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Tapestry

広沢タダシさんと花*花さんによる音楽の演奏と語らいの場がもうけられました。

僕はこの催しの企画と司会(というよりコーディネーター)として関わらせていただいています。シンガーソングライターの広沢タダシさんを主軸に、広沢さんと所縁のあるゲストを招き、音楽の演奏と対話の協奏をお届けする。半年に一度のペースで開かれ、その度に新しい発見がもたらされます。その時間は、瑞々しいラ・フランスのようです。


Blue

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その音楽作品は言わずもがな、広沢さんの醸す美術館のような雰囲気に僕は心を奪われました。静謐な星空と、かまどにくべた炎が同居しているような。同じ静けさでも「図書館」とはまた違う。わかる人にはこれ以上言葉にしなくてもわかるだろうし、わからない人にはこれ以上言葉にしてもわからないと思います。


Gold

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「感じがいい」という感覚はとても大切で、それは無意識のたまりの部分で手をつなぐこと。花*花さんは、すごく感じがいいです。演奏直前のバックヤードからすごくいい。その手前にある控室で交わされる何気ないやりとりからすごくいい。もっと言うと、その日会った一言目の挨拶から。

その「すごくいい」が、ステージ上でブーストします。別れの歌も、哀しみの色を帯びた曲も、花*花さんの表現を通せば希望として響きます。そこには二人の根本に「世界に対する肯定感」があるのかもしれません。極端な話、絶望の最中であろうがその中からも光を見出す。それは聴き手に美しく響きます。


ブルーとゴールドのつづれ織り

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いつ聴いても揺さぶられる。肌の内側から波打つような感動と出会う。それは何度も、そう、何度でも。プロフェッショナルの仕事とはそういうものです。

二組のアーティストが奏でる音楽は、日常を流れる時間の中ではぴくりとも動かない扉を、いとも軽やかに開けてしまう。魔法の鍵です。音楽に対して〝魔法〟という言葉を使うのはずいぶんと月並みかもしれません。しかしながら、理由を見つけることができないあらゆる感動はその全てが〝魔法〟と言い換えることができるでしょう。

僕たちはその魔法から、時にヒーリングを受け、時に英気を与えられ、時に忘却を許されます。その恩恵に授かることは、人生を豊かにすることにつながります。


ラ・フランス

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語らいの時間が迫る中、バックヤードで広沢さんが言いました。

「回り道したいよね」

そう、回り道がしたい。対話はゆっくりと時間をかけて、遠いところから中心へ向かうものだという意味です。核心に迫る問いは、実際のところ、核心へは辿り着けない。それはここ最近、ずっと僕の頭の中でぐるぐるといたずらに回遊している問題でした。「言葉」にすることの野暮さについて。

言葉の「意味」ばかりを追いかけちゃいけない。

言葉に頼り過ぎると、最短距離を目指してしまいます。しかしながら、最短距離で手に入れた答えというものは、「本当の答え」ではなかったりする。何かしらの触媒を介することによって、僕たちは無意識の深いところへと潜ることができるのです。
つらつらとそのような言葉をこぼしていると広沢さんはこう言いました。

「確かに、言葉は野暮かもしれない。
でも、言葉に落とし込むこともまた
重要な役割を果たしている」

意識と無意識の往来。偶然を頼りに、結んでは、開いて。
そうこうしているうちに、僕たちはステージの上へ招かれ(僕が招いたのですが)、四人による対話がはじまりました。ある意味、実験的に。最小限の打ち合わせで、結んでは、開いて。
広沢さん、いづみさん、まきこさんの話が互いに呼応しながら、自然と大切な部分へと進み出して。とても貴重な物語が生まれました。それはラ・フランスを口に含んだ時の舌触り、広がる香り、溶けていく果実の甘みに似ています。


美術館

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トークショーの中でも話題に挙がりました。寺尾紗穂さんのレコード。広沢さんからの贈り物です。本当ならば自然光の下、その美しいアートワークを鮮やかに写したかったのですが、あいにくこの文章を書きはじめたのが宵の口。後日、あらためて紹介しようと思います。



この記事の中に書いた画集のお返しです。とてもうれしい贈り物。

音楽の演奏も対話の協奏もすばらしいものでした。広沢さん、花*花さんの音楽を体験し、客席では涙する人をたくさん目にしました。魔法の鍵でめいめいの扉を開く職人を、僕たちは〝アーティスト〟と呼んでいます。

この二組のアーティストの対話によって紡がれた言葉たちは、清らかで、健やかで、誠実で。そして中には、ドキンとさせられるような内容も含まれていました(創作に関してあまりに核心的な)。それは価値のある回り道の成果かもしれません。

それらの言葉たちは、「教養のエチュード」という僕のメディアで記事として配信する予定です。読み応えのある文章をお楽しみにしていただければと思っております。


そして、この何度見返しても思わず笑みがこぼれてしまう魅力的な三人の写真で、僕のこの「日記のような文章」を締めたいと思います。最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

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「ダイアログジャーニー」と題して、全国を巡り、さまざまなクリエイターをインタビューしています。その活動費に使用させていただきます。対話の魅力を発信するコンテンツとして還元いたします。ご支援、ありがとうございます。