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台湾経済に関する調査まとめ 2020年8月

当記事は一番下の参考記事URLのなかから抜粋して、一部要約しながらまとめています。

台湾という国にどんなイメージを持っているだろうか?小籠包、タピオカミルクティー、千と千尋の神隠しのモデルになったと言われている(本当かどうかはさておき)九份、親日の国。だいたいそんなイメージだろう。

人口は約2,400万人で、面積は九州を一回り小さくしたサイズだ。主要都市は台北や高雄で、経済や観光の拠点となっている。驚くべきことに、訪台する外国人旅行客は2019年、1180万人を超えている。台湾の人口のおよそ半分がインバウンドと考えると、観光産業のインパクトは大きい。ちなみに訪台する日本人観光客は2018年に196万人、2019年に約216万と少しずつ増えている。第3次タピオカブームが牽引したこともあって、台湾人気は以前衰えを知らない。

しかし、台湾は観光産業だけで成り立っているわけではない。実は台湾経済は今、世界から大きな注目を浴びていることはあまり知られていない。特にIT産業・スタートアップ業界においては目覚ましい成長を遂げている。下の記事を見ていけば、きっと新たな発見をきっと得ることができるだろう。そして、台湾という国を違った視点から捉える機会となるだろう。

まずはマクロ経済の視点から、台湾経済の動向をまとめていく。

台湾の経済政策

台湾のGDP

まずは台湾のGDPから見ていこう。2019年第4四半期(10~12月)の実質GDP成長率は前年同期比3.31%だった。2019年通年の実質GDP成長率を前年比2.71%である。一方、日本の2019年通年のGDPは前年度比0.0%増で、横ばいである。相対的に数字を比べれば、台湾は日本よりも成長を遂げている、ということが言える。もちろん経済規模、流通額などは日本のほうがはるかに高いが、成長している国のひとつであることは間違いない。

2020年はどうか。新型コロナウイルスによって世界中の経済は大打撃を負っているなか、2020年1〜3月期の実質経済成長率は前年同期比1.54%だった。前期比年率では5.91%のマイナスとなっており、これまでの勢いと比べると消費が落ち込んでいることが伺える。ただし、台湾政府は強気だ。2020年の年間実質経済成長率は前年比1.67%という見通しを立てていて、プラス成長を見込んでいるようである。確かに台湾のコロナ対策は先手を打って対策を強化していたことで、感染者数は8/5時点で476人、死者は7人とかなり抑えられていて、すでにコロナは収束しかけているというムードも漂っている。消費が低迷していることには間違いないが、アメリカやヨーロッパ諸国のような大打撃は免れていると言えるだろう。

輸出主導の経済

台湾は製造産業に強い。2018年における半導体産業の生産規模は868億米ドルに達し、世界第3位の実力である。部門別にみると世界1位の産業もある。グローバルにおいて高い競争力をもっている証だ。世界的な半導体生産基地として、台湾の輸出産業を支え、成長を牽引している。特にコロナ禍による外出自粛の影響で、PCやタブレット端末、ゲーム機など半導体部門の需要が伸びていることもあり、それが成長維持の要因のひとつでもある。

しかし懸念もある。それはやはり中国の存在だろう。政治的にはきな臭いやりとりが両国で行われているし、香港の国家安全維持法による問題も決して他人事ではない。2020年の総裁選で圧勝した与党・民進党の現職・蔡英文氏は対中強硬路線であるし、政治的な対立はおそらく経済にも少なからずダメージになるだろう。というのも、台湾は政治的には対立しているものの、中国への輸出は全体の3割を占めている。政治と経済をどう切り離して解決していくのか。ここは蔡政権の腕の見せ所といったところか。

IoT、ICT、AIへのシフト

蔡政権の経済政策の目玉として挙げられているのが「新南向政策」だ。ASEAN10ヵ国、インドを中心とする南アジア6ヵ国、オーストラリアとニュージーランドなど、計18ヵ国との関係を強化し、共に経済発展を目指す政策だ。この貿易では主にインフラ関係、IoT技術、Eコマース、ヘルスケア、教育などの分野に注力をし、輸出を活性化するらしい。得意領域の半導体産業をさらにアップデートさせて、かつ中国への依存から脱却していくのが狙いだろう。

