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Drug Discovery

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記事一覧

創薬の指標(ver. 2023)

創薬化学の現場では、化合物最適化のための様々なパラメータが使われている。構造指標はその典型例で、リピンスキーの Ro5 などはよく知られている。古典的な考え方ではあるが、探索研究の現場でよく使われる実用的な指標で、化合物探索の生産性向上に貢献している。

最近では、学習データを使って機械学習モデルを構築、予測モデルを活用するアプローチが主流だと思う。とはいえ、古典的な経験則もやはり良いもので、実用

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【論文】Trehalose-Bearing Carriers to Target Impaired Autophagy and Protein Aggregation Diseases

2023/11/29

トレハロースに関する既存文献を総括しており、今後の展望について言及。

トレハロースがオートファジーを誘導したり、ミスフォールドタンパク質の凝集を抑制することは以前から知られている。神経変性疾患、糖尿病、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、動脈硬化症、虚血性疾患などの疾患群に対して、治療薬となる可能性について研究されている。

トレハロースの構造は下図の通り。グルコー

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【論文】Oxetanes in Drug Discovery Campaigns

2023/9/7

・創薬(2017~2022)におけるオキセタン骨格の活用事例を紹介。

・4員複素環は、低分子量・高極性・3次元性という特徴があり、水溶性が優れている傾向もあるため、有益なモチーフであると言える。

・オキセタンが酸性条件に対して不安定というのは誤解もあり、その安定性は置換パターンによって決まることが多い。3,3-二置換が最も安定。

・オキセタンの酸素原子は、σ結合を介した電

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英語で遊ぼう(インプット編)①


機械翻訳やChatGPTが使われるようになって以降、英文の読み方(情報処理)にも、様々なテクニックが活用されるようになった。この手のテクニックは、専門外の論文を読んだり、大量の文章の中から目的情報を抽出したり、精読前に大意を掴んだりと、使い方次第ではなかなか便利だと思う。(情報抽出の観点でも、情報調査の観点でも)

もちろん、自然言語処理的な手法は、英語以外にも適用可能である。「英語一強の言語帝

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【論文】Organism-wide, cell-type-specific secretome mapping of exercise training in mice

2023/5/3

・運動によって肝臓から CES2 の分泌が誘導される(乳酸刺激)

CES2 carboxylesterase 2 [ Homo sapiens (human) ]

・可溶性CES2タンパク質はマウスにおいて、抗肥満、抗糖尿病、パフォーマンス向上作用を示す

・運動により誘導される肝臓からのCES2の分泌は、初代肝細胞に乳酸を添加する in vitro 試験においても再現され

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ケトン体は面白い①

ケトン体に興味があって、少し調べてみようかと思います。

ケトン体 (Ketone bodies) とは、下記3化合物の総称を意味する言葉です。

近年、ケトン体は糖質制限の分野において、よく言及されています。その生理機能については、専門的な研究分野でも注目が集まっているようです。自分もその健康増進効果については興味があって、いろいろ試してみたい、調べてみたいと思っています。

炭水化物(糖質)や

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創薬化学の書籍

創薬化学の書籍。(※適宜更新)

【日本語】・創薬化学

・薬理学

・薬物動態 / 毒性

・製剤学

・スクリーニング

・AI 創薬

・医薬品開発

ガイドライン / PMDA

【英語】

・Medicinal Chemistry / Drug Discovery

・Pharmacology

・Drug-Likeness

・Privileged Structure

・PK/PD

英語ツールまとめ

英語の便利ツールまとめ。
※随時更新

・機械翻訳

DeepL翻訳
Google翻訳
T-400

DeepL翻訳 (Chrome 拡張機能)

※DeepL Pro はオススメ

・文章整形 → 機械翻訳

Shaper

改行が問題になる時に便利。

Youtube の英語動画の文字起こしを
まとめて機械翻訳するテクニックも結構便利。

①Youtube 動画の「・・・」をクリックし、
 「

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【書籍】COVID-19神経ハンドブック 急性期,後遺症からワクチン副反応まで

書店でたまたま手に取った書籍ですが、興味深い内容でした。ワクチンの副作用に関する情報、新型コロナウイルスに感染した後の症状(long COVID, Neuro-COVID) に関する情報もまとめられています。専門書の位置づけですが、一般の方にとっても、比較的読みやすいのではと思います。最新情報を得るには、PubMed の総説を読めば良いのですが、母国語の書籍として知識がまとまっていることも重要です

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【論文】An Analysis of Successful Hit-to-Clinical Candidate Pairs

2023/5/24

・医薬品候補化合物の構造とヒット化合物の構造を比較
・JMC (2018~2021) に発表された156報の報告が分析対象

・開発候補化合物の創出につながった、主要なヒット創出のアプローチは下記の通り

Known Compounds (59%)
Random Screening (21%)
Directed Screening (11%)
Fragment Screeni

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【論文】Trends in Molecular Properties, Bioavailability, and Permeability across the Bayer Compound Collection

2023/2/8
Trends in Molecular Properties, Bioavailability, and Permeability across the Bayer Compound Collection
10.1021/acs.jmedchem.2c01577

バイエルの論文。
「経口バイオアベイラビリティ」と「膜透過性」について、自社化合物の大規模解析を実施、支配的な分子特

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【書籍】老化研究をはじめる前に読む本〜450本の必読論文のエッセンス

興味があったので、通読してみました。

老化やアンチエイジングの定義に始まり、老化のメカニズムについて分かっていること、治療薬として有望視されてる化学物質の情報など、簡潔にまとめられていて勉強になりました。専門家だけでなく、一般の方にとっても、読みやすい本ではないかと思います。

引用文献は、番外編を含めて450報。素晴らしいガイドブックだと思いました。今後、興味ある論点については、原著論文を参照

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良い創薬ターゲットとは?(参考)

※随時追加&更新

2010
Principles of early drug discovery

2011
What makes a good drug target?

2020
Improving target assessment in biomedical research: the GOT-IT recommendations

2018
ターゲットバリデーションについて

2021

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医薬品における残留溶媒について

探索研究を通じて、化合物の構造最適化が進行すると、バルク合成(パウダー合成)の必要性が生じる。探索研究においてバルク体は、in vivo 薬効薬理試験、PK試験、毒性試験など様々な用途で用いられる。バルク合成で準備する化合物の純度は、SAR探索の際に許容されるものより、さらに高水準のものが求められる。もし、毒性試験に用いたバルク体の中に "何らかの不純物" が混じっていて、それが原因で毒性が発現し

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