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『枯れ葉』-ブルーカラーはつらいよ。-

カウリスマキの『枯れ葉』はブルーカラーの人々を描いている。
いつものごとく、登場する人たちの顔色は暗く、棒立ち。肉体労働者の決して明るいとは言えないザ・現実みたいなものを描いている。
酔払わないとまともでいられなかったり理不尽な理由で解雇されたり。そりゃそんなしかめっ面にもなるよ。

でもしんどいだけのザ・現実じゃないところがいいところ。ユーモラスな部分もある。真面目な顔して冗談言うひとみたいな面白さがある。(自称)歌のうまい友人がいたり。カラオケに行く下りもそんなに気合入れてカラオケって行くんだって可笑しかった。実年齢と見た目年齢の差を気にしていたり。
ヒロインもしかめっ面だけどユーモアがある。犬に電話出てと話しかける、おかえりのウインク!(最高)

お話としてはしんどさ80%、幸せ20%だけどしょうがないから生きていくか!みたいな根暗な前向きさがあって見ている方も温かい気持ちになる。

映像的な部分でいうと色々驚きも感動もある。
まず、粉塵を飛ばしている主人公。多分あえてだと思うけどバシッと決まりそうな構図からずらしているのが良かった。撮ってやるぜ!みたいな力みがなくて、脱力感がいい。
劇場でもブレッソンのポスターが貼ってる。手のクローズアップ。ブレッソン的な撮り方。カウリスマキこんなに映画が好きだったんだ。ジャームッシュも好きなんだ。

労働者をたくさん描いてきたカウリスマキ。今回は、投げ捨てるアクションがたくさん出てきた。捨てる。放る。
あと一輪車を押すとか。運ぶ。押す。運動と労働は映画と相性いいのかも。
そんな運動から終盤に小津っぽい風景描写。痺れました。
ミニマルな視点からぐっと引いて風景を映す。お前も生きていていいんだぞ!と言われたような気がして、風景もとてもきれいで泣いてしまった。

根暗な前向きさといい意味で力の抜けた脱力感(合気道の達人みたいな)。そして、映画への愛が感じられる映画でした。
これを引退作と言わず文句をブツブツ言いながらこれからも映画を世に出していってください。

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