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『ファーザー』

父の物忘れがやや増えてきて、本人も大分気にするようになった。

そんな折、歯医者の予約を忘れて次に行った時に
「いや~最近忘れっぽくて嫌んなっちゃいますよ」
と歯科医の先生にこぼしたところ
「じゃあ一回検査受けてみますか?」
と言われ、物忘れ外来なるところへの紹介状を書いてくださった。

しかしそこは物忘れの始まった老人のこと。
予約することすら忘れる。

何度目かの歯科医の先生からの確認により、無事に予約も出来、私も付き添っての診察に行ってきた。

物忘れ外来に行って初めて分かったのだが、ここ一年ほどで父は歯の根本の虫歯が多発しており、歯科医の先生は「今まで出来ていた口腔ケアができなくなってる=認知症の始まりでは?」と心配なさってくれてたらしい。

二度に渡る数々の検査、テスト、聞き取りを経て、結局病気ではないことが判明した。

一回目の診察の際、検査に行く父を見送り、一人診察室に残された私に、物忘れ外来の医師は
「甲状腺機能の低下、もしくはうつ病を疑っています」
と告げた。
私は父のような性格の人がうつ病になるはずがない、と思い込んでいたので、心底驚いた。

結果うつ病でもなかったわけだけど。

性格じゃなくてホルモンのバランスでなるそうで、誰にでもなる可能性はあるらしい。

先生はとても優しく丁寧な良い先生だった。

うつ病だったらあんまりガミガミ言わないほうがいいんだろうな、と思って診断が出るまでの二週間ほど、私はものすごく父に遠慮して、言いたいことの半分も言わずに過ごした。

でもうつ病じゃなかったんだし、ていうかそもそも病気じゃなかったんだし、これからは前みたいに思いっきりガミガミ言うぞー!と決意した日の朝に観た映画。

『ファーザー』

前置き長過ぎなのは置いといて。

↑予告編です。

認知症の人はこんな世界に生きてるのか…と驚愕した。
観てるこちらも、どこが本当の世界線なのかと混乱するけど、当のご本人は常にこんな混乱と恐怖の中にいるのか、と少しは理解できたような気がしている。

認知症の症状は、厚労相のサイト貼っておきます。


数分前のことを忘れる、何度も同じことを繰り返し尋ねる、暴言、被害妄想など、身近にいる身内はついイライラすることもあるだろうけど、認知症の人には優しくしてあげて…と泣けてしまった。

認知症の家族の接し方としてよく「認知症の方の尊厳を大切にしましょう」と言われる。

その言葉を聞くたびに私は「こちらの尊厳はどうなるの?」といつも思っていた。
ケアをする側の尊厳だって守られなければならないじゃないか、と。
だけどこの映画を観て、「認知症の方の尊厳を大切に」の意味が多少は理解できた気がする。できているといいな。

私も父が認知症と診断された時には、優しくしたいと思う。
こんな恐怖の中にいるのなら、どんな人でも優しくされるべきだ。

そのためにも今は言いたいこと言うぞー!


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