井上涼展ゴールデンびじゅチュ館 行ってきました
熱海のМOA美術館で2年ぶりに開催された井上涼展に行ってきました。
2022年7月27日(水)。
事前にオンラインでチケットも購入し、前の晩は早く布団に入るもワクワクしてうまく眠れず。
小学生かいな?というテンションでした。
当日熱海は天気にも恵まれ、美術館から見下ろす青い海と青い空。
海の近くは気候も優しくて、暑さの中にも柔らかくさわやかな風が吹いていました。
ではいよいよ『ゴールデンびじゅチュ館』に入館!
展覧会の構成と見どころを、上のМOA美術館のサイトからまとめると
1.金ってなあに?
2.金を使った井上涼さん手作り作品コーナー
3.本物の金に触ってみよう
4.本物の「びじゅつ」作品を見てみよう!
5.「ゴールデンびじゅチューン!」の部屋
6.新作映像
7.「紅白梅お泊まり会図屏風 2022 」
8.オリジナルグッズ
9.フォトスポット
となっています。
文字だけそのままコピペしましたが、サイトではたくさんの画像付きの詳細が見られますので、展覧会の様子を知りたい方は是非ご覧ください。
今回どんなコンセプトで、この展覧会を開いたのかは、写真の井上さん手描きのごあいさつで知ることができます。
「びじゅチューン!」に出てきた美術作品の中で金が使われているものを中心に、金と美術とのかかわりや金細工のあれこれ、実際に金が使われているびじゅつ品などを見ることができます。
純金の棗(茶道のお茶を入れる道具)も持ち上げて、どのくらい重いのか体験することもできました。
現在金は1グラム8,000円ほどもするそうです。ゴージャス。
「びじゅチューン!」の作品は、10点ほどがクローズアップされていました。金と言えば元祖キンキラ☆、な「風神雷神図屛風」は2019の展覧会で扱われていたので、今回はあまり登場しませんでしたが、ツタンカーメン王のマスクやクリムトの「接吻」、一見どこに金が使われているか分かりづらい上村松園の「焔」などをモチーフにした「びじゅチューン!」作品から、金を使った美術品のあれこれを知ることができます。
松園の「焔」、金の使いどころが分かって、実物を想像すると、私はちょっと「ひっ」となりました。
どこに使ってあるかは、展覧会に行ったり調べたりしてくださいね。
さて、概要はこのくらいにして、私は私の道を行く!
ということで、いや全部堪能して5時間ぐらい美術館にいたのですが、その中でも「読む猫的これは!」を中心に書いていきたいと思います。
まず何といっても、今回も家からちゃんと準備していった
コスプレ
いきなりそこかいな?ですが、そこなのです。
2020の時は、非売品のオリジナルメモ帳をもらいました。
今回も勿論、限定グッズも欲しいし「びじゅチューン!」に関してはとことん恥ずかしげもなく楽しむことに決めているので、コスプレ、しましたともええ。
・・・・・
もったいぶっても仕方がない。
これです ↓
「美の女神」を騙る初老
これ実は、前回2020「炎のアツアツびじゅチュ館」を記事にした時の写真です。今回も同じヴィーナス委員長のコスプレで行ったのですが、写真を撮らなかったので。(その時の記事のキャプションは「勇気ある初老」でした)
手作りした体操着入れと委員長腕章を、大事にとっておいたのです。
新しくセーラーカラーとスカーフも作ろうか迷いましたが、諸般の事情でそれはやめておきました。
ヴィーナス委員長のコスプレ、さっとその場で身に付けられるし、それほど目立たないけれど何といっても文字で「私はヴィーナス」と分かりやすくアピールしているしで、気に入っているのですw。
前回は受付のお姉さんに気づいてもらえず、後からこそこそと自首…じゃない、赤面しながら自己申告して記念のメモ帳をもらったので、今回は入館してすぐの受付のお姉さんに、最初からアピールしましたw。
いただいたのは、黒字に金の花火、そして金の雲に寝転ぶ壺のマッサージ屋さんの店長と忍者たちと、展覧会のロゴの入ったシールでした。
そしてなんと!
