舞台俳優なんぞをやっていると衣装や小道具などで思いもよらないものを買うことがあるものなのだが、メイク道具もその一つである。以前、老人の役をやることになって、髪の毛を白くするためのメイク道具を買う機会があった。

東京というのは凄いもので、舞台メイク用品の専門店なんてのがある。最近はコスプレ用の需要も増えているらしい。お店に出向いてメイク道具の棚を探すと、目的のものはすぐに見つけることが出来た。髪の毛に直接塗って馴染ませると白髪になって、シャンプーで簡単に落とせるというヘアクリームだ。うん、これでいい。しかし困ったことに、シルバー、ホワイト、アイボリーの3種類の色が置いてあった。アンミカならば、白髪って200色あんねん、などと言うところだ。どれを買えばいいのだろう？分からないものを1人で迷っていても仕方がない。餅は餅屋、だ。店員さんに聞いてみることにした。

「すみません、おじいさんの役をやるんですけど、これってどう違うんですか？」

「これはですね、分かりやすく言うとこちらから、元気なおじいさん、普通のおじいさん、あまり元気のないおじいさんになりますね」

あまりにも分かりやすく、あまりにも身も蓋もない説明に思わず笑ってしまいそうになったという話だ。