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悲しみの淵に立った朝、猫に救われた朝

心音が止まると、同時にぬくもりは消えた。悲しいことがあった。自然と涙がこぼれ落ちていた。親族の訃報を受け取った朝。覚悟はしていたもののそれが事実になった途端に、いとも簡単に揺るぎなかったはずの精神はぐらついた。まるで強く触れたらすぐに壊れてしまうガラスみたいに。心が壊れそうになって、ギリギリのところでなんとか耐えたそんな朝。

午前中は何も手に付かなかった。飲み物も飲まず、髪もボサボサのままで顔を洗う気力もない。だから、ずっと猫と一緒にベッドにいた。生後4ヶ月の小さな体。小さくともこの心音は鳴り止まない。白黒の毛並みがとても美しくて、やんちゃなところがやけに男っぽくて、トイレやお風呂にまでついてくるほどのかわいさと愛しさを兼ね備えている。

いつもなら早朝に暴れ出す猫が今日は空気を読んでくれたのか、とても静かに僕の腕の中でスヤスヤ寝ていた。もしかしたら猫には、人間の心情をうまく読み取る機能があるのかもしれない。こちらは猫の気持ちなんて全くわかりやしないのに、猫はこちらの機微によく気付く。夜中に突然暴れ出したり、早朝に起こされたりなど大変なことはたくさんあるけれど、悲しいときはいつもそばに来て寄り添ってくれるやさしさがあるとても大切な僕の家族だ。

お昼を過ぎたあたりから流石に眠れなくなって、ベッドから身を乗り出した。水道の蛇口を捻ってコップにお水を注いで、喉の奥にガッと流し込む。涙を流した分よりも多くの水分を取ったはずの体はまだうまく機能しない。そんな僕を見兼ねた猫が、僕の横からピクリとも動こうとしない。またしても猫に救われている。

お腹の虫がぐーッと部屋に鳴り響いた。僕がお昼ご飯を食べるとともに、猫もキャットフードにがっつく。いつもより勢いが強いその理由は朝ごはんを食べずに、ずっと僕のそばにいてくれたからである。そんなところまで気を使わなくていいんだよ。ごめんね。猫は本当にやさしい。それに猫は人と比べると体温も高いため、温もりをより強く感じられる。もはや猫様とお呼びしたほうがいいのかもしれない。

我が家のにゃんこの魅力を書こうと思えばいくらでも書けるけれど、それは僕が独り占めしたいからあえてここには書かない。2人しか知らない秘密を共有する。これが男の友情だ。そして、猫が苦しいときは僕がそばにいて支えてあげようと思う。

猫のやさしさのおかげで少しずつ元気が出てきた。おそらく今日は使い物にならないけれど、明日はきっと大丈夫なはずだ。そう信じて、今日は猫をうんと甘やかしてあげようと思う。

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