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未だに蝉がベランダのすみに居るのです。

 天気がいい日には大抵洗濯物をベランダに干しているのだけれど、その度にベランダのすみを確認してしまう。そこにはやっぱり蝉が転がっているのだ。今はもう春が訪れたと言ってもいい時分だけれど、夏の終わりごろから今の今までずっとそれはそこにある。勿論死んでいるし、乾燥し切ってカサカサになっているし、殆どセミの抜け殻と変わらない状態だ。それでもよく見てみるとちゃんと体の内部がある。そのせいで風に飛んでいくこと無く残り続けているのだろうか?

 蝉は確か八日程の命だと聞く。まあそれはいいとしても、その蝉の死骸が冬をも超えて半年以上そこに居続けていることを思うと、何だか違和感を感じてしまった。私によって蝉の死んでいる期間というものが設定されてしまったせいで、生の何十倍も長い死があるような気がしてしまうのだ。

 これを書いている今もまだ、カーテンを開ければすぐにその茶色いかたまりが見える。これをいつまでこのままにしておこうか。もしまた夏がやってきてしまったらどうなってしまうのだろう。指先でつまんでピッと外に放り出してしまうのも、それはそれで一興なのかも。

活動の源になります……