愉快ジン#31

先週家族が久しぶりに集合した。
僕には二つ上に兄がいる。
昨年32歳になった。
見た目はどことなく自分と似ている。というのも背格好はほとんど同じだし(自分のほうが3cm高い)髪型もなんとなく似ている。まあ、僕は前髪を右に流しているが、兄は左に流している。小学校、中学校、高校も同じで、まるで「金魚のフン」のように後をついて行った。いや、例えが良くないな。マラソンをイメージしてほしい。先頭で走る人が兄である。僕は兄を風除けにして走る後走者のイメージが正しいだろうか。とにかく何をするにしても兄の敷いたレールの上を走った。ゆえに酸いも甘いも知った。
もちろん持ち物だって基本的には「お下がり」である。学生服、野球のユニフォーム、勉強道具やテキストもそうだし、スニーカー、アウター、バックも。何もかも「お下がり」。あ、下着のパンツはさすがに「お下がり」断ったけども。おまけに仲も良かったから、よく先生からは「仲良し兄弟」って言われたし、一緒に買い物に行った時は「双子」と間違われたし。
でも、側を見れば似てる部分が多くても深く知れば知るほど全然違う。まず、兄は父似だし、僕は母似だ。性格は父似の僕に対しては兄は母似だ。だからややこしい。丸顔の僕と面長の兄。右利きの兄と左利きの僕。O型の兄とB型の僕。めんどくさがりの僕とテキパキしようとする兄。掃除しない僕と掃除する兄。パシられる僕とパシらせる兄。自力本願の兄と他力本願の弟(もちろん良い意味で)。ボケ担当の僕とツッコミ担当の兄。兄の服は借りれないのに僕の服は着る兄。気づけば沢山の服が家から無くなっているではないか。
今でも仲が良いから、兄が帰省した時もそうだし僕が東京に行った時も一緒に買い物に行く。そして決まってラーメンを食べる。だからラーメンは僕らにとってなんだが特別な食べ物って感じがしている。
最近は僕が以前購入した白いパーカーと全く同じものを買った兄。僕が持っているショルダーバッグと同じものを買った兄。僕が同じものを買おうとすると怒るのに僕は兄の強行策には何も言えない。お願いだから一緒にいる時は被らないようにしてほしい。さすがに先に購入したものなんだから自分がイニシアチブを取りたい。なんて思ってても結局、僕が「すこぶる優しい」から気を遣って被らないように配慮してあげている。なんて「出来の良い弟」だろうか。
それにいつだって比較されてきたからいつだってライバル視してきた。中学の時は一つ上の可愛い先輩が「お兄ちゃんかっこいいね!」って言ってきた時本気で悔しかった。「おれは?おーい!」って心の中で何回ぼやいたことか。そういったエピソードが多いから大学生の時にたまたま兄弟で載せてもらった雑誌のコーナーにはライバルは「兄」と書いた。その雑誌の切り抜きは数年経った今でも母の待ち受け画面になっていてなんだかむず痒い。
そんな兄の恋愛模様については何も知らない。僕の家庭では恋愛に関する話題は暗黙の了解でご法度である。どうしてこんなことになったかわからないが、とにかく兄弟のそういった色恋沙汰は何もわからない。兄は今年33歳だ。だとするとそろそろ「結婚」してもおかしくないだろうと思っている。そうすると、一緒に出掛けられる機会はこれからどんどん減っていき、一生無くなるのかなと思う。そんなことを頭の中で想像しただけでじんわりと寂しくなる。なんだか「今」が青春の1ページのように淡い思い出として記憶に残る気がする。だから兄が家庭を持つまでは可能な限り遊びたい。おそらくあと数年しかできない「今」をとにかく楽しみたい。そしていつかお互いが家庭を持った時に「当時どう思っていたのか」暗黙の了解を打ち破り、赤裸々に話せる日が来たらいいな。あと今まで貸した服はそれまでに返してくれたらいいな。
ラーメンを啜りながら、ふと思った。
隣で兄はうどんを啜っている。

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