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「無意識」という名の子

「脳は外側からの刺激でしか動かない」

おもしろいことに、人は「二倍の速度で思考しよう」と決めてもなかなか思うようにはいきません。でも、「二倍の速度で言葉を聴いている」と思考の速度が上がるのがわかります。いわゆる速聴というものです。
体験したことがある方はわかると思います。例えば、とある動画配信サービスのアプリには「×2.0倍」という表記があり、その設定にすると動画が倍速で見ることができます。他にも朗読やラジオなども倍速で聴くことができます。
しばらく倍速の言葉に慣れてくると、視界がクリアになり、実感として思考が速まっていくのがわかります。思考の速度が上がれば、行動の速度も比例して早くなっていきます。頭の回転が速い人の多くが「話す速度がはやい」というのはそのためです。

ただ、自分が二倍の速度で思考できたとしても、それを相手にうまく伝えることができるかというのは別の問題です。その場合、異なるBPMの音楽をDJがうまく繋ぎ合わせることに近い能力が求められます(それは速度的な問題だけでなく表現力も大きく関係している)。

話が少しそれましたが、何を言いたいのかというと「頭の内側で考えることよりも、外側からの刺激に強く影響される」ということです。二倍の速度で思考しようとするならば「二倍速で考えるぞ」というよりも、二倍速の言葉を聴いた方が確かなのです。


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メディアアーティストの落合陽一さんが、とある講演で話していました。
音楽的な素養がない被験者に右手で三拍子、左手で四拍子のリズムをとってもらいます。つまり、左右の手で別のリズムをとるわけですが、これは楽器を演奏した経験の乏しい人にとってかなり難しい課題です。もちろんうまくいきません。
次に左右の手に電気を送ることができる装置を付けてもらって、再度実験を行います。右手の装置は三拍子、左手の装置は四拍子のリズムで電気が流れます。すると電気の刺激を受けた被験者は、両方の手で別のリズムをとることができるようになったのです。

ここからの話がおもしろいのですが、電気の刺激を受けることによって一度両手で別のリズムをとることができるようになった被験者は、それらの装置を外した後も同様にリズムを取り続けることができたのです。

人間は外からの刺激によって感覚を学ぶことができます。さらには、その学びによって修得した感覚は継続性を持っているということです。
この実験結果を通して、落合さんは「AIを活用し、生身の身体に学習させることで人間の能力を高めることができるのではないか」と提案していました。
(記憶を辿りながら書いていますので、詳しい内容を知りたい方は調べてみてください。)


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結論として述べたいことは「手が止まったら外に出ろ」ということです。仕事で行き詰って手が止まることは誰でも経験したことがあると思います。その時に、頭の中だけでじっと考えるよりも、外に出て誰かと会った方が凝り固まった思考がほぐされます。
「外」というのは人だけでなく、本でもいいし、映画や音楽などの体験でもいいし、旅でもいいでしょう。
外側の世界に適応しようとする〝無意識〟の自分に委ねてみてください。

ただ、一つ注意点があります。
自分の内側に起こる変化は、常に外側からの刺激にあります。そして、その影響はなかなか自分ではコントロールできないものです。ですので、刺激を受ける対象は思慮深く選んでください。
魅力的な相手からもらう刺激によってあなたの内側は魅力的に変容します。
同じように、ネガティブな相手からもらう刺激は、あなたの内側をネガティブに変えてしまうということを忘れてはいけません。

与えた経験を全てに反映しながら育っていく。
〝無意識〟は自分の子どもみたいなものなのかもしれません。
取り扱いだけは慎重に。


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