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地域のつむぎ手の家づくり|コロナ禍のニーズの変化を受けグリーン・DIYの一体拠点を開設 家と庭を総合的にプロデュース <vol.49/波多野工務店:愛知県江南市>

【連載について】“地域のつむぎ手の家づくり”って、なに?
家づくりをおこなう住宅会社には、全国一律で同じ住宅を建てる大規模な会社や、各地方でその土地の気候に合った住宅を建てる小規模な会社など、さまざまな種類のつくり手がいます。その中でも、その地域ならではの特色や、そこで暮らすおもしろい人々のことを知り尽くし、家をつくるだけでなく「人々をつなぎ、暮らしごと地域を豊かにする」取り組みもおこなう住宅会社がたくさん存在します。
この連載では、住宅業界のプロ向けメディアである新建ハウジングだからこそ知る「地域のつむぎ手」を担う住宅会社をピックアップ。地域での暮らしづくりの様子をそっと覗かせてもらい、風景写真とともにお届けします。


今回の<地域のつむぎ手>は・・・


コロナ禍で、緑が身近にある暮らしや自宅の庭での遊びを楽しむライフスタイルのニーズが高まるなかで、愛知県江南市の波多野工務店では、住宅と庭を一体的に提案することに力を注いでいます。

今年の6月には、本社の敷地内に、グリーンショップやDIYスペース、モデルルームなどを併設する拠点を開設しました。オープン以降、週末を中心にたくさんの人が訪れてにぎわっており、グリーンを身近に置こうとする人や親子でDIYを楽しもうとする人たちのなかには、自社の家づくりや暮らしに対する価値観を共有できる人たちも多いそうです。

同社は、本社敷地内に開設した「GRADENING STUDIO(グラデニング・スタジオ)」を、住宅と庭を総合的にプロデュースする情報発信拠点に位置づけています。この拠点は、モデルルームやグリーンショップ、造園・ガーデニング、DIYスペースの4つの機能を備えています。

今年6月にオープンした「GRADENING STUDIO」。住宅と庭を総合的にプロデュースする情報発信の拠点
GRADENING STUDIOは住・緑・庭・創の4つのエリアで構成されている

それまで資材の保管などに利用していた倉庫はリノベーションを施し、自社の注文住宅ブランド「咲くらす」のモデルルームや、観葉植物などを販売するグリーンショップを設けました。

多肉植物や観葉植物、花器、暮らしを楽しむための雑貨など幅広く取り扱うグリーンショップ

同社社長の波多野智章さんは、コロナ禍で庭の重要性が見つめ直されるなかで、新築住宅を検討する人やOB顧客から「外構をはじめとする緑の需要が高まっている」としたうえで、「住まいの悩みや庭づくりなど、どんな些細なことでも気軽に相談できる暮らしの相談場所として、地域の人たちとのつながりが持てる場をつくりたいと考えた」と説明します。

同社社長の波多野智章さん


4000人超が来場

同スタジオは、今年6月のオープン以降、10月末までに来場者数は4000人を突破したそうです。同社によれば、ただ多くの人が訪れるだけでなく、自社が「こんなお客さん家族と一緒に家づくりをしたい」と考えるような、「緑が身近にあり、時には親子でものづくり(DIY)を楽しみながら、豊かな暮らしを営みたい」と志向する人たちが多くを占めるのが特徴です。未就学児から小学生の子がいる家族のほか、OB顧客の割合も高いそうで、グリーンショップやDIY体験などそれぞれの機能が、同社の家づくりへの興味を高める効果ももたらしています。

グリーンショップ(店舗面積・約60㎡)では、多肉植物、観葉植物などのほか花器や暮らしを楽しむための雑貨など幅広く取り扱っています。地域のクラフト作家による委託販売コーナーも設けており、手作りアクセサリーやバッグなども並びます。

また、店内には暮らし相談の窓口を設けており、建築の知識を持つ担当者もコンシェルジュとして常駐しています。コンシェルジュを務める同社の白金夕奈さんは「グリーンショップだからこそ、敷居が低く気軽に立ち寄ってもらえる。植物を“入り口”としてお客様とコミュニケーションを取ることで、(家づくりの)提案につながるケースもある」と笑顔で話します。

グリーンショップでコンシェルジュを務める白金夕奈さん

例えば、観葉植物の購入を検討する人を、店舗の目の前にあるモデルルームに案内することもできます。観葉植物をリビングやダイニングなどに置いた、具体的な暮らしをイメージすることができるのです。緑のある暮らしに興味を持ち、具体的にグリーンショップに足を運ぶ顧客は、自然な形でモデルルームに案内しやすいそうです。


DIY PARKで利用者にアドバイス

気軽にDIYができるスペース「DIY PARK」では、建築中に出る端材を利用して、木材加工や電動工具の使い方などの指導・アドバイスを行っています。1階のスペースは年間3000円で利用することも可能です。

「DIY PARK」は、年間利用料を支払えば1階のスペースを自由に利用できる

2階には6歳までの幼児を対象に、親子が自由に遊べる「KIDS PARK」も設けられていて、地域から好評を博しているそうです。時間貸しで1枠につき500円、1グループで最大8人まで利用することができます。子育て世代を中心に月間50~60組の利用があるそうです。1回につき1時間半の枠なので、KIDS PARKを利用中の親には、子どもが遊んでいる間に常駐スタッフが雑談をしながら家づくりについて説明することもしています。

2階の「KIDS PARK」は、6歳までの幼児が遊べる空間として地域の子育て世帯に好評だ

波多野さんは「具体的に家づくりを検討してくれそうな人は、モデルルームに案内をするほか、住宅部門にも情報を共有し、イベントなどに招待した時に提案をすることもあります。利用者も工務店が運営する施設だと把握しているため、あまり抵抗感なく自然に家づくりの説明に耳を傾けてくれます」と話します。


地域連携でマルシェ開催

毎月、第2・4土曜日に開催するマルシェもにぎわいを生み、地域から好評の小例イベントになっています。近隣の商店や飲食店、農家の協力のもとで開催しており、100組以上が来場し、それをきっかけにモデルルームやグリーンショップ、DIYスペースへの来場にもつながっているそうです。同スタジオやマルシェなど、地域の人たちとの触れ合いと交流の場ができあがっているのです。

毎月第2・4土曜日に近隣の商店や飲食店、農家の協力のもとマルシェを開催する


文:新建ハウジング編集部

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