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沢田研二さんと清春さんのロックから考える"ベースレスロック"の利点

今日の記事は沢田研二さん清春さんのロックから考える"ベースレスロックの利点"について書いていこうと思います。

このお二方は、共通してLIVEのバックバンドのメンバーに「ベーシスト」がおらず、"ベースギターの音を抜きでロック音楽をやられている歌手"であられます。

(沢田さんは最近ベースありの編成に戻ったというか、後ほど詳しく説明しますが"バンド編成'に戻りました。。)

今回は沢田さんと清春さんのお二方が
・何故ベースレスでロックをやるようになったのか
・どういうベースレスロックをやられているのか
・そこから考えるベースレスロックの利点
・加えてどういうタイプの歌手がベースレスで音楽をやるのに向いているのか
について解説していこうと思います!


・沢田さんと清春さん、
それぞれの"ベースレスロック"

①沢田研二さんのベースレスロック

・沢田さんがベースレスロックを始めた理由

これに関してはですね、沢田さんのバックバンドの編成の変遇の歴史から解説する必要があると思います。

沢田さんのバックバンドの編成は、
・ツインギター、ベース、ドラム、キーボードが全員いる編成 (2000年まで)

・ツインギター、ベース、ドラムによる"キーボードがいない"編成 (2001年から2004年まで)

・ツインギター、ドラム、キーボードによる"ベースがいない"編成 (2005年から2018年前半まで)

・エレキギターのみによる"バックバンド1人"編成 (2018年後半から2021年まで)

・ツインギター、ベース、ドラム、キーボード)が全員いる編成 (2022年から現在に至る)

といった変遇を遂げています。

では、何故沢田さんがベースレスロックを始めたのかというと、
"LIVEツアーを回る人件費の削減+バックバンドのメンバーの入れ替わりに伴う編成変更"
が理由となります。

沢田さんはかねてより、「LIVEツアーで全国を回る際に費用がかかる」ことに悩まれていました。

そこで沢田さんは、最初バックバンドから'キーボーディスト"を削り、人件費の削減に乗り出しました。この時期はリードギターがキーボードのフレーズまで弾いてジュリーサウンドを作っています。

それから数年経った後、長年バックバンドでベースを担当されていた依知川伸一さんが「自分のバンドBAKARAで頑張りたいから、バックバンドを抜けたい」ということでバックバンドを抜けられます。

そこで沢田さんは「ベースのメンバーを補填せず、ベースレスサウンドでLIVEを行う」という発想にいたり、そこからツインギター、ドラム、キーボードの編成で10年以上に渡りLIVEツアーを行っていました。

※バックバンド1人体制についての記事は今度別で書きます!

・どういうベースレスロックをやられていたのか

沢田さんのベースレスロックは
"バンドにベーシストがいない分、キーボーディストが左手の鍵盤でベースのフレーズを弾いてカバーする"という手法でサウンドを作られています。

そもそもキーボードという楽器は左端の方の鍵盤になっていくとベースの音域と被る楽器です。

それに加えて、キーボードには「スプリット」という、
"左と右の鍵盤を区切って左の方の鍵盤と右の方の鍵盤で音色を分ける"機能もあります。

それによって"左の鍵盤でベースの音色でベースのフレーズを弾き"、"右の鍵盤でキーボードの音色でキーボードのフレーズを弾く"ということが可能なわけです。

ちなみに僕の師匠もキーボーディストで、スプリットしての演奏をよくされるのですが、僕が
何で両手で別々のフレーズを弾けるんですか?
と伺ったら、
昔エレクトーンなどで散々やらされたから出来る」と仰っていました。

また、ギターやドラムの音色やフレーズも、
"ベースがいないことによってスカスカにならないように重ためな感じにアレンジされている"風にに感じます。

沢田さんはこのバンド編成で"還暦時のドームでの80曲LIVE"や"50周年の50曲LIVE"を敢行されていたり、この編成になってからはこの編成のままアルバムを制作されていたりします。

東京ドームでの80曲LIVEのLIVE CD

↑このLIVE CDを僕も持っているのですが、
通して聴いても全然違和感の無いバンドサウンドに仕上がっています。
多分普通の人は"ベースがいない"って言われないと気づかないくらいだと思います。

②清春さんのベースレスロック

・清春さんがベースレスロックを始められた理由

清春さんがベースレスロックを始められた理由は、元々"50歳になったらバンドを卒業してソロ活動1本になる"ということを仰られていて、実際にそのタイミングでSADSを活動休止されています。

そのソロ活動1本になってからリリースされた
カバーアルバム「Covers」は明確に音数が減っていたのですが、
翌年にリリースされたフルアルバム「JAPANESE MENU」では"ほぼ全曲のバックトラックをギターとドラムのみでレコーディング"という試みをされています。

