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【十二国記 感想】⑧ 妄想 十二国記世界裏設定

 以前、麒麟通信だと思うのですが、新刊(白銀の壚 玄の月)発表を記念して、作者小野不由美先生の過去のインタビューを期間限定で読むことができました。(「波」に掲載された記事だとうろ覚え。ネットではもう読めません。)

 その中で小野先生は、《この十二国記の世界は「魔性の子」の裏設定として作り上げたもの。その世界を舞台に書いてみたくて「月の影 影の海」が生まれた。》といったことをおっしゃっていたと思います。
 結構しっかりした設定をなさっていた様子。だからこそ十二国記シリーズがこんなにも面白い作品になったのですね。

 また、新潮文庫の「風の海 迷宮の岸」の解説で、井辻朱美さんが次のようなことを述べられています。少し長いけれど引用します。

 (前略)先に書いた、いくつかの疑問というのは、この世界のあまりにも現実離れしたゲーム的な設定に関するものだ。例えば、冒頭の地図の人工性のほか、麒麟なる神獣が王を選ぶこと、男女がいるのに子どもは木に生ること、神籍・仙籍に入ればそのまま不老不死になること、覿面の罪によって他国侵略がありえないことなどである。これらは「十二国記」を画然と偽史から分かつものである。偽史的な別世界ファンタジーはいくらもあるが、それらは現実の古代史や中世史に似通っている、ということによってリアリティを保証されている
 が、「十二国記」は、最初からそんな姑息な疑似現実を目指したりはしない。いまあげた五つの疑問のうち、麒麟と王の関係(動物が王を選ぶ)と、子どもが木に生ることの二つは、神話や昔話に前例があり、人類の無意識に自然にしみ込んでいる面があるが、十二国の地形設定や、戸籍によって不老不死が決まること、覿面の罪による王の成敗は、非常に計画的な制度によるものであり、天帝というゲームマスターの存在を感じさせずにはおかない。
 そして、この二種類の設定が混合しているところに、「十二国記」の凄さと面白さがる、とわたしは思っている。(後略)

 こう述べたうえで、「この設定は、現実の戦国時代のようなパワーゲームの世界であれば最初から候補の端にも引っかからない、十代の、女性で、武術も政治経験も帝王学を学んだこともない弱者中の弱者である陽子が、正当に王になれる条件だ。おそらく十二国記の初期設定は陽子のため、ライトノベル世代の少女たちのハンデ解除のための設定であろう。」と推測されています。

 冒頭に挙げた作者インタビューによれば、陽子より先に十二国記の設定があったようですが、この解説が間違っているわけでもなさそうです。私も「ふむふむ」と、結構この解説は頭に残り、その後のシリーズの読みに影響を受けていたと思います。
 この解説には平成24年8月の日付が入れられており、文中で「丕緒の鳥」への言及もあり、筆者は去年発売された最新刊以外、すべてを読んで解説を書いています。そして「シリーズが進むにつれ、『天の条理による神話の明澄さと、人間たちの国家が組織としてどうしようもなく抱えてしまう混沌の対立』という問題が十二国記の世界を浸透し始める。この二重性こそが十二国記の抱える最も深遠で魅力的なテーマである」とも述べられています。

 やはり「黄昏の~」から始まる戴国の動乱の物語、そしてシリーズすべてにおいて、「天」とは何なのかを考えざるを得ないと思うのです。
 感想①で私は最終的に「このシリーズに描かれるのは人の在り方。そのための舞台設定だから、設定そのものを突き詰めることは十二国記の本筋ではない」と結論付け、自分を納得させています。小野先生が十二国記の中で、天についての詳しい設定などを書かれないであろうことにも納得しているのですが、しかし、しかしであります。

 天が何なのかを、全く考えずにこの物語を読み込むことも不可能。

 そして!いや、やはり!
 戴国の大騒動が描かれた「黄昏の岸 暁の天」で、陽子や李斎に天を過ちを犯す胡散臭いものだと言わせ、「白銀の壚~」では琅燦に天の摂理を試させた小野先生、やはりこの「なんだかミョーな天」の裏設定を持っておられたのでは?と勘ぐりまくります。

 本編では明らかにされることはないものの、先生の中では「誰が何のためにどうやって」このような(特殊な・異質な・都合の良い・etc.)世界を作ったのか、というしっかりした説明があったはずだ・・・と希望的観測(=_=)

 ついでに言ってしまうと、今度はこの天を設定した何者かについての新シリーズを書いてくださる・・・と超希望的観測(=_=)・・ダメだろw

 いい加減未練たらしいですね。先生はお体のこともあるし、今はしっかり養生していただき、すんごい短編集をワクワクしながら待つのがよい子のおうちでの過ごし方なのですが・・・やはり言おう。私は今まで長~い期間、妄想したぞ!誰がどうやって、こんな十二国記のような世界を作ったのかということを。
 皆さんはいかが?

