Sumi

観た映画の感想を書き溜めていきたいと思います。 なるべく映画の内容のみにとどまらず、メ…

Sumi

観た映画の感想を書き溜めていきたいと思います。 なるべく映画の内容のみにとどまらず、メタな目線で「他の人が言わなさそうなこと」を書きます。 映画を観る前でも観た後でも読む価値のあるレビューにしたいと思います!

最近の記事

「ウィッシュ」 マグニフィコ王について

ディズニーアニメーションの最新作「ウィッシュ」の配信がディズニープラスで始まったようなので、もう一度念を押して言いたいことがあります。 以前書いた記事はこちら。 あとこちらも。 ネットで「ウィッシュ」に対する意見として、本作のヴィラン(悪役)であるマグニフィコ王を擁護するような皮肉めいた意見が少なくない。 「マグニフィコはいい奴じゃない?むしろ主人公のアーシャが悪役じゃない?マグニフィコ悪いことしてないのに可哀想」というもの。 これについて書きたいと思います。 そして

    • 「落下の解剖学」 “分からなさ”とどう付き合っているのか

      アカデミー賞作品賞候補作品「落下の解剖学」を観ました。 スリリングなサスペンス、ではない まず、この映画に「スリリングなサスペンス」や「いわゆる推理モノ」を期待して観にいくと大きな肩透かしを喰らいます。 事件パートにも裁判パートにもスリルはないし(違う意味で存分にスリリングではあるが)、巧妙なトリックもなければ痛快な解決パートもない。 この映画は、日常に溢れる“分からなさ”とどう付き合うか、いや、現に私たちは“分からなさ”とどう付き合っているのかを、ある男性の死とそれに

      • 「君の名は。」 もうひとつのファンタジー

        新海誠監督のアニメーション作品「君の名は。」を観ました。 もうひとつのファンタジー 心に突き刺さりました。 この映画には2つのファンタジーが登場します。 ひとつはもちろん、「主人公2人の体が入れ替わってしまう」というもの。 そしてもうひとつは、「あの災害の日に戻って、みんなに事前に知らせることができる。」というファンタジー。 男女の入れ替わりやそれによる恋愛模様は、10代20代の方々にはたまらないものがあるのかもしれないけど、年齢的にそこはちょっと響かなかったです。見て

        • 「トゥモローランド」 純粋で強力なメッセージ

          ブラッド・バード監督の実写作品「トゥモローランド」を観ました。 ディズニーランドにあるテーマランドのひとつ「トゥモローランド」に着想を得て作られた映画です。 いや、正確に言うとこうです。 「『世界の人々とその人々に内在する個々の才能』をブラッド・バード監督がどう見ているか」を映画化するために、ディズニーランドにあるテーマランドのひとつ「トゥモローランド」のブランドと世界観を借りて作られた映画です。 カギカッコが多くてすみません 心に突き刺さる、純度と強度の高いメッセージ

        「ウィッシュ」 マグニフィコ王について

        • 「落下の解剖学」 “分からなさ”とどう付き合っているのか

        • 「君の名は。」 もうひとつのファンタジー

        • 「トゥモローランド」 純粋で強力なメッセージ

          「レミーのおいしいレストラン」 ブラッド・バードの創作論

          ブラッド・バード監督のピクサー作品「レミーのおいしいレストラン」を観ました。 この映画には、料理の批評家が登場する。 映画の終盤に読み上げられる彼の批評文ほど、この映画を批評するのにふさわしいものはない。 そこで、この批評文を借りて、私なりになるべく原文の持つ意味を取りこぼさないように翻訳し、間に私の私見を挟むことで、この映画のレビューとしたいと思います。 そう、プロアマ問わず、このnoteも含め、世に溢れる映画レビューは気楽なものですよね。そして、過剰に否定的で煽情的

