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脳の変化で筋肉を緩める! - ソマティック教育とパンディキュレーション



動作において知らないといけない感覚運動健忘とは?


動くということは筋肉を使うわけですが、動作を改善、良くしたいと考えた時に知っておくべき事柄があります。

それは「感覚運動健忘」です。

「感覚運動健忘」(Sensory Motor Amnesia-SMA)は、

筋肉のコントロールや機能の低下により動作の質や自由度を妨げることであり、脳の感知と筋肉を動かす能力の一部または完全欠損と定義されます。

筋肉は2つの機能しかないと言われています。
それは「収縮」「弛緩」です。

そしてこれは”陰陽”のようなもので収縮するから弛緩するし弛緩するから収縮するといった考えです。

つまりこの2つの機能が失われると“動作”も低下します。

「収縮」や「弛緩」はどこでコントロールしているかというと、それら筋肉への指示という電気信号を送る脳であり、

「運動野(運動皮質)」という部分になります。

つまり、SMAの問題は筋肉自体の問題ではなく脳においての神経の問題となります。

  •  SMAは何が原因でなる?

SMAは様々な原因で起こるとされています。

● 身体的ストレスまたは精神的ストレス
● 身体的トラウマ(手術、怪我、落下、衝撃など )
● 反復動作(コンピュータ作業、車の運転、楽器の演奏など)
● 運動不足(長時間座位になる生活や仕事)

このようなことがあると筋肉が無意識で収縮を行い、それを脳が感知できない状態になります。そうなると”自発的に”弛緩し、リラックスが出来なくなってしまいます。

つまり、常に筋肉が無意識で“硬い身体”になっています。
これによりいわゆる、姿勢不良・姿勢不全も起こります。

その姿勢が動きに適した姿勢でないと結果として本来の関節の可動性を使えず、無理な動きになれば慢性的な痛みや動作の不全、パフォーマンス低下に繋がっていきます。

  •  SMAは解消するには?

では、この「感覚運動健忘」を解消・改善するにはどうしたら良いのでしょうか?

それはこの感知する「感覚」と「運動」のフィードバックとフィードフォワードを脳に再教育するということ。

最初に伝えた「収縮」と「弛緩」は”大脳皮質”で起こりますが
SMAでは、無意識で筋収縮が起こっているため運動野(運動皮質)に上がる前に起こっています。

そのため「弛緩→リラックス」ができない。

故に運動野にその収縮をインプットし、自発的に弛緩を起こすというトレーニングをしていくとSMAは改善され、脳が筋収縮と感じ取れ、弛緩できるようになります。

そのトレーニングが「ソマティック・エデュケーション(ソマティック教育)」です。


脳を変え筋肉の使い方を変えるソマティック教育


SMAは、大脳の感覚野と運動野の筋肉収縮の感知と弛緩の運動をコントロールできない脳の症状でした。

その結果として運動・動作に影響を与えパフォーマンスを低下させる原因にもなります。

それを改善する動作、トレーニングである「ソマティック・エデュケーション(ソマティック教育)」

  •  ソマティック教育とは?

ソマティック・エデュケーション(ソマティック教育)とは身体の全ての筋肉の自発的コントロールを再び獲得するための筋神経伝達再教育です。

その結果、適切な筋肉機能が回復し長期に渡る維持が出来ます。そのコントロールを長期に渡って失った筋肉だけが硬くなり慢性的な痛みに繋がります。これがSMAです。

逆に弛緩できている筋肉は慢性的な痛みを起こしません。
この脳のコントロールにアプローチして長期に渡る筋肉の機能を戻し、維持することがソマティック教育です。

一時的な筋肉の柔らかさ、筋肉自体にアプローチをしても脳のコントロール機能を変えないとやはり戻りやすくなります。

ソマティックのソマとは身体内での感覚経験であり、身体内とはつまり神経筋のネットワークのことです。

「ソマティック教育」はトーマス・ハンナ氏によって作られた言葉ですがハンナ氏はボディーワークの一つとして有名なフェルデンクライスの生徒でもありました。

そのハンナ氏は運動制御と感覚を向上させること、筋肉機能パターンを変え身体機能を改善する感覚運動教育の方法と述べています。

つまり無意識下の筋肉の緊張による硬さを大脳皮質(感覚野と運動野)にアプローチし改善・回復することで筋肉の本来の機能にし、結果として姿勢や動作改善、そして痛みを軽減させること

これが「ソマティック教育」となります。

  •  マッスルメモリーを変える方法

ほとんどの痛みや硬さ、構造的なダメージは日常の習慣的な動作によってもたらされます。その日常の動作でどのように筋肉を使うパターンを身につけているかは非常に重要です。