今回は館内でゴールデンびじゅチュ館のクイズラリーも行っているとのこと。早速問題用紙と鉛筆をもらって、館内を進んでいきます。
これは「ゴールデンびじゅチュ館」会場だけでなくお庭も含んだМOA美術館全体にクイズが設置されていて、全部で六つのクイズに答えて、これまたオリジナルのグッズをもらえるという趣向でした。
最初からゴールデンびじゅチュ館だけでなく、今回もМOA美術館全部を涼みながら見て回るつもりでしたが、余計に気合が入りました。
全部のクイズに答え終わり(大人げないけれど、わたくしには超カンタンに解ける問題でしたわよオーホホホ)、貰ったのはコスプレのとはまた違うオリジナルのシールでした。
保存せずにどこかに貼って楽しむと決めていました。帰宅してどこに貼ろうかと考えましたが、ここしかない!という場所が見つかりました。
「びじゅチューン!」の全番組を保存してあるBlu-rayディスクのケース。
これ以上ふさわしい場所は考え付きません。
今見ても、シールそのものと貼る場所の我ながらのナイスアイディアにニヤニヤしていますふふふ。
・・・・記事のトップがコスプレとオリジナルグッズ、これでは本当にこの人は美術展をしっかり見てきたのかという疑惑が起きかねません。
やはり展覧会の内容にも触れねば。
展覧会を見るにあたって、コスプレのほかにもう一つ、事前に得た情報から「これは外せない」と思っていたのが、井上涼さんによる音声ガイドです。
美術展を見るのに、何の既成観念も持たずに作品そのものと向き合うのが、私は好きです。
以前は、作品よりその隣に表示された文字の情報を丹念に読んで、満足した気になっていましたが、最近そういう余分な情報を入れずに作品そのものを自分の感覚で見るようにしているのです。
これも「びじゅチューン!」の、自由(すぎる)美術鑑賞のお陰でしょうか。
けれど今回は、なんといっても井上涼展。
ご本人のあの独特の語り口調で、展示された金細工の道具の特に何が気に入ったとか、専門の工芸士さんの指導を受けながら沈金の作品を作った時のエピソードとか、音声ガイドでしか聞けない話にほうほうとうなずいたりクスッと笑ったりしながら展示物を見学できて、展示品の印象もより深まりました。
予想通り、ありきたりの音声ガイドではありえなかったですよ。井上さんの色々な思いが詰め込まれていました。
この音声ガイド、ご自身の作品の解説も勿論ですが、『本物の「びじゅつ」作品を見てみよう!』のコーナーがすごかった。
金が使われた様々な美術・工芸品が展示され、そこには井上さんが手描きした作品解説の表示もあったのですが・・・
音声ガイドでは、その作品を「びじゅチューン!」作品にしたらどうなるか、といった井上さんのイマジネーションが炸裂しています。
中には仮の「びじゅチューン!」タイトルまでつけられたものもありました。
金糸をふんだんに使った古い豪華な着物をクラブに見立て、柄として舞い飛ぶオナガドリはパリピ。「ナントカ○×オナガナイト!」みたいなタイトルをつけていましたが、改めてご自身でタイトルコールをしてみてしっくりいかなかったようです。
「作品にするのは無理なようです。さようなら!」
と、音声解説が終わっていました。
すわ!新たな「びじゅチューン!」作品の誕生かと、私は興奮したのですけれどw
そんな内容も楽しいのですが、私にとって井上さんの声、朴訥で嘘のない語り口調そのものが素晴らしいのです。
もちろん音声ガイドがなくても、展示品や解説も充実しています。
でも、お値段1台600円、私にとって、今回の展覧会のとてもよかったことの一つになりました。
展示品の中で興味深かったのは、井上さんがチャレンジした金を用いた作品群です。
金の上に絵を描いた日本画
普段と全く違う画材の扱いに苦労されたそうです。
特ににかわを混ぜた顔料。すぐ固くなってしまうのだそうです。
その都度、指導して下さる方々にお願いして湯せんしてもらっていたのだそうですが、人にものを頼むことが苦手な井上さん、そこが大変だったというお話。作品を作ることよりそこの苦労が身に染みていたとは。
ちょっと笑ってしまいますが、実は私も井上さんを笑えるタイプではなく身につまされます。井上さんの気持ちがすごくわかります。
ものを作ることは一人ではできないというようなことを、おっしゃっていた気がします。
(内容は覚えているのですが、音声ガイドの言葉遣いなどを正確に覚えているわけではないので、今後の音声ガイドについてもその点はご了承ください。超ざっくり「そんなようなことを言ってた気がする」レベルで再現します)
漆のお皿に「真珠の耳飾りのくノ一」を描いた金蒔絵。
制作期間が3か月ほどしか取れない中で、工芸作家さんに指導をお願いしたら、本当は半年はかかるのだと言われたそうですよ。
漆を塗って、乾かして、研いで、という作業を何回も何回も繰り返すのだそうです。
しかし、どうしても今回の展覧会に、金蒔絵のお皿を出品したいとお願いしたのだとか。
そして、実際に作業をしてみて、絵の具の上に塗り重ねた漆を炭で磨いて、絵を研ぎだす作業が本当に大変だったようです。
