。

ここまで人間的で、生活に潜む些細な感情をかきむしられた小説は今までになかった。
的確に刺してくる。
直接心臓に炭酸をかけられたみたいに
シュワシュワ弾けてキュっとなる。

胸のあたりで初恋と同じ音がした。
とても素敵で優しい音だった。

こんな言葉を読んでいて、私はむしろあいみょんが書く物語を読んでみたくなった。以上は燃え殻さんの『ボクたちはみんな大人になれなかった』の巻末にある、あいみょんの「アンサーソング」という文の中からピックアップしました。

この言葉たちを読まなかったら、こんなにあいみょんの歌を聴くことはなかったでしょう。いやはや。

若いのにすごいなあ、なんて感想は相手をバカにしているし、「お前は宇多田ヒカルっていう人を知っているのかな?ん?」と詰問されそうだから言わない。

あいみょんだからすごいのだ。たぶんね。若い子が歌ったって若い子に受けるわけではないし、おっさんに受けないわけでもない。

それにしても、40過ぎのおっさん(燃え殻さん、失礼!)が書いた小説に若年層が呼応するというのは面白い。

面白い?意外?

いや、どうなんだろう。
意外にも中年男性と女子高生・女子大生は精神年齢的に釣り合うという話を聞いたことがあった。誰の本だっけか。ホルモンと人格についての話だったような…。(ホルモン≠マキシマムザホルモン)

案外幼稚で、世の中の汚さに対して冷笑的な態度を取るところが似てるんだったかな。

まあ偉い人とか、すごい本とかのお墨付きなんてなくても、知ってる。
はじめての彼女が自分を振った後、ものの1週間でおっさんと付き合いだしちゃった系の私としては、痛いくらいに知っている。

若い女の子とおっさんの相性のよさなどなきゃよかったのに、とか今更思って勝手に怒ったりしないくらいには、私の時は進んだらしい。

以前は、20歳すぎくらいはやけにそれに腹を立てていたっけ。

ああ痛い痛い。今回『ボクたちはみんな大人になれなかった』でそこら辺の傷もえぐられたのだった。痛い、痛い。

ちょっと語っただけでクサく痛くウザくなりがちな、今の私の自分語りのようにならない自分語りを人は「私小説」というのだ。

その意味で燃え殻さんの小説は「私小説」だ。それも、とってもいい私小説。

言葉がからっからに乾いていて過去が涙ごと朽ち果てそうな描写もあれば、現在と未来がまるごと大洪水にさらわれそうな描写もある。ちょっとぶっきらぼうな感じもする。私小説。自分語り。

でも、人の心を打つのだ。それが。

僕があいみょんについて書くのも3日目。
残念ながら「ホップ・ステップ・ジャンプ」は体現できそうにない。

あいみょんは3作目で洗練されたのに、私のむしろ文章はごっちゃになってきた。もともとごちゃごちゃなのにね。更に。

しかも私はまだ一番言いたかったことを書いてなかったりする。

「燃え殻さんの小説があいみょんを理解するための超いい感じの補助線になってたことに気がついた。こんなに必然性がある巻末解説は初めてだ!」

こんなことをいいたくて書きはじめたのに、まだそれを言ってないなんて…しかも今言っちゃうなんて…記事終わるのに…。

それは明日だ。明日ちゃんとで終わらせよう。
ちょっといい感じにシメてやろうじゃないか。

だから今日の夜も、僕はあいみょんを聴いてる。

酒と2人のこども達に関心があります。酒文化に貢献するため、もしくはよりよい子育てのために使わせて頂きます。