その日常を変えない限り硬さや痛み、そして効率的な動作は手に入れられません。いわゆる「マッスル・メモリー」と言われるものです。

無意識的に筋肉が日常でどう使っているかそのマッスル・メモリーを変えるためには感覚野と運動野にアプローチしないと変化はしないためストレッチやストレングス、マッサージなどでは難しくなります。

この神経伝達を変えるには能動的にゆっくり、シンプルに行うことが必要になります。

それは例えとしてコンピューターのオンとオフのようなもので何か作業が終わったらオフにしないといけなく
そして使うときにオンにするにはオフの状態でないといけません。

同じように脳と筋肉の繋がりを一度リセットし、リスタートする。
そのような身体の再教育方法となります。


Green Light Reflexって何?


人間は、生まれてから最初の1年ほどで寝返りをし、体を起こし、ハイハイし、起き上がって、歩き始めます。

つまり、頭を上げ、背骨を反って、首や背中の筋肉を伸展していく動作を覚えていくことで最終的には立って歩けるようになります。

この伸展筋が使えるようになり立位になるから背骨の自然のS字カーブもできます。

このS字カーブが十分に、そして適切に発達していかないと背骨のゼロ・ポイント(頸椎・胸椎・腰椎で重力上にくるポイント)をベースとした

構造力が作り上げることができないため重力や負荷による背骨への衝撃吸収力もなく様々な障害のきっかけになります。

さてその伸展筋が働くのはGreen Light Reflexのおかげです。

そのGreen Light Reflexとは?
についてお話ししていきます。

  •  Green Light Reflexとは?

このGreen Lightとは青信号のことです。
つまり“前に進む反射”という意味になります。

この反射により頸椎伸展で頭が上がり、胸椎伸展で胸をはり、
腰椎伸展で骨盤をそり、ハムストリングスや臀筋に力が入り前に進める
という状態になるため

「前に進む」=青信号(Green Light)
と名付けられました。

しかしこれは、赤ちゃんが立って歩くまでのみの働く反射ではなくその後も立位の時、前に進むときには自然と起こっています。

  •  Green Light Reflexと心

この活動反応は、快ストレス(体に良いストレス)によって引き起こされます。
大事なミーティングや集まりの時に背筋がピシッとなるというのはこの反応であり、良い印象を与えなきゃ、うまく立ち振る舞わなきゃという意識がそうさせます。

逆に伸展筋が働いている身体は上記のようにポジティブなメンタルに影響を与えます。

身体と心は繋がっていると言われる科学的な要因の一つに
このGreen Light Reflexがあると思われます。

ただ、身体的にもメンタル的にはそのコントロールが無意識下で出来ていないと伸展筋が過剰に収縮するということが起きます。

それが「感覚運動健忘」(Sensory Motor Amnesia-SMA)です。

このような身体の状態のときにウエイトトレーニングで伸展筋を

鍛えて“収縮”を促すとどうなるかは想像がつきますよね?

  •  Green Light Reflexとソマティック教育

つまり、慢性的に伸展筋が硬い人は
このGreen Light Reflexが過剰に反応している可能性があります。

これは脳が慢性的に伸展筋を使っていることが“認知”できていない状態で無意識にずっとGreen Light Reflexが過剰に反応していることになります。

つまりその硬さは脳の機能が認知し、コントロールできることで改善できます。それが「ソマティック再教育」であり筋肉自体をマッサージしたり、ぐりぐりしたりするのではなく、脳へのアプローチになります。

伸展筋の収縮を脳に認識させて、次のそのスイッチをオフにし弛緩させることを覚えさせる教育です。


Red Light Reflexは赤信号!


「Green Light Reflex」の反対である「Red Light Reflex」は赤信号からとって名付けています。

と言うことは、赤信号なので「止まれ(止まる)」になります。

  •  Red Light Reflexとは?

これもGreen Light Reflexと同じように脳の自動的反応です。
これは”ビクッ”としたとき、突然の危険にさらされた時に起こります。

例えば、突然、「わっ」と驚かされたとき、近くで「危ない!避けろ!」と叫ばれたとき、そしてこれはスマホやPCの前で丸まった姿勢で長時間いることでも起こります。

つまり、身体の前面部の筋肉を収縮させて屈曲し身体を小さくさせる反射です。「Green Light Reflex」の真逆となります。

  •  なぜ起こるのか?

