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急に寒くなった日の朝

急に寒くなってきた。冬が嫌いなわけではないが、いつもこうやって早足で突然やってくるのには毎年戸惑っているように思う。もう少し心の準備をする猶予を与えて欲しいものだ。

もうすぐクリスマスだからと恋人を欲しがる、そういう気持ちが分からなかった。クリスマスだから何だと言うのだ、別にひとりでいいじゃないか。しかし寒い季節にぬくもりが恋しくなる気持ちなら痛いほど分かる。別にクリスマスだからと慌てて恋人を欲しがっていたわけではないのだ。深まる寒さにぬくもりを求める気持ちがだんだんと大きくなって、極まって爆発するのがクリスマス前だっただけなのだ。温かいものに寄り添いたい気持ち、ぬいぐるみや抱き枕では誤魔化し切れないもんね。今なら分かる。

人と人とが抱き合う理由は、『寒いから』以外に必要だろうか?ついカッとなって、遊ぶ金欲しさに、そんな理由で人を殴る輩だっているくらいだ。寒いから、つい寂しかったから、ぬくもりが欲しかったから、それくらいの理由で一夜を共にしたっていい。誰かと寄り添って眠りたい、それは人が誰しも持つ真っ当な感情だ。強がらず、正直に、その衝動に従えばいいじゃないか。そう言いくるめて一緒に眠りたい誰かがいる。それも恋だってことでいいじゃないか。私はそう思うのです。

抱き合いましょう。触れ合いましょう。寄り添って眠りましょう。母猫にくっついて丸まる仔猫たちのように。急に寒くなってきたからを免罪符にしてしまいましょう。誰かのぬくもりを感じながら眠る冬の夜の幸福。それは何事にも替え難いものです。溶けて混ざってひとつになって、あったかい何かになってしまいましょう。仕事も何もかもほっぽり出して、ついカッとなってしまいましょう。

急に寒くなった日の朝。そんなことを思ってしまうのは僕だけでしょうか。いいえ、誰でも(誰でもではない)。

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