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加藤周一著作集 第一期

日本の古本屋で、加藤周一著作集の第一期が15冊セットで5500円で売っていた。到着して箱から出してみると、函にシミがあったり、帯が破れていたりしたが、中身はまっさら。以前の持ち主は、購入後、きっと一度も本を開かなかったのだろうと思った。

平凡社から出ているこの著作中は1977年から配本されているので、編纂は本人が行っている。装丁は池田満寿夫だ。
あとがきには

「私は『文学』を広義に解し、その文学を科学技術文明に対して擁護する。広義の解釈の根拠と、擁護することの意味は、巻頭に掲げた『文学の擁護』(一九七六年)に詳しく説いた通りである。そういう考えに私が突然到達したのではないということは、それより十年ばかりまえに書いた『文学の概念』とさらに十五年ほど早い作文『文体について』とから、明らかなはずである。すなわち三つの論文を併せて『著作集』のこの一巻の第一部とする。文学一般についての私の議論の要項はそこに尽きるだろう。」


そしてこの第一巻は、戦時中に、加藤周一曰く文化的な鎖国状態だった中、孤独に思索して作った論文だという。焼跡という言葉が何度も使用されている。
特に読み応えがあったのは、浪漫主義とルソーの自然主義のところだった。
それにしてもこの論考を書いていた頃は、医学者としてソルボンヌ大学に行っていた頃ではないのだろうか。
自分が忙しいとか時間がないとか、そんなことを言っているのが恥ずかしくなる。

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