この反射は、身体の内臓を守るためと考えられています。
骨や筋肉に比べ臓器は柔らかく脆弱です。
そのため身体を丸めそれらを守る本能が働くということです。

守るというのは良いことかもしれませんが守るということは
最終手段でもあり身体自体は動くことを辞める“止める”ことにもなります。

だからこそ驚かされた時は身体を丸め、動けなくなるわけです。

「鬼滅の刃」の禰󠄀豆子が(急に漫画の話し)刀鍛冶編の最後に陽の光を浴びてしまい命の危機に迫った際に(炭治郎に言われてもありますが)
身体を収縮させて小さくさせたのは内臓を守るための最終手段として行った脳の反射でもあります。(冗談として受け取ってくださいw)

ただ、「Green Light Reflex」のようにこれが習慣化していると良くないことに繋がります。

屈筋群の慢性的な収縮は”硬さ”になり(感覚運動健忘)
首のこり、偏頭痛、顎関節症、股関節の痛み、腰痛

そして、そのような姿勢はメンタル的にネガティブになり不安や心配症、不眠などを引き起こし鬱の症状も現れる可能性があります。

逆もしかし、不安が強い人や鬱症状がある人は屈曲優位な姿勢になります。

これは消防士の方はご存知かもしれませんが火事の時の人間の行動に現れたりします。ここでは内容がそぐわないので割愛します。

  •  現代病でもある?

先ほど伝えた通り、コンピュータやスマホなどの作業での姿勢が
「Red Light Reflex」を刺激し、脳が屈筋群を緩める機能が落ちて体が丸まった姿勢になってしまう・・

そして結果としてメンタルへも影響を及ぼしてしまう。
これは現代では多くの人が陥っています。

つまり現代病とも言えます。現代の人はメンタル的に弱い人が多いのは
この「Red Light Reflex」によるものもあるかと思います。


猫の伸びはストレッチ?パンディキュレーションを知っているか?


ソマティックを考える上で重要な観点となる「猫の伸び」

もちろん猫以外の動物も「伸び」はします。多くの野生動物は1日に40〜50回ほど「伸び」を行うそうです。

さて、この「伸び」
「筋肉をストレッチしている」と思っていませんか?

いや違うんです!
人間を含め動物は、この「伸び」をなぜ行うか、
それは“筋肉の機能を保つため”の方法であるからです!

  •  パンディキュレーション

「パンディキュレーション」という言葉を耳にしたことがある人は少ないかと思います。

日本語訳では
“目覚めた時の本能的に体を伸ばすこと”
という意味になります。

動物は朝起きた時に”伸び”をします。
これが「パンディキュレーション」

しかしこの”伸び”というのが筋肉のストレッチと想像してしまいますが
これが勘違いです。

実はこの無意識の自然の行為は筋肉の機能を維持するための行動なのです!グーッと伸びているのはストレッチしているのではなく、

筋肉を最大限に収縮させているのです。
図のような猫の伸びは背中側の筋肉を収縮させている動作であり、お腹側を伸ばすストレッチではありません。

ライオンによるパンディキュレーション

そしてそのグーッと伸びた(収縮)したあとハアーとしながらその筋肉の収縮をゆっくり辞めていきます。

具体的には、筋肉を意図的に収縮し、その筋肉内の受容器、筋紡錘や腱の中にあるゴルジ器官(GTO)がそれを感知し、その情報を脳の「感覚野」に送ります。

その次に脳は筋肉の収縮をずっと行うと機能として悪くなる(固くなったり痛みに繋がったりする)ため「運動野」によってその筋肉をゆっくり緩めようと指示を与えます。

つまり「パンディキュレーション」は筋神経-脳の関係で筋肉を緩めようとする無意識の反応です。

だからこそ朝起きた時に同じ姿勢(寝返りはしますが)で固くなった筋肉を緩めるための自然な動作なわけです。

これと同じなのが”あくび”です。あくびも顎、首、背中の筋肉が固くなったものを緩めるためのパンディキュレーションの一つと考えられています。

”伸び”がストレッチという印象とは違うことをわかって頂けたかと思います。

  •  パンディキュレーションは動作のための準備

このようにして自然に硬くなった筋肉を緩める行動であるパンディキュレーション。もし脳が筋肉が固くなったことに気づいていない場合、緩めることも出来ません。

そのままにしておくと動作において効率よく動くことが難しくなります。

なぜならば、筋肉というのは緩んでいる(休んでいる)から収縮が出来ます。体を動かすにはもちろん筋肉を使いますが、まずは緩んでいることが大前提なわけです。

収縮している(硬くなっている)筋肉をさらに使うとオーバーユースになり慢性的な痛みや急性の怪我にも繋がります。

そのため、動作を行うためには筋肉が緩んでいることが怪我予防の観点でも
パフォーマンス向上の観点でも重要となります。

それには脳がちゃんと硬くなっていると認識し、筋肉を緩ませられる指示ができる必要があるわけです。
それが出来て始めて筋肉の機能として正常になり動くことが出来ます。

動物や人間の「伸び」や「あくび」にはそんな秘密があったわけです。


ストレッチ vs パンディキュレーション


パンディキュレーションは「目覚めた時の本能的に体を伸ばすこと」
つまり人間や動物が行う”伸び”です。

そしてそれは硬くなった筋肉に対し脳にアプローチし過剰な筋肉の緊張を正常化させる動物の本能で自然な行為です。

ソマティック教育では、そのパンディキュレーションの原理を使って体のすべての筋肉の自発的制御を脳にアプローチすることで、本来の筋肉の機能を回復し、長期にわたってその機能を維持させようとするアプローチです。

