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夏のくるぶしを蹴飛ばしたかった

 この家のカーテンは丈が足りていない。ここに引っ越してきた当時からそうなのだ。だから、上手く寝付けないまま夜明けが近づいてきたときには、カーテンの下の隙間から夜明けの青白い光が染み込んでくる。それを見てうわ朝だ、と嘆くことが少なくない。

 今年の夏は暑い。朝っぱらから既に暑い。仄暗い中眠っている私を暑さが起こしにかかってくる。起き上がってみると、カーテンを閉めたままでも今日が暑い日なのだなと分かる。

 窓に近づいてみると更に暑い。これはカーテンを開けてしまったら陽射しに殺されかねないと思って、閉めたまま朝食を作って食べることにした。

 座椅子に座りつつ食パンをもそもそ齧っているとじんわり汗がでた。そうしてふとカーテンの方を見た時、ああこれは夏が部屋の中に侵入しようとしているんだなと思った。ほらだって、もうそこに夏のくるぶしが見えているんだから。私は夏のくるぶしを蹴り払ってやりたくなる。夏を転ばせてやろうか。でもやっぱり汗はかきたくないから、もう少しだけ猶予をあげよう。

活動の源になります……