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【comicreview#3】「ワールド イズ ダンシング」三原和人


コミックのレビューをナンバリングします。

当面は新し目の作品をメインに。


今回は週刊モーニングで、今年から連載が始まった「ワールド イズ ダンシング」。作者は三原和人。以前はモーニング誌上で異色の数学漫画「はじめアルゴリズム」を連載していました。しかし、この「ワールド イズ ダンシング」は一転して日本史モノです。あらすじはこんな感じ。

室町ダンスレボリューション!! 知っているようで知らない、社会で習った人「世阿弥」。今も生み出した作品が舞われ続けている彼の「身体」に没頭する物語! 不安定でイカれた時代に、美少年は壁を乗り越え、舞い、物語を紡いでいく…。 (※参照:コミックDAYS)

鎌倉時代中期~室町時代中期ってあまりクローズアップされない時代なんですよね。やっぱり1100年代の源平合戦と1500年代の戦国時代が人気であり、そのあいだの約400年間のことって、もやっとしか知らない。いまジャンプで「逃げ上手の若君」という北条時行を主人公に鎌倉と室町の狭間を描いた作品が連載されているけど、あれの題材の採り方と同じくらい面食らったのがこの「ワールド イズ ダンシング」。

世阿弥です。何となく日本史の授業で習った気がする。歌舞伎?いや違うなんだっけ。たぶん文化人。よくわかんない。よっぽど歴史を深掘りする人でないと「名前聞いたことあるけどよく知らない」と思う。僕もそれなりの歴史好きを自負しているけれど世阿弥と聞いて「えっ?正直名前くらいしか・・・(能だよね?)」という認識でした。まずその題材のチョイスで興味を掴まれた次第。

世阿弥(1363~1443)は、室町初期の猿楽師。父は観阿弥。猿楽は現在の能や歌舞伎の始祖ともされており、父・観阿弥~子・世阿弥に継承された「能」は観世流として現代にも受け継がれています。

ストーリーは世阿弥が10歳の頃からスタート。幼名・鬼夜叉と呼ばれていた頃からはじまります。幼少より父の一座に出演してきた鬼夜叉ですが、踊り=舞をはじめとする芸事に疑問を抱き始めます。とにかく自問自答が絶えない。

「鳥は飛ぶための形」

「では人の形は何のため?」

「なぜここでは右足ではなく左足を出すのだろう」

「芸とはなんだ?」

「私には理解できない」

「食べるものと寝る場所さえあれば、人は舞などなくても生きられるのに」

そんななか、あばら家に棲む白拍子の女に出逢い、その舞に衝撃を受けた鬼夜叉ははじめて「芸というものを、よい」と感じる。そこから彼の世界が拓けていく・・・・

理屈では測ることができない、芸事の「よさ」。現代の音楽や映画にもつながります。エンタテインメントが苦境に立たされているいまだからこそ、読んで欲しい作品。特に「食べるものと寝る場所さえあれば、人は舞などなくても生きられるのに」という台詞は現在の状況とリンクして刺さった。そうじゃないんだよってことは、エンタメ好きの人はよくわかってると思うんだ。


2021年5月22日時点で7話まで連載されています。まずは1話を。


※comicのレビューはハッシュタグ「#cfreview」でまとめてます。

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