もちろん日本との経済協力も積極的だ。もともと親日国として知られており、またビジネスモデルも日本とあまり大きく変わらないため、お互い進出するのに都合がいいという側面もある。日本とは、ハイテク・バイオ系、医薬品、IoT、クリーンエネルギー技術、介護などのヘルスケア産業などで協力を仰ぐ。

国内においてもIT産業への投資は積極的に実施する見込みだ。台湾経済はもともとアップルやグーグルといったグローバルIT企業のプロダクトを生産する拠点として経済を下支えしてきた。特に昨今だと米中貿易戦争の影響により、生産拠点を中国から台湾に移設または回帰する動きも活発である。このような状況のなか、政府は2017年に「前瞻基礎建設計画」を制定し、次世代インフラへの投資を加速させている。グリーンエネルギー、ITインフラ、治水などの環境インフラなどが挙げられる。こうした技術はすべて半導体産業から派生したものである。

このように、台湾経済は様々なリスクと隣り合わせでありながら、堅実な成長を遂げてきた。いまでは台湾証券取引所に上場している企業数は936社、時価総額は1兆560億米ドルにのぼる。

天才大臣オードリー・タンの出現

並外れた経歴をもつ大臣の登場

台湾に、天才と呼ばれる異色のIT担当大臣がいる。それがオードリー・タン氏だ。彼女の出現によって、台湾政府は一気に世界中から着目をされるようになった。8歳からプログラミングを学び、14才で中学を退学。16歳で会社経営に参画し、後にアップルやオックスフォード出版などのデジタル顧問を経験する。加えて24歳でトランスジェンダーであることを告白し、名前を唐鳳へと変更。そんな彼女の大臣としての性別は「無」である。

かなり端折ってしまったが、彼女の壮絶かつダイナミックな人生は決してこれだけの文章量では語りつくせない。より詳細の彼女の人生の遍歴はここを参照すると良い。

コロナ対策で脚光を浴びる

彼女が注目されたのは、新型コロナウイルスの対策だった。発祥元である中国からわずか150キロの土地で、交流も盛んなはずなのに、パンデミックを劇的に抑えた台湾。その裏には彼女の活躍があったことは周知の事実であろう。

感染者が確認されると、台湾政府はいち早く中国人の入国を禁止した。そして徹底的に感染者を追跡して感染経路を突き止めるという強硬策に出ている。とはいえ、人々の中で恐怖心があったことは間違いなく、日本でも同じことが起きたが、台湾でもマスクの需要が激増した。当然、そこで需要と供給のバランスは崩れ、品薄状態となる懸念はあった。そこでオードリー・タンをはじめとする「台湾零時政府」のシビックハッカーチームがマスクの店頭在庫確認アプリ開発を主導。見事感染パニック抑制に大きく貢献をした。

タン氏率いるシビックハッカーチームは、後に東京都の新型コロナウイルス感染症対策サイトの開発に協力したことで、日本でも有名になった。そこがきっかけで、オードリー・タンという異色の大臣がクローズアップされたということだ。

情報公開と自由の精神を堅持するコミュニティ「台湾零時政府」は、2012年に立ち上がった。多くの市民がこのイノベーション・スキームに参加し、台湾テクノロジーの発展に大きな影響を及ぼしている。彼女が主導したこともあって、多くの市民がこの組織への参画を希望し、いまや台湾のシビックテック・コミュニティは世界第3位の規模になっている。

さらに台湾政府は、「Eマスク」システムを開発。ネットやアプリでマスクを予約購入し、コンビニなどで気軽に受け取れる。しかもICチップ付きの保険証で予約するため確実に手に入り、買い占めも防げるという画期的なサービスを提供した。国民の評価も非常に高く、こうした手腕も彼女の評価をうなぎ登りにした。

天才の登場は必然だった

台湾は行政と立法が分かれている。それどころか「五院分立」(行政院・立法院・司法院・考試院・監察院)というように権限が細分化されていることはあまり知られていない。こうしたことから、各省庁は専門性をより尖らせることができ、その分野のスペシャリストを配置する。こうしたオープンイノベーションの要素を背景に、彼女のような人材を起用できる体制ができたのだ。

