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障害者雇用と企業の雇用環境に関する研究報告を終えて

先週末、障害者雇用と企業の雇用環境に関する研究報告会が終わりました。
(研究報告会の詳細は以下のとおりです)


企業の方を対象に、5年ほど前から始めた研究報告をさせていただき、後半は特例子会社さんの実践事例と参加者同士のグループディスカッションを開催。30名ほどの参加者のほとんどは特例子会社の方々ということで、懇親会も含めていい感じの熱量で盛り上がり、学びの多い時間となりました。
ご参加いただいた皆さま、本当にありがとうございました。

研究で見えてきた3つのこと

まだまだデータ量に不十分さはありますが、HRMチェックリストを活用した5年の研究では、3つのことが見えてきました。このnoteでも簡単にご報告させていただきます。

①個人の職務に関する認識
②経営者と従業員
③障害者雇用と中小企業

①は、一般企業と特例子会社のデータを比較して見えたことで、「個人の職務に関する認識」は一般企業のほうが企業の現状に幅広く関連をしており、特例子会社では職務より「自分と他者との関係性」に関連が見られました。
「何の仕事をするか」「どんな環境で働くか」は、一般企業と特例子会社で働く従業員の方にとって認識や価値観に違いがあるようにも感じています。

②は、利益、売上、成長性で重回帰分析をした結果として、「経営者と従業員」の項目に関連が見られたものになります。
経営者、もしくはリーダーや現場責任者など、上司との関係性は働く人にとって重要な要素のようです。

最後の③は、中小企業に焦点をあてた研究結果です。中小企業5社のご協力によって得られたデータとヒアリングから、「昇進・昇格・キャリア項⽬」や「職場の⼈間関係」において得点が高くなっていることがわかりました。
また、ヒアリングでは「社員とまめにコミュニケーションをとる仕組み」が共通点でもあり、障害の有無を区別しない職場環境の工夫が中小企業で取り組む障害者雇用の特徴でもあるように思います。

研究結果の詳細は、僕ら研究メンバーのwebサイトにも掲載しています。よければご覧ください。

心理的安全性と障害者雇用

さて、今回の研究報告会では、「心理的安全性」がもう一つのテーマでもありました。

書籍「恐れのない組織」を参考にして、研究報告に合わせて以下2つのスライドを使って話題提供をさせていただきました。
僕もまだまだ勉強中の身でもあり、僕らの研究実績が心理的安全性と全て結びつくわけではないものの、共通する点の多さも感じています。

今後の研究を進めていく上で、心理的安全性と障害者雇用は重要な視点になるのではないでしょうか。

特例子会社の未来

研究報告会の後は恒例の懇親会がありました。いつもお世話になっている特例子会社の方もおられれば、初めてご挨拶させてもらった方もおられ、経営者の方や現場の方など、様々な方との懇親はたいへん楽しい時間でした。

お酒が深まった二次会も含め、興味深い話もたくさん聞かせてもらい、特例子会社の未来?というと大袈裟ですが、障害者雇用のこれからを想像しながら色んな人の話が聞けるのはなかなか幸せな時間です。

法定雇用率は、この春で2.5%に引き上げされ、本社からの受注が中心の特例子会社は、自社での雇用率引き上げとともに新規雇用を進めることは必須のようで、それに加えてグループ内での障害者雇用をどのように拡充していくかも課題のようです。

グループ内の障害者雇用は特例子会社が推進役となりそうですが、雇用推進に向けたハードルは各社それぞれにあるようで、障害への理解や合理的配慮の体制づくり、戦力化への道のりは、各社ビジョンや計画はあるものの、道のりの険しさもあって推進役を務めるにはまだ少し時間がかかるようにも感じました。

となると、当面は特例子会社のなかで雇用率の引き上げとともに雇用拡大が進む感じでしょうか? 福祉側としては雇用拡大を引き続き応援したいですし、推進役として担う役割の一部だけでも、僕も企業内で何かしらのサポートやお手伝いがしたいです。
(仕事の依頼もお待ちしております!)

うまくいっている企業とうまくいってない企業

果たして、障害者雇用がうまくいっている企業にはどんな共通点があるんでしょうか?
うまくいっていない企業との比較もないと、考察ができないようにも思いますし、特例子会社と中小企業では企業の状況も経営体制も大きな違いがあるので、様々な角度から考察を深める必要がありそうです。

心理的安全性の視点で言えば、経営者やリーダーの存在は大きいとされていて、係長や主任、一般社員などの現場従業員が心理的安全性をどのように感じているかが職場全体の心理的安全性に大きく影響するともいわれており、現場の働きやすさ、恐れのない組織と感じる現場があれば、「障害理解」「合理的配慮」「戦力化」の実現も描きやすいように思います。

職場定着で当たり前になってきた「日報」と「面談」

最後に、日報と面談について触れておこうと思います。

研究報告会の第二部の実践事例では、特例子会社さんから「日報」を活用した取り組みが報告されました。その後のグループディスカッションでも、各グループとも「日報」と「面談」を活用した社員育成を図っているとのことで、「離職防止」「メンタルヘルスケア」などの視点でも重要な役割を担っているようです。

最近は、心理的安全性と合わせて、「メンタルヘルス」は企業の方との話でとてもよく聞く言葉でもあります。これも、心理的安全性との関連で考えられることも大いにありそうですし、前述の研究実績③にもあった「まめにコミュニケーションをとる仕組み」も様々に関連しているように感じています。

ただ、企業は利益を求める生き物でもありますし、持続性や成長性もある中で企業活動は発展されるべきものとも思います。利益や心理的安全性など、様々なことをバランスよく保ちながら取り組む障害者雇用企業に引き続き興味を持ちながら、こうやって研究活動を続けたいと思います。

企業の皆さま
引き続き、研究のご協力をよろしくお願いいたします。


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