          「レミーのおいしいレストラン」 ブラッド・バードの創作論

          「アメリカン・スナイパー」 賛成と反対を超えて

          クリント・イーストウッド監督の「アメリカン・スナイパー」を観ました。 この映画のメッセージとは 見様によっては、アメリカ的正義を称賛する映画にも見える(よっぽど頭を空っぽにして見れば)。 一方で、戦争を否定しているようにも見える。 これを以って「中途半端な映画」と言うこともできるけど、まさかそんな単純な映画じゃないでしょう。 この映画が言いたいことは何なのか? それは、「この映画が表現したこと」ではなく「表現しなかったこと」を考えると分かる。 米軍の正義を称賛するなら

          「アメリカン・スナイパー」 賛成と反対を超えて

          「リトル・マーメイド」 その2 黒人になったアリエル

          ディズニーの実写版「リトル・マーメイド」を観ました。 思い切って、人種の問題について書いていきたいと思います。 以下、ネタバレあります。 「白人がよかった」 黒人俳優が演じたアリエルに対して、「イメージと違う」「アリエルは白人がよかった」という声があります。 「アリエルは白人がよかった」と、無邪気に言ってしまえることがすでに時代遅れです。 だってそれって「娘の恋人は白人がよかった」と同じですよね。 ただのレイシズム。 仮にそう思っても、自身の差別意識を恥じながら絶対にオ

          「リトル・マーメイド」 その2 黒人になったアリエル

          「リトル・マーメイド」 その1 すばらしい実写化

          ディズニーの実写版「リトル・マーメイド」を観ました。 見事な実写化 基本的に、アニメーション版をまさに「完全再現」した箇所が多数見られ、これ以上ない実写化に成功しています。 トリトン、アースラ、エリックはほぼアニメの印象なままのルックス。 セバスチャンも、カニのひょうきんな顔立ちが奏功していい感じ。 フランダーは可愛さがすっかりなくて残念な感じでしたが(魚だからしょうがないか)。 そしてアリエル。いろんな意見があるでしょうけど、アリエルの持つキュートさと芯の強さが見事に

          「リトル・マーメイド」 その1 すばらしい実写化

          「インターステラー」 届かないメッセージ

          クリストファー・ノーラン監督の「インターステラー」を観ました。 正直、ちょっと期待はずれでした。 この映画の核は、「『相手に届かないかもしれないメッセージ』をどう扱うか?」だと思います。 まるで見当違いだったらごめんなさい。そうだと仮定して感想を書きます。 相手に届かないかもしれないメッセージ 劇中、まさに時空を超えて「届かないかもしれないメッセージ」のやりとりが試みられる。何度も何度も。 「メッセージを受信できるけど送信できない状況」や「メッセージを送信できるけど受信

          「インターステラー」 届かないメッセージ

          「ウィッシュ」 その2 ポリコレ?

          ディズニーアニメーションの最新作「ウィッシュ」を観てきました。 本作について、SNSなどで「ポリコレ」という言葉を使った否定的な意見を目にします。これにやさしく反論します。 本作に限らず、最近のディズニー作品を批判するときに「ポリコレ」という言葉がよく使われているように思う。これがよく分からない。 もちろん「ポリティカル・コレクトネス」を指していることは分かる。 登場人物の肌の色が褐色であることが、映画の良し悪しに影響あるのでしょうか? 登場人物にハンディキャップがある

          「ウィッシュ」 その2 ポリコレ?

          「ウィッシュ」 その1 見事な100周年記念作品

          ディズニーアニメーションの最新作「ウィッシュ」を観てきました。 ディズニー100周年記念作品 観る前は、ディズニー設立100周年にたまたま当たっただけのことで、中身はこれまでの各ディズニー作品のように「ウェルメイドな(悪く言えば無難な)ファミリー向けアニメーション映画」なのだと思っていました。 でも違いましたね。 完全に「ディズニー100周年を祝う映画」であり、それにあたり『ディズニーアニメーションとは何か』を改めて宣言するような「自己言及型映画」でした。 たくさんの

          「ウィッシュ」 その1 見事な100周年記念作品