そしてこの一連のコロナショックによる台湾ブームは、世界に衝撃を与えた。経済メディアのブルームバーグは、先日新型コロナウイルス封じ込めの成果を国別に格付けして発表。その結果、台湾が世界一と評価された。この流れは、天才の登場をもたらした台湾政府のイノベーションによる成果と見ても良いだろう。

人工知能大国への道

台湾は、前述のとおり半導体産業を軸足におきながら、IoT、AI産業への投資を加速している。グーグルやIBM、マイクロソフトらは既にAIの開発拠点を台湾に構えているが、その理由は、アジアの中でも優秀なエンジニアを低コストで採用可能であることが大きい。そして中国本土ではリスクとして挙げられる知的財産に関しても障壁がない。こうしたことから、世界中が台湾にAI開発拠点を置き始めている。実際の例を挙げてみる。

AIスペシャリスト育成へ

まずはGoogleだ。同社は2019年、台湾で5000人の学生に対して人工知能の教育を提供することを計画した。Alibabaは台湾の起業家に対して約360億円規模のファンドを設立し、ベンチャー企業の発展を支援するとした。Amazonは2018年、台北にウェアラブルデバイスなどを開発するイノベーションセンターを設置。IoTの開発拠点を立ち上げた。 Microsoftも2018年に台北にAI研究開発センターを設置し、今後5年間で少なくとも200人のAI系エンジニアを採用すると計画した。

中国テンセントが2017年末に発表したレポート「グローバル人工知能人材白書」では、世界のAI人材需要は数百万人に及ぶが、わずか30万人しか供給する人材はいないと指摘している。このうち、企業に所属するのは20万人で、なかでも高度な技術をもつトップクラスは世界で1000人しかいないようだ。

こうした課題を背景に、台湾政府は毎年1万人のAI人材をトレーニングする計画を立ち上げ、台湾から優秀なAI科学者を排出しようと積極的な支援に乗り出している。2020年末には、台北の北西部に位置する新竹県において、広さ12万6000平米のAIビジネスパーク「新竹県国際AI智慧園区」をオープンさせる計画もある。

またそれと同時に、現政権は「アジア・シリコンバレー計画」という壮大な計画も立ち上げている。その計画を率いるのが米マイクロソフトでAI研究開発責任者を務めた杜奕瑾(トゥ・イーチン)だ。台湾はアメリカシリコンバレーとのつながりをより深くして、イノベーションを加速させ、多くのAI企業をユニコーン化しようとしている。

こうした動きもあって、台湾は「世界デジタル競争力ランキング2019」で世界13位(日本は23位)にランクイン。初等教育レベルから人工知能に関わる学習を導入するという話も持ち上がってあり、今後も競争力をつけて世界のAI大国を目指していくに違いない。

著名な研究者の輩出

この流れは決して急に湧いた話ではない。半導体産業を支えてきた過程において、オープンイノベーションの意識がすでに台湾国民のなかには芽生えていた。急にシフトチェンジをしたわけではなく、そこにはもちろん、著名な研究者を輩出してきた実績の経緯が隠されている。

例えば、囲碁のプロ棋士を破って当時話題を集めた人工知能AlphaGo。この開発に携わった研究者の1人アジャ・フアン氏は台湾出身である。フアン氏は2004年からコンピューターを使った囲碁プログラムの開発を始め、2011年に国立台湾師範大学で情報工学の博士号を取得。その後2012年にDeepMind社に参画し、AlphaGoの開発に携わることになった。また、情報通信の国際組織IIoT Worldが発表している人工知能分野で最も影響力のある研究者ランキングで2位に位置しているトゥンクワン・リュウ氏も台湾の人工知能研究者だ。

台湾内部で沸沸と巻き起こっていた技術革新に対する熱意、イノベーティブな哲学が、政府の舵取りによって日の目を見ることになったのである。

AIと台湾スタートアップの関係

スタートアップへの投資

先に挙げたAIパーク「新竹県国際AI智慧園区」の設立の背景には、AI関連企業の誘致という側面もありながら、実はもうひとつ、台湾国内のスタートアップを活性化させるという側面も持っている。大手企業とスタートアップの連携を深め、一大AI経済圏を作るという目論見だ。つまり台湾がAI大国を目指すのであれば、スタートアップへの投資も欠かせない重要なファクターであるのだ。

