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産まれてきてくれてありがとう



2021年3月13日、午後3時44分。
産声を聞かせてくれるなんて思わなかった。


妊娠31週2日。
週数的にも、羊水過少ということでよりお腹の中で肺が充分に育っていない可能性がある。
産まれてきた時に、どういう状態なのか誰にもわからなかった。


想像より元気な産声が聞こえてきて、涙が出た。


そして少しだけ顔を見せてくれた。
忘れもしない
(((〇〇くん!)))
夫の弟の顔にそっくりだと思った。
その次に私の兄にそっくりだと思った。


1395gの男の子。
1500gに満たない子は極低出生体重児と呼ばれるらしい。

すぐに呼吸器に繋がれ、NICUに運ばれていく。
コロナ禍でも母親は体調を崩さない限りは24時間いつでも面会に行けた。
父親は基本面会禁止だったけど、NICUへは急性期(産まれてから72時間)は1日15分くらい。あとは先生から説明が必要となった時。
度々病院のタブレットを使ってテレビ電話をしてたくらい。


結局夫は産まれたての姿を見て、生後3日間少しだけ触れ合って、
3ヶ月後に退院するまで息子には直接会えなかった。



産声を聞けて安心して魂が抜けて、あとはあんまり覚えていない。
手術も無事に終わって、産後の個室の病室に移されて、
夫が息子の顔見たよって病室に来てくれて。

血流が止まらないように脚にポンプをつけて、麻酔が切れるまで
ぼーっとしていたのかな?
痛くなってきたら、痛み止め入れるので呼んでくださいと言われていたので、
痛くなってきたな?と思ってナースコールを押した。
今思えば、もう少し早くナースコールを押すんだった。
陣痛みたいにちょっと我慢してしまった。

座薬タイプの痛み止めが効かず、
傷の痛みと後陣痛と、耐えがたい痛みが襲ってきて気を失いそうだった。
すぐに注射タイプの痛み止めを打ってもらって、
鎮静されたようにそのまま寝た。


夫が面会制限時間ぎりぎりまで、そばにいてくれた。
痛みに耐えることに必死で、目を閉じて何も言葉を発せれてなかったけど、
ありがとう。ちゃんと伝わってたよ。



美しさに救われて、生かされてきた。
どんなに打ちのめされて絶望しても、美しいと思える世界が存在することに救われてきた。

また生かされた。
もう何も言葉はいらない。
私を、私たちを全ての愛で満たしてくれてありがとう。
産まれてきてくれてありがとう。

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