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神経症傾向は、ギャンブリング障害やうつの要因または強化因子になりますが、そこを直そうなどという発想は嫌いです。

ある人が「人間力」を力説していた。企業の求める人間像として。
中身を聞くと、協創ができる協調性を持ち、開かれた好奇心と、あきらめぬ、へこたれぬこころを持つ人が欲しいといった内容。
よく使われる性格ディメンションビッグ5(NEO-PIR)でいえば、開放性(好奇心)が強く、協調性、誠実性も強く、外向的で、神経症傾向が弱い人が欲しいってことのように聞こえた。
神経症傾向は、敵意、不安、抑うつ、自意識、衝動性、傷つきやすさ、からなる。

神経症傾向

(敵意)
人の仕打ちによく腹を立てる
(不安)
心配なことが多い
怖いことが多い
恐ろしさや不安を感じる
緊張したり、神経過敏になったりする
将来が心配うまくいかないのではないかと不安
(抑うつ)
さびしくなったり、憂うつになったりする
自分には価値がないと感じる
物事がうまくいかないと自分を責める
(自意識)
穴があったら入りたいと思うほど、恥ずかしいことがたまにある
劣等感を持つことがある
(衝動性)
やりたい放題
がまんが難しい
好きな食べ物は、つい食べ過ぎてしまう
衝動的に何かをしてしまう
感情を抑えることが難しい
(傷つきやすさ)
どうしようもなくて、その問題を誰かに解決してもらいたいと思うことがよくある
ストレスが多いと、自分が「めちゃくちゃ」になるように感じることもある

こんなんじゃ困るということか。


 ビッグ5は互いに独立な性格特性だとされるが、実際には共通因子を取り出すことができる。神経症傾向が弱く、誠実性、開放性、協調性が強く、外向的、という共通性、一般性格因子が取り出せる。要は世の中で望まれやすい性格傾向だ。その傾向がまとまりをもつらしい。
 嫌らしいことに、一般性格因子はIQやフロー傾向(没頭しやすさ)などとも相関するので、企業としては一般性格因子の高い人を求めるのが、いろんな意味で合理的だ。おそらく仕事能力は高い。
 しかし、こうした性格因子の3~5割は遺伝要因で説明されることが行動遺伝学で示されている。その上、残りの環境因子の影響は互いを似せない方向に働く。

 環境には、共有環境と言ってその環境があればみな伸びるとか、ダメになるとか、同じ方向に影響を与える環境と、非共有環境と言って互いを似せない方向に働く環境がある。
 そして、性格や行動特性において、共有環境の影響はほぼ0。あらゆる環境が人を似せない方向に働く。つまり一般性格因子を総じて高めうる環境は存在しないと思っていたほうがいい。一般教育因子を伸ばす教育方法とか、回復支援とかも適用範囲は狭いと思っていたほうがいい。だから、あんな環境を用意したり、こんな環境を与えたり、多様性がだいじになる。それがハマれば伸びることもある。

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