台湾政府は2018年頃から、スタートアップ投資の環境改善策を表明し、相次いで積極投資を進めている。18年6月、Tech系スタートアップの支援拠点として台北アリーナ内に「TAIPEI TECH ARENA(TTA)」を設置。同年9月には、台北郊外の新北市林口に「林口新創園」を開設し、国内外からの優秀な起業家の訴求を図っている。また、世界の起業家、投資家を集めた国際会議「GECプラス台北」を実施するなど、スタートアップの育成に対して非常に精力的である。さらには「台湾創新創業中心(TIEC、後述)」という組織をシリコンバレーに設置し、台湾のスタートアップを国際的に通用する企業へと成長させようとしている。

起業家にとって最良の環境

実際、グローバル起業家精神開発指数(GEI)において、台湾は59.5%で世界18位、アジアパシフィックで3位という好成績を収めている(日本はGEI世界28位、アジアパシフィック6位)。また、世界銀行が毎年、事業設立の容易性、資金調達環境、納税環境など10項目のから世界190の国と経済体のビジネス環境を100ポイント満点で評価し、発表しているビジネス環境ランキングにおいては、台湾は総合得点80.90点で昨年より順位を2位アップさせ、世界13位であった(なお日本は世界39位)。

ここまで台湾スタートアップが成長できたのも、その投資環境の良さが挙げられる。投資家はこの地域に潜在的な力を感じていた。地政学的なメリット、アジア新興市場、日本、西側経済とのパートナーシップを確立し、半導体を中心としたIT・ICT産業の基礎を築いてきた。こうした環境もあって、台湾市民は最新のテクノロジーに対して敏感で、テストしやすい環境として恵まれているのだ。

Export.govによると、台湾市民の85%以上がインターネットに接続し、70%以上がスマートフォンデバイスを使用してインターネットにアクセスしており、世界で最も接続された消費者基盤を持つ国の1つとなっている。さらに、人口のかなりの部分が携帯端末を利用して商品を購入している。現在、台湾におけるオンライントランザクションの48%がモバイルベースであり、2022年までに61%に達すると予想されている。台湾の人口は2,350万人と、比較的小さい規模ではあるが、消費者マインドはスタートアップによるイノベーションと実験の精神とマッチしている。中国との文化的類似点もありながら、IPは保護され、参入するには優れた環境なのだ。ハードウェアとマニュファクチャリングで培ってきた強みと最新のテクノロジーの進化を組み合わせることで、台湾は、より多くの人材を惹きつけ、投資の機会を増やし、イノベーションをベースとする経済を維持し続けていくだろう。

台湾の資金調達環境

台湾でスタートアップの育成が本格的に始まったのは 2015年頃だ。2015年5月「台灣矽谷科技基金投資計畫」(Taiwan Silicon Valley Science and Technology Fund investment Plan)を策定。その後、刻々と準備が進められ、2018 年2月からは 「優化新創事業投資環境行動方案」(スタートアッ プビジネス投資環境最適化に向けた行動方案)が動き出した。また、この時期は中国のスタートアップ・ベンチャー支援が始まった時期とほぼ一致する。中国では 2015 年に「中国・中小企業青書 2016」で経済発展の新たな推進力としてスタートアップ・ベンチャー支援が明文化されている。

近年の台湾の起業家環境は活況を呈しており、多くの新しいベンチャー企業は、多くのシードラウンド、エンジェルラウンド、さらにはプレAラウンドの募金を獲得する機会を得ている。「Digital Times」2019起業家調査と今年の主要な起業家募金イベントのまとめによると、2019年10月末の時点で、台湾の新興企業の募金総額は20億台湾ドルを超えた。ただし、今年の資金調達のケースを見ると、Aラウンド以前のケースがほとんどで、Bラウンドはまれである。2019年の起業家精神に関する「デジタルタイムズ」調査の結果によると、Bラウンド以降の調達はわずか1.3%だった。この辺りは全体的な課題であろう。イノベーション起点のスタートアップは、1を100にスケールさせる部分で死の壁を経験する。そこを超える企業をどれだけ生み出せるか。そこが進化が問われる部分だ。