その様子は展示されたビデオで見られます。
耳からは井上さんの音声解説。蒔絵の職人は「自分には絶対無理だなぁ」というようなことを何回もおっしゃっていました。「やりたくない」って言ってたかもw。
苦心の末3種類の異なる金粉を使い分けて仕上がったくノ一の蒔絵のお皿は素晴らしくて、私は欲しくて仕方がありません。
絵柄も色使いも本当に素敵です。
実際に、井上さんの手が触れてこの作品を生み出していたのだと思うと、胸がドキドキしました。
蒔絵椀「お休みの日の宮本さん」
お椀の中で、ゴールドの波に一人宮本さんが膝を抱えています。
「住んでます八つ橋蒔絵硯箱」の、嫌みなお金持ち宮本さんですね。寂しそうです。いい加減素直になって、ふみちゃんに謝ればいいのに。
(「住んでます~」は、私が最初に見た「びじゅチューン!」作品。その独特すぎる世界観、子供番組だとスルーしたつもりが気になって気になって…知らぬ間に脳を侵略されて現在に至ります)
お椀の内側に金がとてもきれいに塗られていて、キンキラなのに嫌みがなくて、むしろシック。
こういうのでお雑煮など食べてみたいものです。
もう一つ「沈金」で作った「ゴールド鳥獣戯画ジム」
これは、漆を塗った板を彫刻刀のような道具で線彫りし、そこに金粉を入れて作るのだそうですが、井上さんによると
「彫るのは固くて本当に大変だった。金粉を入れるのは一瞬だった」
そうです。
繊細な作品。
今回展示されていた作品はどれも割と小さくて、沈金のラインなど実物ではよく分からないので、写真で大きく引き伸ばしたパネルがいくつか展示してありました。
一緒に展示された解説の中の、井上さんの言葉 ↑
「小さな作品の中に起こっているドラマ?をごらんください」
とあります。
作者にもコントロールし切れない金粉のふるまい。
ご自身が描いたはずの絵に金粉が生き物のように仕上げを施し、きっと井上さんも思ってもみなかった効果が出たりしたのでしょうね。
そういうのを井上さんは「ドラマ」ととらえるのだなぁ、と感激しました。
今回の展覧会で、音声ガイドとともに面白かったのが、井上さん手描きの解説。
金文字で書かれて、あちこちに表示されていました。
そこにも井上さん独自の感性がふんだんに発揮され、しみじみ読んでしまいました。
先ほども触れた『本物の「びじゅつ」作品を見てみよう!』のコーナーの、古い仏像の作品解説も手描き金文字でしてありましたが、やはり「びじゅチューン!」に通じる独特の世界観でした。
金箔がだいぶ剝がれてしまった仏様が過去のキンキラだった自分を振り返っている設定。
仏さまが過去の自分を黒歴史と見ていたのか、肯定していたのか、今私は忘れてしまっていますが、その鑑賞の世界観がやはり井上涼ワールド、とてつもなくおもしろかったことだけは忘ません。
ああ、もう4000字超えた…。
でも続き物にはしたくないので書ききってしまいます。読者の皆さんがんばって!!
「ゴールデンびじゅチューン!」の部屋
ここは来館者参加型の部屋でした。
МOA美術館の井上涼展の看板娘、梅あゆみを探したり、今回の展覧会で取り上げた「びじゅチューン!」作品のパネルが並んでいたり。
中でも、井上さん手描きのアイディアスケッチは必見です。
手描きスケッチは全部で10枚。紙のしわやかすれ、実際に放送された作品とは異なるアイディアもあったりして、臨場感というのでしょうか、ひしひしと伝わってきます。
さすが、ラインなどがすごく美しくて力強くて、ずっと見ていられます。
額縁も金でした。
また参加型として、金箔に見立てた金紙にイラストを描いて、屏風に貼ってみようというコーナーがありました。
先週金曜日(ゴールデンだけに?)にスタートして、すでに2隻の屏風が裏も表もほとんど埋まっていました。
私も柄好き吉祥天女様を描いて貼ってきました。
「貼ったら写真を撮っておいてね」とあったのですが、後で何かあるのかな?
撮ってきたので、恥ずかしいけれどこれも載せておきます。
他にも色々、とことん「びじゅチュ館」を楽しんできたのですが、もうこの辺でおしまいにしましょう。
残りは写真を少々載せて、キャプションをつけておきます。
井上さん実際に黄金の茶室に入っています。思いのほか落ち着くようですよ。
МOA美術館の「井上涼展ゴールデンびじゅチュ館」。
私の記事なので、私の面白かったところだけが強調された記事になっています。(当たり前か)
興味のある方は、記事の最初に載せたサイトをぜひご覧ください。
また、記事の中でたくさんお借りしたМOA美術館のTwitterには、他にも展示の準備中の井上さんの姿など、たくさん載せられていてそれもとてもお勧めです。
でもそれよりなにより、可能であれば実際にぜひ、訪れてみてください
展示内容も、美術館自体も、冷房の効き具合もw とてもいいのです。
長い記事をお読みいただきありがとうございました。
「やれやれ」な後日談です
お読みいただきありがとうございます。楽しんでいただけたなら嬉しいです😆サポート、本と猫に使えたらいいなぁ、と思っています。もしよければよろしくお願いします❗️