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未来2024年4月号詠草

どこまでを声はゆくのか冬の日のラスコーリニコフただうつむいて
日々もまた旅であることふかぶかと紺のマフラー巻いて駅へと
指をかけきみが引き出す全集のあおい背表紙あれが金星
ろうそくの明かりを、または感傷をとどめるためにカーテンを引く
怒りとは水晶のよう砕け散るときがいっとう美しかった
朝霧は深くただよう早足にわたしが森を抜け出たあとも
やわらかな冬芽を露にひからせてことばにはまだ足りない木々だ
ふたりとも生まれなかった世界線の話をあおい林檎むきつつ
夢のなか桃のにおいがするという祝福、額をあてて授ける
告解としてのことばを零すときただ一瞬のミルククラウン

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