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トヨタ、に学ぶトップのコミュニケーション術


「トヨタの会議は30分」

著者:山本大平
新卒でトヨタ自動車に入社し、長らく新型車の開発業務に携わる。トヨタ式問題解決手法をさらにカイゼンし、統計学を駆使した独自のマーケティングメソッドを開発。企業/事業の新規プロデュース、ブランディング、AI活用といった領域でのコンサルティングを得意としている。これまでにアコーディア・ゴルフ執行役員CMO、DMM.make AKIBA戦略顧問、BNGパートナーズ社外CMOなど、要職を歴任/兼任中


叙分


良い会議をするには、会議の内容を向上させるには、上司を納得させるには———


誰もが一度は悩むことだと思います。
トップ企業のエリート達はどうなのか?

日本を長年けん引するトヨタ。
トヨタを最強の日本企業のひとつたらしめている強みは多数ある。


その中で、一番本質的な強みを生み出しているのは、暗黙知的に共有されているコミュニケーション術やビジネススキルだ。これはGAFAMやBATH(に含まれる企業)の会議や打ち合わせにも負けていない。

複雑性で予測不可能な現代は、ギガ速で報連相をして、スピーディーに意思決定し、どんどん仕事を前に進めないといけない。

とにかく無駄を嫌うトヨタが、どのように社内を効率化し、スリム化し、どのような文化を構築してきたか。


会議や打ち合わせは原則として30分



会議や打ち合わせはすべて30分という時間制限を設ける。

時間の制約を設けることで、会議を円滑に進めるための仕組みやコミュニケーションが生まれる。
30分で議論を終わらせるには、それなりに工夫しなければならない。

事前に関係者同士で議題を共有。
より解像度の高い議題を設定し、事前に関係者のイメージを統一しておく必要がある。

逆にトヨタでは、議題者はこれさえできていれば事前準備はほかに求められることはなかった。

そしてもちろん、終わりには次の会議で何を話すべきか、を必ず決めて終える。
議論が白熱し30分を超えそうな場合は、再度機会を設定しその日は終える。


上司の付き添いは認めない



トヨタでは、上司と部下が2人で打ち合わせや会議に出席することを許さない。


この根底には、上司は保護者ではなく、若手と言えどいい大人なのだから、という考えがある。
新入社員であろうと、打ち合わせに参加するなら自分で考え責任のある発言をしなければならない。

プレッシャーも大きいが、このおかげで若手は早い段階で自立心を持ち、プロとしての意識を持つことができる。


逆も然りで、部下離れできず、何でもかんでも口出ししたがる上司が日本には多い。
この方式を取り入れることで、上司も意思決定の裁量を手放しするスキルを養い、強制的にマネジメントの仕事に取り組むことになる。

こうして、社員の自立性を促すことで、皆が自走的に動ける仕組みが文化として根付くようになる。


いちいちまとめて清書する時間などない


トヨタでは、会議中にホワイトボードを多用する。
そしてここに記載した内容をそのまま議事録として活用することが普通だ。

発言した内容を発言者毎にまとめたり、丁寧にまとめ清書し議事録を作成する。
そんな生産性の低い仕事をやる暇のある社員はトヨタには一人もいない。


また、会議でホワイトボードという限定されたスペースに内容を記載するには、全員が要約力を持たなければならない。
書記は頭をフル回転し要点を絞り出し、周りは書記が纏めやすいように発言する。

短時間のうちに必要な要素をすべて議論しきる為、業務上の「問題解決の型」が共通言語として教育され、必須知識として共有されていくこともトヨタとしての強みであった。

これをトヨタビジネスプラクティス(TBP)と呼び、新人の頃より頭に叩き込まれた。


1分でOKをもらえる資料



紙の資料なら1分で必要な情報を十分伝達できる。

トヨタでは昇任試験以外はA4の資料しか用いない。
A4の資料に必要な内容を簡潔にまとめ、上司の仕事が途切れたタイミングを見計らって1分だけ時間をもらう。そして上司は1分で決断する。

本当に忙しい人には「結論を先に」でも不親切。

・まずは何の話かを書く。本当に忙しい人はあなたの考えよりも、どの案件についての話なのかを最初に知りたがります。

・そして、上司にどんな回答や判断を求めているかを書く。
上司は何の判断をすればいいのかが知りたい。どんなポイントについて上司に判断してほしいのかを書く必要がある。

