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間取りの考え方〜どうにもならない時もある〜お客様間取り

アラフォー女性建築士の『さわ』です。
主に関西で住宅を設計しています。

今週は先日お打ち合わせしたお客様の間取りでどうにもならなかった事があるので記事にできればと思います。

以前にも間口の狭い狭小住宅の3階建の間取りについて書きました。

今回はここでも出てきたアスペクト比(塔状比)や構造に関する話から
「敷地条件が悪いと思いの外、建物に余分なコストがかかる」というお話です。

お客様の要望と敷地条件

敷地条件

間口3.64m奥行き約17mほどの細長い敷地です。

今回の問題になったの一番の要因は間口です。
3.64mあるからちょうど3.6m(2間)の間取りが入るかといったそういう訳にはいきません。
建物仕上げが越境するのはもちろんのこと、配管、樋、など外壁から飛び出してくるものは様々です。
また工事をするときに足場と立てたり、将来的にメンテナンスするために最低限の敷地の空きが必要になってきます。

今回それを逆算すると間口は2.7m(1.5間)の間取りしか入らない事になります。
道路の条件や、奥行きの長さから奥行きは特に制限がない気がしました。
(この時までは・・・)

お客様の要望

  • 家族3人暮らし 3LDK希望

  • 3部屋のうち1つは子供部屋(高校生)、もう一つは主審室、最後の一つは予備で当面は納戸(ウォークインクローゼット)として使う
    理由は3LDKの方が将来売りやすいから

  • LDKは17帖以上希望

  • キッチンは二型キッチンでキッチンのカウンターテーブルを食卓にする事
    (ダイニングテーブルは置かない)

  • 洗面所は広く、収納と作業スペース兼用の造作洗面台が欲しい

  • とにかく窓が欲しい、明るくて風通しのいい家が希望

が主な要望でした。
しかし!!これを全て叶える事は難しく・・・
(敷地条件的に・・・)

狭小住宅ではスペースが限られているのでできる事も限られてきます。
そんな中で設計士として優先して欲しいことは今お客様が住みやすい家にすることです。
他の家族からしたらその家は住みにくいかもしれなくても、住んでいる人が住みやすればそれでいいんです!!
それでこそ我が家ってものだと思っています。

そういう話し合いのもと優先順位や代替え案をご提案しながら間取りを作成しました。

間取り図

最初に書いたラフプランがこちらです。

ファーストラフプラン

諦めてもらった部分や代替え案を出した部分

3LDKの3部屋の使い方に替え案をだしました。
LDKをできるだけ広く使う為にどうしても階段を奥に持っていきたいと言われたのですが、間口2.7mしかないと廊下に0.9m取られると残り1.8mを部屋にするのはなかなか厳しいです。

それでも妥協案として、3階のお子様の部屋は使い勝手を変更できる様にしてご提案しました。
5.4✖️2.7として使う時は9帖一部屋ですが、主寝室に行く時の廊下にされちゃいます、
気にしない時はいいけれど、気にしちゃうようになったらパーテーションでゆるく区切るか、間仕切り戸をつけて圧迫感なく5.4✖️1.8の6帖の部屋として使う事を提案しました。

そして1階の予備室は将来ご夫婦が3階主寝室がしんどくなった時に1階の洋室を主寝室にしたいという要望もありました。
それまでは大容量の納戸、ウォークインクローゼットとして使いたいとのことでした。

これも普通ならありえないと思うのですが・・・
将来主寝室に使う時は廊下の間仕切り戸を外して廊下も含めて6帖の部屋にします。
きっと1階を主寝室に使う時はお子様も独立している想定で、お休みの時間に廊下を使う人がいないからという大胆な発想です。
大きな改装をしなくても、階段の手前とホールとの2ヶ所にだけ建具を取り付ければいいので将来的に間取りを替える負担も少なくてすみます。

さらにLDKの二型キッチンの代わりにキッチンとダイニングが一体になったアイランドキッチンをご提案しました。

構造チェック

間取り図を見ても二重壁だったり、キッチンの袖に壁だったり至る所に壁は出てくるだろうなと想定して計画をしていましたが・・・

構造設計事務所にそもそもこれ木造で建ちますか??と質問させてもらったところ・・・

チェックバックの打撃が半端なかったです。

まず最初に間口に対して奥行きが長すぎる建物なので思っていた以上に短手方向の壁が必要。(1DOWN)
さらに耐力壁から次の耐力壁が飛びすぎている。(2DOWN)
希望は3600ごとには壁が必要。
そして最初にも触れた『塔上比』
前回の記事に書いたように今回も4.0は超えていなくても、3以上超えると基礎のベース厚がいつもより増す(3DOWN)、設計地耐力がいつもなら30KNのところ50~60KN必要(4DOWN)
そして構造設計士さんからとどめの一言
『これ本気で建てるんですか??』

KONCK DOWN

そんなに構造きびしいとは・・・という打撃を受けまくりました。
構造設計士さんの本気でたてるんですか??の真意は建物の規模に反してかなり建築費もUPするのでかなりコスパの悪い建物になります。
敷地が悪条件だと土地は安くなりますが、それで建築費が上がってたら何の意味もない話という事です。

構造を踏まえて間取りの変更

構造設計士さんからの助言を元に間取りを変更しました。

修正した間取り

全体的に奥行きを短くしました。
そして、間取り図では分かりにくいですが建物の高さも押さえました。
天井高さ2250~2300にはなってしまいます。
もちろんロフトもできません。
それでもまだ耐力壁が飛び過ぎている場所もあるので、あとは計算次第といった条件付きでお客様に図面を提出しました。

結論

今回この記事はお客様付の間取だし有料記事にしようかなと思っていましたが、結論お客様がこの土地での建築を諦めたので一般公開にしました。

構造設計士さんが言ったように、ここで建てるの得策ではないので賢明な判断だと思います。
お客様には引き続きご希望の土地が見つかる事を願って理想の間取をご提案できればと思っています。

今週もありがとうございました。
左巴建築設計事務所 さわ。

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