 そしてわが身の想像力のあまりの薄っぺらさに泣くのですが、それでもどんな妄想をしたのかを、ここに書いてしまおうと思うのです。

 まずは妄想に至った理由から。
 先に挙げた井辻さんの解説の影響はもちろん大きいですが、自分で読んでもすごく異質なのです、十二国記ワールド。どこがって、平らなところが!そして、余りにも整った地形と「天」の存在
 これが、設定された単独のファンタジー世界として「そういうものなんだよ」と示されれば、私は何の疑問もなく受け入れるのですが、(ほかのファンタジーは、突拍子もない設定や生き物が出てきてもすんなり読めます)現実の私たちの世界(つまり地球が丸くて自然のままに地形や自然が形成されていて、人間や動植物が「野放図に」生きている世界)とリンクしているということが、最大の引っかかりポイントなのです。

 だれか「こっちの人」が作ったでしょ?と言いたくなります。井辻さんの言う「ゲームマスター」の存在。

 全くの別世界で起こる物語でなく、こちらの世界とリンクしているからこそ、誰かの作為を感じてしまいます。

 普通ハイファンタジーや神話の天地創造は、舞台となる世界の陸地や海、空、そしてそこに生きるすべての生き物を神様が作ります。ことによると宇宙そのものも。また獣や鳥や魚や虫なども含めて、みんなが生きられる世界を作るのが普通ですから、地形が十二国記世界のように整っているのでなく、それぞれが生きやすい環境が雑多にある。
 そして創造された人や植物や生き物たちは、神様の子供で愛されているので、どんどん殖えることを推奨される。
 ところが十二国記世界では、人間も生き物も、生殖が全て天にコントロールされている。人間はもちろんですが、特に「作物」「家畜・家禽」というカテゴリーが最初からあり、繁殖は王の祭祀と里木にゆだねられているのです。(人間の生活に直接かかわらないその他は野木で繁殖。その他に関してはちょっと雑なのよ、天。←個人の感想。短編「風信」や「青条の蘭」で仕組みに触れられていますね。)
 あまりにも「人間ファースト」。陸地ですら、「行政区」ありきの創造、人が生きるためだけの「世界設定」です。政治の在り方も「王と州候、天に定められた官」が、ほとんど同じ面積になるように最初から分けられた国とその中の九州を治める、そのやり方しかない。(琅燦はそれ以外の政治の在り方を模索したのかな?なんて思います。)他国との戦争も起こすことはできません。良いことですが人間のやりそうなことを見越して厳しく監視&罰。そんな天は、万物を生み出した母なる天でなく、管理人みたいです。

 やはり「設定」されている!
 いや、当然小野先生が設定したのですが、小野先生も、「設定しただれか」を設定している!w

 堂々巡りになってきました。
 私がなぜ妄想してしまうのか、という理由を一応述べておきたかったのです。
 ここからが私の妄想です。 
 天はこいつが創った! アホの妄想を読んで笑ってやってください。

説1
 昔むかし、中国に人柄仙術ともに非常にすぐれた仙人がいたが、その力をもってしても、世の中から戦乱や暴君、土地を争う強欲さや女性・子供への虐待、出産による死などをなくすことが、どうしてもできなかった。それを悲しんだ仙人は、人の世と関わることをやめ自分の理想の世界を壺の中に作ってしまった。
 壺には術がかかっているので、虚海は実は壺の内壁なのだが平らで果てがないように見える。しかし時々何らかの理由で壺のふたが外れてしまい、その円い口が月として虚海に現れる。そして開いた壺の口から卵果が流出したり現実の人間が吸い込まれたりする。それが蝕である。(壺のふたが取れる理由は、私としては仙人の飼い猫の仕業にしたいが、壺に理想郷を作るに至った仙人の苦悩にみちた重厚な物語を期待すると、猫NG。仙人の苦悩が関係する。)
 陰陽師の式神みたいな天帝の分身を天に置くが、式神的なのでいまいち人の心情などを汲み取ったり複雑なことを考えたりはできない。
 また力のある仙人ゆえ、神話の中の生き物などもつい壺に作ってしまったが、スペシャルな麒麟と健全な王に妖魔を封じる力を与えた。

