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【小説】紙城境介『シャーロック+アカデミーLogic.2』

「後輩クン──キミ、フィオの助手になってよ」
寮の先輩・万条吹尾奈の誘いに乗った不実崎未咲が助手として連れていかれたのはとある島。
一人の大富豪が犯罪王の計画書〈マクベス〉を手に入れ、そのお披露目をするというのだ。
名のある探偵を招待し、推理イベントを全世界に配信する──はずが、集められた名探偵たちの前で本当に殺人が起こってしまう。
さらにホログラムがハックされ、島は、目に見える物全てが信じられない絶海の孤島へと変わってしまい──!?
探偵たちと未咲は、犯人と計画書〈マクベス〉の目論見を打破できるのか?
クローズド・サークルを内外から攻略していく第二弾!

【感想】

一冊丸ごとプロローグ的な感じを出しつつも、押さえるところはしっかり押さえた、ロジックが愉しめる本格ミステリであった前作。

今回は学園を飛び出して孤島が舞台。
そこで起こる連続殺人事件。
ひとつは、皆が見つめる先で凶行が行われる衆人環視の殺人。
ひとつは、鍵の掛かった密室内で発見された毒殺死体。

これは面白くなりそうだぜっ!

って思ったのは途中まで。

あれ、なんか思ってたのと違う。
ん?なにを見せられているんだ?

って感想を10回くらい経て、事件の展開は想像を絶する展開を迎える。

たぶん、本書をライトノベルとして読んだ人は、それなりに愉しめるんだと思う。
キャッキャウフフのピンクな展開も程よく挟まれつつ、終盤は怒涛の展開で主人公が覚醒する。
王道だけど、これでいいんだきっと。

だけど、本格ミステリとして読んでしまった僕みたいな人間は首を傾げる。
確かに事件は解決するんだけど、推理が全く楽しめない。
作中、過去の事件が絡んでくることが明かされるが、これの扱い方も、思ってたのと違う角度で真相に与してくる。

読み終わってみれば、結局なんだったんだ?って感想に終始してしまう。

こうなってしまう原因のひとつに、作中で登場する新技術〈HALOシステム〉とやらが余りにも万能すぎるという部分がある。

これのせいで、真相の一部にミステリの世界では禁じ手のひとつ《未知の凶器》を使用された気分になってしまい、消化不良が起こってしまうのだろう。

とはいえ、おっと思わせる部分も少なからずある。
例えば、見立ての理由。
島の石碑に書かれた唄通りに殺人が起こるのは何故か?というホワイダニット。
しばしば本格ミステリにおいて用いられるガジェットではあるけど、ここまで転倒した理由で見立て殺人を行った作品は他に知らない。
これ結構好きだなぁ。

という様に、良い部分が無いわけではないのだが、本格ミステリを期待して読むと肩透かしを喰らってしまうので要注意。

これなら先月出た某不死探偵の方がまだ面白かったぞ。

次はもう少し地に足ついた事件を扱って欲しいな。

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