最近「公務員辞めます!」的な宣言noteがやたらにレコメンドされてくるのですが、一方で「公務員であり続けるか否か」みたいなことが話題にされる場面も増えていて、個人的には「わざわざその壁立てる必要ある??」と思うことが多いです。
実際、転職した途端に現役職員から公平だの平等だのという話をされることも多いのですが「こちとら自治体職員30年もやってて、あなたよりよっぽどキャリアあるんで、そんなことわざわざ言われるまでもないですけど??」と言いたくなる感じもありつつ、なんとなく不安を感じている人が一定数いるというのも肌感覚でわかるところです。
しかしながら、その不安感の素が全体的にどうもぼやっとした感じなので、私なりにすこし解像度を上げてみたいと思います。
そもそも公務員ってなに?
公務員か、そうじゃないかみたいなことを問題にするなら、そもそもその両者にどんな違いがあるのかを知ることが必要です。
超ざっくりですが、公務員と民間企業の違いを挙げるとこんな感じでしょうか。
両者には根本的に違いがありますが、個人的に最も大きな違いは「活動原資」かなと思っています。
民間企業は、自分達の活動原資は自分達で稼がないとそもそもなにもできませんが、地方自治体は税金で賄われるので、自分達の給料を稼がなくちゃみたいな発想はそもそも持つ必要すらありません。
その代わりに高い視座を持って業務にあたる必要があり、それが色濃く現れているのが地方公務員法第31条に規定される「服務の宣誓」です。
全ての公務員は、災害時など緊急の場合を除き、この宣誓書に署名してからでないと職務に従事してはならないとされており、宣誓書の内容は自治体ごとの条例によって決められますが、概ね以下のような感じです。
日本広しといえど、このような誓いを立てて仕事にあたるのは公務員だけであり、それは素晴らしいことです。
実際に、公務員であった30年間、私はこの宣誓のもとに職務にあたり、「横浜を良いまちにしたい」というただその1点のみをモチベーションとして、必要な知見を広げ、共に横浜や社会をより良くしていける人達との人脈を築いてきました。
「私は横浜市役所のために働いているわけではなく、横浜市のために働いている。」「公務員は横浜をより良くするためのツールである」という言葉は嘘偽りない本心でしたし、自治体を離れたからといってこの宣誓を捨て去るわけでもありません。
しかし今、地方自治体は多くの職員がこの宣誓の内容を思い出せなくなっているほど疲弊しています。
国から次々に降ってくる無茶振りに近い仕事
年々激甚化する災害
マネジメント力がなく、マイクロマネジメント(と、それをこじらせたパワハラ)しか能が無い管理職の増加
それに伴って複雑化するレポートラインとうなぎ登りに上がる調整コスト
忖度の権化ともいえる無駄な資料の数々
紙と手書きにまみれた非効率な業務
知見を広げようと外に出ようとすれば「それは業務になんの関係があるんだ」と止められる
「業務改善って業務時間中に考えていいんですか。」という恐ろしい質問が飛んでくるほど、改善意識が失われ、眼の前の書類をさばくことしかできない現場
全ての自治体現場がそうだとは口が裂けても言いませんが、私がいた30年間でそういった光景が増えていくと同時に「この人の背中を追いかけたい」と思うような先輩や上司がどんどん減っていったのは、ひしひしと感じていたことです。
私が自治体を離れたのは、自分の残り時間と照らして、そういう現場を外から支えるほうが30年前に宣誓した「地方自治の本旨の実現」により近づけると思ったから、また、以下のnoteに書いたとおり「公共の福祉を追求することと、企業の利益を追求する活動があるレベルで結びつくようになった。」という幸運な状況があったからです。
その幸運は、当然ながらただ単に座していただけで手にできたわけではなく、それなりに「能動的な学び」を積み上げる過程で得た知識や経験、人脈を得た先にあり、それは公務員時代も今も自分を支えてくれる大事な資産となっています。
そして今、世の公務員の皆さんが不安を感じているのは、途中退職という選択肢がほとんどなかった地方自治体にあって、本来は高い視座の元に積み上げるべき知識や経験、人脈を得る時間やスキルをすでに失っているのでは?今の地位は自治体という狭い世界でしか成り立たないが、実はそれは沈む船であり、自分はそこから逃げられないのでは?という点ではないかと思います。
正直、これは当てはまる人もそうじゃない人もいると思いますが、少なくとも言えるのは「公務員であろうとそうじゃなかろうと、組織の看板を外したら何も残らない人間にはならない方がいい。」ということです。
人は学ぼうと思えばいつからでも学べる生き物です。私はそういう人達に外から学び方を伝えられる人になりたいと思っていますし、叶うならそのスキルを使って自治体の中で「正しく戦って」くれる人材になってほしいと思っています。
今こそ宣誓の内容を思い出して、一緒に頑張りましょう。
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