説2
 非常に科学力の進んだ何者かが、このままだと人間は滅亡してしまうことを心配する。そこで時空のゆがみの中に「人類の保護と研究」を目的とした「別の空間」を作った。
 人類滅亡の原因となりそうなことを取り除くため、自然科学の発展の原因となる物理法則の確立や天体観測などが不可能な、平らで最初からあえて人工物だと分かるような世界にしてある。
 遺伝子工学や生物学も非常に発展しているため、人間全部に、王・仙になった時に発動する不老不死や天綱の刷り込み、覿面の罪での死などのスイッチになるような遺伝子を組み込んだ。
 また人口爆発による危機を防ぐため、通常の生殖ができないようにしてある。その代わり、卵果の生る里木を設計して各地に置いた。多様性のためだろうか、半獣も人間社会の中に組み込んだ。
 この十二国記世界のために遺伝子工学で全く新しく作り出したのが、「麒麟」である。麒麟こそがこの世界が永続するための要であり、慈愛の性質を際立たせ、善政を敷きそうな王を選ぶ能力と役割を与え、民の苦しみで病が発動するようになっている。いうまでもなく、王の状態と麒麟の生命力は何らかの仕組みでリンクしている。
 天とは、その世界を永続させ研究するための場所であり、何者かの中から何名かが常駐して十二国世界を管理しており、天帝と呼ばれる。その付属機関として、十二国世界の要となる麒麟を生み出す特殊な施設、蓬山が世界の中心に置かれる。
 もともと存在した人間の遺伝子をもとに子どもをもたらす里木と異なり、非常に高度なテクノロジーを必要とする蓬山なので、厳重に守られるよう黄海の妖魔も黄海内で作り出された。妖魔の働きはそれだけでなく、麒麟が王の悪政と民の苦しみで病むように、そういう場合に活気づくよう設定されている。最も特殊な、強い力を与えられているのが麒麟であり誕生から育成まで天のコントロール下にあるが、麒麟と妖魔は同じ目的で作り出された親戚のようなものである。しかし妖魔は王の政治のバロメーターとなるべきものなので、天は妖魔を(誕生すら)コントロールしない。だから「天の理の外」と言われる。悪政により麒麟も病み、命を落とすがままにされているので、バロメーターという意味では妖魔と同じ。
 太陽の活動の活発化とか巨大な重力波、超新星爆発などの大きな宇宙の出来事に影響を受け、この特殊な時空のフィールドも時々揺らぐ。その時蝕が起こり、卵果が流れたり、時空が重なって現実世界の人間が十二国記世界に滑り込んだりしてしまう。卵果が流出したときのために、受精卵の初期段階に戻され、妊娠初期の女性の体内に入る仕組みが設けられた。(ワタシモウゲンカイデス)

説3
 再度言います。もう私の頭脳では限界ですw
 普通に、コンピュータの中に作られた仮想現実。すべてはデータとして存在しているだけ。だから向こうの人はこちらに来られない。データベースに何もかも記録されていて、仙や王になった・不老不死になった・夫婦の戸籍を取得して子を得られるようになったなど、入力するだけで簡単に登場人物のステータスを変えられます(;´Д`)
 ゲームキャラのカスタマイズです!どうだ、この想像力のなさ!
 萩尾望都の「バルバラ異界」や映画「マトリックス」、映画版ドラクエ「ユアストーリー」(声を佐藤健君や有村架純ちゃんがやったやつ)みたいなことだよ!!やけくそだよ!!!ペラッペラだよ!

 説1、2も含めて、もう殴っていいです、右の頬も左の頬も(T_T)
あの、重厚な、人間ドラマでずっしりの十二国記が・・・・お笑い昔話かとんでもSFとなり果ててしまった・・・重罪です、私。
 読み終わって30秒後に、この記事は皆さんの記憶から自動的に消去される設定にしておきました。申し訳ありません。

でも、もうちょいアホなこと書きたいから、次も懲りずに書くのです。

つづく

  

 




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