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台湾総統選 国共合作??

台湾総統選、投票が近づいています。
そして、個人的に予想した以上に、中国大陸からの選挙介入工作を伝える報道が乱れ飛んでいます。
果たして有権者たちの投票行動に影響を与えるのか、気になるところです。


国共合作まがいの世論調査

最も露骨なのは世論調査の捏造です。しかも一つだけではありません。日々、でっち上げられた「世論調査」がネット空間に出現していると伝えられています。

上の記事でも紹介されているように、先日、ネットメディアの記者が中国・福建省の中国共産党委員会から指示を受けて今年10月から8回も世論調査を捏造した疑いで台中の検察に拘束されました。
記者(と呼べるのかも微妙)が共産党から受けたのが「指示だけ」であったはずはありません。資金を提供されていなければ、さすがにこのような危ない橋を渡ろうとしないでしょう。

総統選が近づくにつれて、同様のケースが次々と摘発されています。そうしたニセ世論調査は、最大野党・国民党の侯友宜(こう・ゆうぎ)候補が先行する与党・民進党の頼清徳(らい・せいとく)候補を「逆転した」と主張するものがメインのようです。

それは、選挙において特定の支持政党や支持候補がいない浮動層の有権者が「どうせ投票するなら勝ち馬に乗りたい」という心理をくすぐる狙いでしょう。
理にかなっています。
共産党が国民党を援護射撃しようと「侯友宜が劣勢だ」と連呼し、国民党支持者の引き締めをはかろうと考えても、元々、国民党支持者たちは結束が固いので、上積み効果はさしてありません。それよりは迷っている有権者たちをターゲットにしたほうが効果が期待できそう。

どうしても日中戦争時の国共合作になぞらえたくなってしまうのですが、国民党が組織として共産党と組んで世論調査を捻じ曲げようとした証拠はありません。実際、さすがにそれはないでしょう。
ただ、外形的には選挙版国共合作のように映ってしまうので、ここは国民党が民進党以上にニセ世論調査を厳しく糾弾して「身の潔白」をアピールしたほうが良いように思えます。

貿易を利用した絡めても続く

以前、中国が台湾産フルーツの釈迦頭(しゃかとう/バンレイシ)の輸入を拡大すると発表して「ほら、国民党政権のほうが台湾の皆さんの懐は暖かくなりますよ」とシグナルを送ったことは紹介しました。

その後も、貿易を選挙介入の手段に動員する動きが止まりません。
中国は新たに台湾産の高級魚であるハタの輸入を再開すると表明しました。もともとは去年6月に「禁止薬物が検出された」として輸入を停止していたものです。

今回、輸入を受け入れる対象として中国が定めたのは台湾南部の高雄市と屏東県にある7つの業者が養殖ハタとのこと。高雄はじめ台湾南部は与党・民進党の強い支持基盤です。
釈迦頭のときは国民党の基盤へのアメでしたが、今回は民進党の基盤に揺さぶりをかけた形です。

しかも、今回は中国政府で台湾政策を担当する国務院台湾事務弁公室(国台弁)が「国民党関係者らが台湾のハタ養殖業者の是正措置を積極的に指導した」と説明していて、かなり露骨な国共合作国民党推しです。

国台弁の報道官は「台湾独立に反対する限り、両岸(中国大陸と台湾)は一つの家族だ」というコメントを出しています。

そもそも中国共産党はなぜ国民党政権を望むのか

台湾総統選に関するニュースの解説を書いていていつも難しいポイントの一つが、中国共産党と国民党の関係についての歴史です。

もともと国共内戦で戦った両党であり、その戦いに敗れた蒋介石率いる国民党が台湾に逃げ込み、今に至るわけです。その敵同士が、現在はタッグを組んで民進党を抑え込もうとしている構図。
やはり一種の国共合作なわけですが、その極端なねじれ具合が出現した理由を、平明な表現で伝えるのに難航します。

そうした中、台湾に精通する先輩ジャーナリストの野嶋剛さんから新刊「台湾の本音」のご恵贈にあずかり、フムフムと読み進めていたら、ありました。平明で的確な表現が。

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