♯07 ラブシックと不在着信

いつだって通話していたい。いつだって隣にいたい。
でも離れてる瞬間のほうが僕らには多い。それがわかってはいるけど
脳と心が大きく乖離している。

だから通話やメッセージや写真や動画が僕らを繋ぎとめている。
そんなことわかっている。わかりきっているだけに辛い。
僕らは限りないフィクションを観ている。それをフィクションと疑おうともしない。VRで知り合ってから、そこはもう非現実の世界。

でも間違いなく僕らは互いの辞書を埋め尽くしている。
日和ここが足りてないよ。
僕の名が呼ばれる前に日和が何かを書き足している。
そんな風にして僕らはお互いを補完している。

通話中トイレやお風呂に行くときも通話は繋いでることのほうが多い。
理由はあってないようなものだけれど、彼女を待っていたいから。
僕がそんな理由で離れる時も、おかえりを待っている。

彼女のその声を聞くだけで
確かに心臓が脈打っていて驚くくらいに心拍数があがる。
隣にいないからその心音が聞こえることがなくてよかったなと安堵する。

なんでもない朝、電話を掛けた。
話したいことがあったわけじゃない。ただ声が聴きたかった。
しばらくお互いに無言でいると
「何も用事ないなら切るね。」と切られてしまった。
日和だってなんにも話すことなくても、僕が読書しているからと言っても
繋ぎたがるのに。

なにかがいつもと違う。ただまだ眠かっただけ?
嫌われた?

洪水のように押し寄せる不安。

また掛けてみた。繋がらない。

僕が鳴らした2回ほど残った不在着信の画面を呆然と眺めていた。






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