台湾で最も大きいアクセラレータ―、VCとして認知されているのはApp worksである。328のスタートアップ、925の投資家のハブとなり、スタートアップのステージに合わせた支援を行っている。こうしたVCは台湾で多く出てきており、大手企業が設立したVCなども多い。しかし、いかにユニコーンを生み出せるか、T2D3を見据えてさらに拡張させられるかが、今後の課題であろう。

台湾スタートアップの特徴

誤解を恐れずに言うと、スタートアップに限らず台湾が得意としているのは「最先端」ではない。 実用先端的な技術を駆使してリーズナブルなコストでユーザーフレンドリーなサービスやソリューションを展開することが台湾の特徴である。前述の通り、台湾市民は最新のソリューションに敏感である。実験しやすい環境というのは、時に革新的なサービスよりも、実用的なものを好むことがある。これをアンバンドル(Anbundle)、リバンドル(Rebundle)という言葉で捉えると、台湾スタートアップの特徴が見え隠れしている。

アンバンドルとは高付加価値を見直し、不要な機能を削ぎ落し、必要十分な機能の製品をリーズ ナブルな価格帯で提供するということだ。本当に必要とされている機能を重視した製品開発をすることだ。グローバルな市場では高付加価値よりも価格重視のユーザーも少なくない。 一方、リバンドルとは既存技術の再構成化であ る。異なる目的で開発されたふたつの技術の組み合わせというケースもある。

こうした特徴を持っているため、極端にいえば「地味」なケースが多い。そこが台湾テックでユニコーンが生まれていない原因かもしれない。実際、ユニコーン企業はいくらか派手なプロモーションによって飾られているという批判も少なくはない。もちろん実力でのし上がった企業もあるが、地味なサービスは当然投資家からすると、時価総額も現実的に見ることがあるだろう。

メリットとデメリットの両方の側面があるのでなんともいえないが、ともあれ、こうした境遇も踏まえながら多くの投資が生まれることを期待したい。

台湾リテール市場

最後に、台湾でいま注目されているリテール業界について触れておこう。なぜ注目されているかというと、AIの分野においてEコマースの輸出を国が主導しているからである。また、コロナによってECの売上は好調であり、今後デジタルトランスフォーメーションはグローバル単位で不可欠になる。ここは勝機と捉えて活動していることは間違いではない。

経済部は第5回の産業経済統計で、2019年前半における台湾のeショッピング業界の売上高は、前年同期比で過去最高の970億台湾ドルであることを発表(約3500億円)。2019年通期の売上高は2,000億を超えると予想されている(約7200億円)。ちなみに2018年のeショッピング業界の売り上げは1,894億元に達し、年間12.4%増加し、過去最高だった。過去8年間の平均年間成長率は8.1%であり、継続的な成長を遂げている。2020年はコロナによって縮小するだろうが、それでも堅調に推移するという予測をするのに難しくはない。このデジタルマーケティングの成長によって、台湾の消費習慣も変化をしたのだ。

実際、モバイル決済なども増えてきている。金融監督管理委員会の統計では、今年5月末時点の「電子支付」使用者は865万人。前年同月比では339万人、64.45%増えた。「電子支付」でトップは「街口支付(JKOPAY)」で、ユーザー数は251万5,000人。2位は「一卡通(Line Pay Money)」で236万8,000人。3位は玉山銀行で117万5,000人。上位2位だけで「電子支付」のユーザー全体の約56.5%を占める。

日本と同様、こうしたデジタル産業の成長によってより国民はデジタルネイティブなマインドになっていくだろう。

まとめ

台湾ほど特異で興味深い国は少ない。有利な地理的環境を利用して貿易を発展しつつ、旧来の製造・半導体産業の成長を糧にして、アジアのシリコンバレーを目指そうとしている。アジアの独特の雰囲気を身に纏い、そして親日国としてのフレンドリーさと、中国との関係からもたらされる強いアイディンティを抱えながらも、欧米と同様のイノベーションマインドを持ち合わせる。

あらゆる複雑すぎる問題を持つことで、逆にそれが逆境を跳ね返す力となり、起業家を多く生み出し、AI科学者を多く輩出し、あのオードリー・タンのような天才をも生み出した。このバネは確実に強く、空高く伸びるだろう。日本も当然見習わないといけない部分がたくさんある。だが決して真似をするのではなく、日本特有の文化・地政学的特性・環境を踏まえたうえで、バネの原動力を探さなければならない。

参考文献一覧



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