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ショートストーリー

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日常で感じる非日常。 そんな気付きのショートストーリーです。
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記事一覧

幸せの経典

幸せの経典

ある国で幸せになるための方法を見出した者が居た

彼の考え方は書物としてまとめられ配布された。

その書を手にした人々は歓喜した、これこそが幸せの道だと、幸せに生きるための方法だと。

その書は経典として崇められ、更に沢山の人の手に渡り、その書の考え方に共感する者、それを称賛する者が増えていった。

次第に古い考え方は、悪しき考え方として弾圧、糾弾されていき、その書の考え方が絶対的なモノとして崇め

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溺れる男

溺れる男

感情を亡くした男が、海で溺れていた。

特に恐れもなく、不安もなく。

それを見つけた漁師が、彼を助けに泳いで向かった。

漁師に助けられたその男は、特に礼を言うでなく、浜辺にうずくまっていた。

次の日、又、その男が海で溺れていた。

見かけた漁師は、再び彼を助けた。

そして、男は、また浜辺に無言で佇んでいた。

次の日も、また、次の日も、男は溺れ続けた。

そして、漁師は、次の日も、また次の

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拡がる世界

拡がる世界

少人数で暮らす平和な村があった。

ある日、その村に流れ者がたどり着いた。

その流れ者は、村人を見ると、突然怒り出し、「右手を使うな!」と叫びだした。

不思議に思った村人達も、流れ者が、落ち着くのであればと思い、みんなで右手を使うのを辞めてみることにした。

安心した流れ者ではあったが、その後も村人が、右手を使っているのを見ては、鬼の様に叫び出す。

しまいには、右手を使う村人に、暴力をふるい

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わたしというもの

わたしというもの

魚がある時気がついた

自分を自由にしてくれている海の存在に

ただ変わらずそこにあった、当たり前の様にそこに居てくれた、海の存在の大きさに

魚はその事に感謝する様になった

日に日に、そのことの素晴らしさ、海が存在してくれていた事に対する、感謝が深まって行った

魚はそれが愛である事を知った

変わらずに、ずーっと寄り添ってくれていた、見守ってくれていた、自分を包み込んでくれていた愛そのもので

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映し合う世界

映し合う世界

あるところにネズミの兄弟がいた

ネズミの両親は、ある時、人間に捕まってしまい、籠に入れられ、連れ去られてしまった。

難を逃れた兄弟は、支えあってなんとか暮らしていたが、生まれたばかりの弟は、未だ外の世界を良く知らず兄に頼る一方。

兄も、弟よりは早く生まれてはいたが、まだ世界を良く知っているわけでもなく。弟の為に、頑張ってはいたが、内心、頼れる相手がおらず、精一杯な部分があった。

そんな生活

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伝えたい事

伝えたい事

ある少年が少女に恋をした。

思いをなんとか伝えたい少年は、思い悩んだ末、自分の思いを丁寧に丁寧に、心を込めて、絵にして伝えることにした。

それを見ていた、少年の友人は、少年にアドバイスをした

絵で思いを伝えるのはナンセンスだ

恋愛というのは駆け引きであったり、相手にいかに自分が素晴らしい人間で、自分があなたがどれだけ素晴らしい、素敵な人間であると感じでいるか、明確な言葉で伝えることが大事な

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