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君たちの名は

女同士の親友の話を書こうと思いついた。ずっと親友として仲良くしてきた2人、実は片方はもう片方を自分よりもブスだからと思って仲良くしていて、片方はもう片方を自分よりも頭が悪いからと思って仲良くしていた、という話だ。

打算から始まる友情。皮肉めいたテーマ性も悪くないし、そこからどうなって最終的にどう着地する話になるのかもまだ見えなくて興味深い。展開は書きながら考えればいい。今日はこれでいこう。「私と○○は親友だった」という書き出しで、片方の一人称視点で進んでいくアイディアを思いつく。途中でもう片方の一人称に変わるのも面白いんじゃないか。よし、これだ。しかし、「私と」とたった2文字書いたところでピタリと手が止まってしまった。2人の名前が思いつかなかったのだ。

普段僕は、あまり登場人物の名前にこだわらずに書いている。困った時は『よし子』と『タカシ』でいいやと思っている。大好きな漫画『寄生獣』の台詞を借りるならば、「名前なんてどうでもいい」だ。ありふれた名前の登場人物は、その物語が特別な人物の話ではなくどこにでも有り得る話だとする演出でもある。だがこのお話は2人の名前がとても大事なように思えた。よし子とたか子ではダメだ。うーんと黙考する。

はじめに浮かんだ名前は『みゆき』だった。だけどダメだ。みゆきは近しい知り合いの名前で、どうしても彼女の顔が浮かんできてしまう。創作に知り合いの名前を出しづらいというのもあるあるだと思う。かつては『よし子』と同じくらい『ゆう子』という名前もよく使っていたのだが、同じ劇団にゆうこが入ってきてから使いづらくなってしまった(ゆうこは悪くない)。そんなわけでみゆきもダメだ。みゆきを海に沈めて、他の名前を考える。どれも何故かしっくり来ない。しかも2人分、ペアになる名前というのがまた難しい。○○と○○、という括りでしっくり来る名前でなければならない。しおりとサチ、アケミとゆき、ナナミとまゆ……なんか違う。理論的なものじゃなく感覚だからなんか違うとしか言えないのももどかしい。この2人はナナミとまゆじゃないんだよ、としか言えない。もういっそ名前なんか付けずにAとBにでもしてしまおうか。むしろその方がまだマシなような気がする。そうしよう。しかしここまででもう随分文章を使ってしまった。少し掻い摘んで書くことにしよう。

・AとBは親友である
・AはBのことを自分よりもブスだと思っており、Bと一緒にいると自分が引き立つから仲良くしていた
・BはAのことを自分より頭が悪いと思っており、Aと一緒にいると自分が引き立つから仲良くしていた
・何らかのきっかけにより、お互いの打算が相手にバレてしまう
・関係性が変わる(関係性は悪化し、親友関係は解消されるor関係性は逆に良くなり、より深い友情関係が結ばれる)

今日のお話はこんな感じでした。さっさと名前さえ決まっていればこんな素っ気ない箇条書きになんてならなかったのに!たかが名前されど名前。名前を付けるって難しいですね。

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