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CafeBarDonna vol.3

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愛するということ

「愛」というのは、あらゆる生き物における永遠のテーマです。僕は普段から様々な年代の様々な職業の方とお話をさせて頂く機会が多いのですが、コミュニケーションの中でいつの間にか「話題の本質が〝愛〟になる」ということは少なくありません。Barにおけるお客様との会話の中で、文章やラジオでのインタビューの中で、街場での環境音として(カフェやレストランなど)。
そして文学や音楽、絵画、映画などの芸術もまた「愛」を主題とした作品が多いことは周知の事実です。誰もが「愛」を崇拝し、または「愛」に熱を上げ、「愛」について語り合っています。


巧みに「愛」を成熟させている方もいらっしゃいますが、その一方で「愛」を渇望するあまり自分を見失ってしまう方も少なくありません。「なぜ自分は愛されないのか」という想いが、怨念のように留まり、心を苦しめているといった状況です。
これは、非常に難しい問題です。何故ならば、それは一生をかけて学んでいくものだから。
ただ、便利なことに、本の中にはそのヒントはあります。


「愛は技術だ」

そう言った人物がいます。
エーリッヒ・フロムというドイツ人の精神分析の研究者です。彼は1956年に『愛するということ』という書籍を出版しました。原題は『The Art Of Loving 』

Artは「芸術」や「美術」として捉えることが一般的ですが、もともとは「技術」という意味があります。つまり、「The Art Of Loving」は「愛の技術」と訳すことができます。

そしてフロムがこの書の中で伝えていることは「愛というのは心の技術であり、修練によって上達する能力なのだ」ということです。「愛」は人間が生まれつき持った能力ではなく、お稽古することで少しずつ身につけていくものなのですよ、と。

この世に生まれた時、人間は母親から無条件の愛を受けます。この地点では「ただ、生きだけいればそれでいい」という状態です。赤ん坊の万能感というのは「愛を贈る」ことではなく、「愛を受ける」ことに由来しています。少しずつ自我が芽生え、次第に「ただ愛される」という存在から、「何かを愛する」という存在に成長していきます。
愛を受ける存在から、愛を贈る存在になるにつれ、万能感は薄れていきます。それは「自分一人では生きていくことができない」ということへの気付きです。

「どうしてわたしのことを愛してくれないの!」

そういった嘆きは誰しもがよく耳にするのではないでしょうか?
愛されたい欲求がそこにはあります。

その問題について、フロムが語る要約はこのようなものです。
たいていの人は「愛の問題」について、「愛する能力」の問題としてではなく、「愛される能力」の問題として捉えています。つまり、「自分を愛してくれる人がいない」と嘆いているのは、「自分が誰かを(何かを)愛する技術を持っていない」ことに起因する、ということです。
「愛」は受動的なものではなく、きわめて能動的なものなのです。

それでは「愛する技術」はどのようにして磨かれていくのでしょうか。

この問題に対して、「自分の生命を与えることが重要だ」とフロムは結論しています。「愛する」というのは金銭的な何か、または物質的な何かを与えるのではなく(時にはそれも必要だとは思いますが)、「生命を与える」ということ。
この場合における生命とは「己の喜びであり、興味であり、理解であり、知識・ユーモアであり、あるいは悲しみ」のことです。つまり、自分の中に息づいているものを相手と共有することこそ「愛の修練」なのですね。

これは密接なコミュニケーションを必要とします。
フロムの語る「愛の技術」は確かに、人間性を豊かにするものです。自分本位では成立しません。また「愛すること」の練習の過程で、新たな自分を発見することも少なくありません。自分が何に喜び、何に悲しみ、何に情動を突き動かされるのか。それらを客観的に見直すチャンスでもあります。


皆様もぜひ、「愛するということ」をお手に取って、実践してみて下さい。
時に読書は自分自身を助けてくれる重要な役割を果たします。

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さて、ここでようやくカクテルの話に入りましょう。
今回は『ディサローノ・アマレット』というリキュールについて紹介します。

その琥珀色の美しいリキュールにはロマンティックな恋物語が存在します。

16世紀初頭、イタリア・サローノ村の丘にサンタマリア寺院がありました。そこの壁画を描くことを任されたルイーニという名の画家は、滞在先の宿屋でなんとも美しい女性と出会いました。ルイーニはその女性をモデルに聖母マリアを描き上げます。

女性はその絵を見て大喜び。お礼にアンズの種の核を漬け込んだリキュールをつくり、ルイーニにプレゼントしました。そしてそのお酒は「ディサローノ・アマレット」、つまり「サローノ村のアマレット」と呼ばれ、世界中に広まったのです。

アーモンドのようなほのかな甘い香りのするアマレットは「愛のリキュール」とも呼ばれています。


今回のエーリッヒ・フロムの『愛するということ』を読みながら、アマレットとのマリアージュを楽しむというのも良いかもしれません。

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写真のカクテルは『イチゴとグレープフルーツのカクテル』
ベリー系のリキュールと隠し味にアマレットが。イチゴの酸味とグレープフルーツの酸味は相性がよく、リキュールの甘みを絶妙に引き出します。ビタミンCたっぷりでお肌もスベスベに。どうぞお召し上がりください。

※イチゴが手に入った時のみオーダー可能

「ダイアログジャーニー」と題して、全国を巡り、さまざまなクリエイターをインタビューしています。その活動費に使用させていただきます。対話の魅力を発信するコンテンツとして還元いたします。ご支援、ありがとうございます。