さて、筋肉を弛緩させる(硬いのを解消する?)方法として“ストレッチ”が知られていますのでストレッチとパンディキュレーションの違いについてお伝えします。
 

  •  ストレッチ=脊髄反射?

一般的なストレッチを行うと「伸張反射」が起きます。

具体的には受動的に筋肉をストレッチをすると筋肉内にある感覚受容器(筋紡錘)は、その筋繊維の長さが変化した情報を”脊髄”に送ります。

それに反応し脊髄はそのストレッチされた筋肉へインパルス(電気信号)を送り筋収縮を促します。

そのように筋肉をストレッチすることは筋肉の収縮を起こします。

これは過度に筋肉が伸びて痛めないように身を守るための無意識下で起こる防衛反応でもあります。これが「伸張反射」であり脊髄の反射、脊髄反射の一つです。

これは急激に筋肉が伸ばされた時に大きく起こるものとされており有名なのが膝の腱をゴムのハンマーのようなもので叩くと膝が伸びる(膝伸展が起こる)ものは見たことがあるかと思います。(相動性伸張反射)

しかしゆっくり行っても筋紡錘はその筋繊維の長さの変化に感知すると考えますので度合いが小さくてもこの伸張反射は起こる可能性があります。(緊張性伸張反射)


  •  パンディキュレーション

一方、パンディキュレーションは筋肉が随意的に(意図的に)収縮した際、筋肉内にある感覚受容器(筋紡錘)がその筋繊維の長さの変化情報(この場合は”短縮”)を脳の”感覚野”に送ります。

その感覚野でそれからその収縮を強くするか、弱くするか、維持するか選択します。

パンディキュレーションではゆっくりと弱くしていき、筋肉の弛緩(リラックス)を獲得します。

意図的に一回脳へ収縮を意識させるからこそ脳のレベルでリラックスさせることが出来ます。

それを自然に無意識で行っているのが猫の伸びや寝起きの伸びであるパンディキュレーションです。

そのパンディキュレーションを使って臨上で慢性的に硬くなった筋肉を
弛緩、柔らかくする方法が、パンディキュレーション・テクニックです。


  •  ストレッチ vs パンディキュレーション


一般的なストレッチとパンディキュレーションの違いはわかって頂けたかと思います。

ストレッチは受動的で脳が含まれずパンディキュレーションは能動的で脳(感覚野・運動野)へのアプローチになります。

自分(脳、意識)でコントロール出来ないと筋肉を緩めることが出来ません。そのため能動的に意識することは慢性的に筋肉を緩ませることになります。

つまり、パンディキュレーションは感覚と運動の繋がりを再教育することになり「収縮」と「弛緩(リラックス)」の獲得となります。

それは動作においても非常に重要な過程になります。

なぜならば日常動作やスポーツは自分(脳)で行うものであり誰かに手足を動かしてもらうわけではないですよね(笑)

一般的なストレッチでは脳神経感覚を作ることはできないため自分で緩めることはできないし動作には活きないアプローチと考えられます。

もちろん、パフォーマンスに直接関係していなくとも
ストレッチにはストレッチの利点がありますので否定しているわけでは
ありません。

しかし、パンディキュレーション・テクニックで
脳レベルで弛緩と収縮を認知できていると
常にそれが起こっているスポーツでは特に有利に働きます。


パンディキュレーション・テクニック


ソマティック教育は、脳にて感覚野と運動野にアプローチし
収縮が慢性化した筋肉に対して緩ませた筋肉を手に入れる方法
であり、

その方法こそが、パンディキュレーション・テクニックです。

では実際のその方法を動画でお伝えしていきます!

今回、紹介するのは
「アーチ&フラット」というエクササイズになります。
こちらは動画で一緒に取り組める形になっております。

これは現代病でもある慢性腰痛に非常に効果的な方法です。

ポイントは、朝起きた時や眠い時、長い間同じ姿勢を取った時に
「伸び」(パンディキュレーション)になります。

それを思い出して、次のエクササイズを行ってみてください。
そして毎日継続しますと効果も表れやすいので是非お試しください!

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