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死んでいく土地、甦る土地

本日売却をご希望される物件をお持ちの方と面談した。
かつてのリゾート地をまとめて幾つもお持ちなのだが、なかなかそこに行くこともなくなり、持っているだけで経費もかかってくるので処分したいということだった。その物件を見て思うことが幾つかあった。

自分は長い間、不動産業も営んでいる。その動きを見てきた中で日本中の土地が死んだのはバブル崩壊から10年後の1998年ごろだったと思っている。
都心でも繁華街の一等地が信じられないような価格で投げ売られ、しかも銀行や金融機関も貸すのを渋り大半の人たちが買えない時代だった。
戦後焼け野原から復興してきた日本の土地がここで完全にストップした。ちなみに統計や数字ではなく、あくまで一業者の当時の肌感覚の話だけれど。仮にこの時期を「第二次不動産崩壊期」と呼ぶ。ちなみに第一次崩壊は1945年の焦土と化した時期。

この第二次崩壊期を節目を境に、ますます死んでいった土地と、息を吹き返してきた土地の二極化が始まった。
都心の一等地の回復は早かった。リーマンショックで少しだけダメージはあったが、この数年は順調にその価格も伸び続けている。
だが崩壊期以前と違うことが一つあった。以前のようにエリアごとに価格が上昇するのではなく、本当に通りや信号一つ越えただけで、上がる土地と下がる土地が二極化し始めたのだ。多くの古い不動産屋や開発屋はしばらくこの事実に気づかず手痛い失敗をした。
税金を確定するための「近傍類似地」という考え方は、大きく捉えればまだ有効だが、民間の相場売買ではこの感覚は既に通用しない。
隣が高く売れたからといって、自分の土地もそうとは限らない。
さらには地形、道路の接道面の長さや奥行きなども加味される。
それぞれの物件を見極める目が大切だ。

そして、崩壊期以降、本当に崩壊しきってしまったのが各地方のリゾート地だ。数千万円で買った物件が数万円になっているなんていうものはザラだ。
ただある一定のリゾート地に関してはこの法則は当てはまらない。この十年ほどで新たに価値が見出された場所に関しては今も高騰が続いている場所もある。昨今ではニセコや宮古島なんてところが有名だが、東京近郊では熱海なんていう場所も高騰している。都心の人々が行きたくなるオンリーワンの何かがあり、大規模リゾート開発がまとめて行われているという部分が共通点と言えよう。都心が比較的小さい区画で価格に格差が出る一方でリゾート地は全体があがりやすい。

今、多くの業者はこれから化ける金の卵のような土地を探している。
どんなに良いホテルや店が一軒で頑張っていても、その土地は化けない。
重要なのは質はもちろんのこと、活性化に足る数だ。
かつてミシュランの店のお客やレシピを街全体で共有することで活性化させたスペインバスク地方のサンセバスチャン方式は日本でも十分有効だと思うが、そうした萌芽を見極めることが大切だ。

で、今日持ち込まれた物件の一つがここのところ注目のエリアだった。
都心からの観光客のみならず、移住する人口も増え始めている。
他の物件は残念ながら全て崩壊しきってしまったエリアだった。
果たしてその一つが大化けするかどうか。

外国人投資家も多く参戦し、混迷を極める不動産市場だが、この先、特にオリンピック以降どうなっていくかが楽しみだ。
価値のある土地はまだまだ上がると自分は思っている。

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