見出し画像

もっと、街の隅っことか。

 みんなが走っていたから私も走っていたのだけれど、一体私達は何処に向かっているのだろう。私の声に出した疑問が拡散して、途端に群衆は散っていき、スクランブル交差点の上で一人立ち止まっている私が、無人の監視カメラに映っていた。

 街の角が鋭利に見え、こちらに向かってその先を突き付けている様に見え始める。逸らした目線の先では、電柱に括りつけられた迷い犬のポスターは古び、ボルトを嵌めるための空洞に藻が生えている。

 群衆は、まるで黒目が重たいかの様に、臥せた目線を動かさない。この都市にはもう馴染んでいるのだと、そう言いたいみたい。

 刻々と、刻々と、街は変わる。気付いた時にはもう遅いなんて歌詞にして歌ったって、その時にはもう、遅い。

 

活動の源になります……