・結論を書く。
あなたがどう思っているかを書く。

・根拠を列挙する。
できるだけ3点ほどに制限し箇条書き、あなたの結論を導いた根拠を書くとわかりやすい。

・必要に応じて補足を入れる。
もし追加で上司に知らせたい内容があれば補足として箇条書きする。

これを徹底することで、部下・上司ともに時間を圧縮でき、お互いに時間を無駄にすることがない。

そうなることで情報が上がってきやすい風潮ができ、多くの企業が抱える情報のボトルネックを改善できる。これは口頭での報告でも同様である。


プレゼンは3つのポイントを押さえて話す


・冒頭に何を話すか説明しておく
プレゼンの最初にこれからなんの話をするのかを聞き手に明確に伝える。
スライドであれば最初のスライドに話すテーマを箇条書きで書いておく。

こうすることで、どういった話か、流れか、時間はどれくらいかが相手に伝わり、聞き手は安心感を持つことができます。

・章立てどおりに話をする
聞き手が安心しリラックスした状態になったら、冒頭の章構成に沿って、順番どおりに話をしていく。
アドリブを入れて流れが変わってしまうと相手は不安に感じるので、なるべく順序立てて話す必要がある。


・節目節目でおさらいと不明点の確認をする
冒頭の章立ての節目となるポイントで、毎回手短にそこまでの章の内容をおさらいする。
その上で、不明点があるかを相手に確認する。

自分の理解が問題ないかを確認し、できるだけ脱落者を出さないようにする。


この3つのポイントを押さえることで、参加者の合意形成を図ることも難しくない。
話の途中で細かく承認もとっているので、最終的な合意もとりやすい。

これを徹底するだけでも、少なくとも不完全燃焼に陥ることは少ない。


あがり症の人は、目線と声質を安定させる


会議に慣れていないと、手が震える・うまく内容を伝えられないといった状況に陥ることがあると思う。

アドバイスとして、目線と声質を安定させること。2点のコツがある。

聞き手の目を見ず、彼らの顎を見て話す。
大勢の聞き手がいるシチュエーションでは、聞き手の顔の向こう側にある壁や時計などの目印を見て話してもいい。


一方、声質の安定は極力穏やかな、低い声で話す。


実践してわかることだが、このコツを実践することにより、発表者は相手からこの2点が出来ているかに意識が向くようになり、あがりづらくなる。


なぜ?と定義は?でとことん自分で考えさせる


トヨタはなぜを5回繰り返す会社として有名だ。実際、現場では5回どころの話ではない。


新入社員の頃より、発言をするたびになぜ?と上司に繰り返される。
こうすることであらゆる事柄に対して疑問を持ち、自分で考えるマインドが育つ。

そして、上司が答えを教えることはない。答えは人それぞれであり、明確なものはない。

それでも、考えることが大切なのだ。という訓練法が共通化されている。


言葉の定義についてもよく言及される。

普段当たり前のように使う言葉(仕事や社会や一般的等の概念)を口に出すと、その定義は?と質問される。

何気なく使う言葉も。人によってニュアンスや解釈が違う。
なぜ?と同じように答えはない。自分で答えを出し続けることに重きを置いている。

上司に言われたから、とか言ってると、死ねと言われたら死ぬのか?とよく言われる。

常に問いかけの形でお互いに意見をぶつけ合う。それぞれの考えの中から自分なりの答えを導き出していき、それらを常に疑問の対象としてブラッシュアップしていく。

これがトヨタ社員の強さだ。


自らを凡人だと認識して開き直る


社会に、天才と呼ぶに値する人間はほんの僅かしか存在しない。

まずは自分を認めること。
遅くとも30代になったら現実を受けいれる人間でなければならない。

一つ勘違いしないでほしいのは、凡人であっても世界に通ずる仕事はできる。活躍もできる。

実際に、トヨタは凡人の集まり、と筆者はいう。
だけど、世界レベルの戦い方と誇りを持っている。

開き直った先の素直さと協力的な姿勢、ひいてはご縁を大切にさせてもらうという精神は、凡人が身につけられる最強の武器なのだ。


自分を認め、驕らないこと、その先に感謝をする精神を養うことで大抵のコミュニケーションは打破できる。


跋文


なるほど、トップ企業とはこうゆうことか。

とゆうか、全部今まで教えられてきたわ。奴らこの本読んでたのか。(冗談です、ごめんなさい。


逆に言えば、これができればトップ企業になれる可能性があるのか。

簡単ではない、が、やるべきことが明確であるのならやれないことはない。


社員は経営者の鏡。
仮に本書でいうエリート社員が転職してきても、経営者がダメなら意味がない。

社員の内に己を見よ、己を見つけ落胆することを止めよ。
己が変われば、映し身も変わる。


書いてる間にも心が折れそうになったので、
ありそうでない言葉に支えてもらいながら、朧げなる理想を今日も思ふ。



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