「JAPANESE MENU」以後、清春さんはLIVEも音源制作も、全てベースレス編成で行っています。現在もそうです。

ベースレスになった理由として、清春さんは
「世界的には音数の少ない構成がよくあることに加え、自分は"ソロ歌手"なので、"音数が多いとバンドっぽくなるため"そうならないように音数を減らし、ベース以外で低音を鳴らしている」と語っています。

※清春さんは「JAPANESE MENU」リリース当時の雑誌のインタビューで、インタビュアーさんから「黒夢はボーカルとベースの2人でベースをフューチャーしていたサウンドだった」ということに触れられた際、「それは全然意識していなかった」と語っています。

・どういうベースレスロックをやられているか

最近の清春さんは"リリース音源"と"LIVE"でそれぞれ異なる編成のベースレスロックを行っています。

まずリリース音源で行っているベースレスロックは、ギターとドラムのみのバックトラックによるロックバンドサウンドなベースレスロックです。

使用楽器としてはギターとドラムのみなのですが、実はキックやハンドクラップなどが入っている楽曲もあって、充実した低音サウンドになっていますね。

更に楽器の音を重くしたり、楽曲をダンサブルにして低音をカバーしたりしていますね。

対して、LIVEで行っているベースレスロックは、LIVEごとにバックバンドの楽器編成を変えていて
"どの編成でどこまでロックできるかの冒険"
を行っているように思えます。

勿論、「ギター×ドラム」によるバックバンドでLIVEを行う時もあるのですが、最近だと「アコギ×チェロ」や「ギター×パーカッション」などの2つの楽器の組み合わせによるバンドサウンドや
「ギター×ドラム×パーカッション」「ピアノ×チェロ×パーカッション」「チェロ×サックス×パーカッション」などの3つの楽器の組み合わせによるバンドサウンドに挑戦されています。
一貫してベースギターは使われていないですね。

ただこれだけ聞くと「アコースティックな感じ?」と思われるかもしれませんが、めちゃめちゃロックなサウンドです。

僕も「アコギ×チェロ」のLIVEを見に行ったことがあるのですが、激しいアコギは勿論、チェロを時にベースの代わり、時にリードギターの代わりのように使われていてめちゃめちゃロックしていました。「チェロのみの伴奏の曲」とかもやっていました。

加えて「アコギだけの伴奏によるLIVE」もたまに行われていますね。

②沢田さんと清春さんのロックから考える"ベースレスロックの利点

まず僕が常日頃から思っていることなのですが、
若い頃めちゃめちゃ激しいロックをしていた方ってキャリアを重ねるうちに音楽を理解していって"ギター1本のアコースティックサウンド"にシフトされる傾向がある
と思うんです。
例えばDEAD ENDのMORRIEさんとかもそうだと思います。

ただ、沢田さんも清春さんも、勿論MORRIEさんも、"音数が少なくなってもロックの精神を捨てていない"んですよ。そこに本当に憧れますね。

本題に映るのですが、ベースレスロックの利点としては、
伴奏の音数(主に低音系)を減らすことによって、
逆にその分メインのボーカルが目立って映えたり、伴奏に使われている1つ1つの楽器の音がくっきり鳴ること

だと思います。

沢田さんも清春さんも、音数が少ない分"1つ1つの楽器がより良い音"になったり、ベースがいない分"打楽器や鍵盤楽器や弦楽器の更なるポテンシャルを引き出したり"していますね。

更に伴奏の音数が少ない分ご自身の凄まじい歌声が目立っていてて、歌がハッキリオーディエンスに届きます

・ではどんな歌手がベースレスで音楽をやるのに向いているのか

最初にまた僕の持論を出すのですが、僕は
轟声でめちゃめちゃ歌が上手いボーカリストであれば、歌の伴奏にベースの音は不要、もしくは伴奏の音数を減らせるだけ減らすべき
だと思っています。

仮にそういうボーカリストが音数を増やしてメリットがあるのは「伴奏がオーケストラ」な場合だけだと思います。

沢田さんも清春さんも、凄いドスの効いた歌声で、凄まじい声量がありますよね。
LIVE会場で歌声を聴いたときは歌声で会場を支配しているように感じます

ご自身の歌声がドスの効いた轟声な分、より伴奏の低音が少ないのが気にならない感じでもあると思います。

なので歌声がドスの効いた声とか、ダミ声だとか、もしくはオペラみたいに太い声とかであれば、伴奏の音数は最小限にして、自分の歌声を目立たせる方向でいったほうがいいと僕は思っています。

逆に邦ロック系とかの細くて高い声のボーカリストがボーカリストがベースレスに挑戦するのは難しいと思いますね。
ベースレスで音楽をやって成功されている方はみんな声量があって、発声がしっかりしています


まとめ

・ベースレスで音楽をやるには、歌が目立ったりしたり、楽器のポテンシャルを引き出せたりと、色々メリットはあるが、ベースレスに向いている歌手は一握りである!

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