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ホールデン・コールフィールドに愛を込めて

久々にサリンジャーのキャッチャーインザライを読み返した。
最後にちゃんと読んだのは18歳のときかな。今はもう23歳だから5年ぶりだ。

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僕は本の虫というわけではないんだけれど、この本には思い入れがある。
この物語の何が良いかって、主人公のホールデンが僕にそっくりなひねくれ者だってこと。でもそんな僕をホールデンが見たらきっと彼は僕のことを「一見知性がありそうなインチキ野郎」って言うだろうね。

ホールデンは酒とか女の子のことしか考えてないようなアホな男たちを見ると、"脳みそがすっからかんな奴ら"とか言うくせに、知識人ぶってる(実際そうかも)男たちを見ると"退屈な奴ら"とか言うような嫌な奴。

ちなみに、僕のお気に入りのホールデン節は、彼がNYのたくさんの女の子たちを眺めながら、"この子たちは救いがたく退屈な男たちと結婚しちゃうんだろうな"ってことを考えて気が滅入ってるところかな。

実際僕もそうなんだ。彼のように、大学でアメフトなんかやってガタイの良いやつが女の子を口説いているのを見たときや、何かにつけて偉そうに評論家気取りのやつや、流行りの音楽にすぐ飛びついちゃうような人らを見るとうんざりしちゃうんだ。まったく。

それでも僕は彼が憎めないし、なんなら好きだね。彼には誰よりも人間っぽさがある。でも僕が彼の魅力をこんな陳腐な文章で説明するのは、なんだかすごく野暮ったい。

あまり確かな記憶ではないけれど、高校生のときに読んだ時の僕は彼に凄く賛同していた。実際久々に読んでも僕は彼によく共感する。でも少しだけ大人になってから見返すと、なんだか少しだけ恥ずかしくも感じる。
共感性羞恥心みたいなものかな。

初めてこの本を読んだとき、僕は失恋した直後だった。まさにどん底だったね。読み返したきっかけも失恋なんだけれど。
とにかく、こうやって落ち込んでる時、ホールデンはいつだって僕が崖から落ちるのを救ってくれている気がするんだ。Catcher in the Ryeのようにね。

ただ何か救われる言葉があるわけではないけれど、読んでいる間は彼の語りの一つ一つに夢中で、読み終える頃には一種の爽快感のようなものが残る。

彼は永遠の16歳でありフィクションの存在だけれど、もしも彼に一言伝えるのであれば、"君の弟のように君は僕の中で生きているんだ。"と伝えたい。

僕はぜひ君に一度本を手に取ってみて、文章から余すことなく彼の魅力を感じ取って欲しい。あなたが学生とかなら尚更ね。そうじゃないなら知り合いや子どもに勧めるのも良いね。
とにかく、君がこの本を読み終える頃にはきっとホールデンのことが愛しくてたまらないはずだ。

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