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映画感想文「コットンテール」飄々としたリリー・フランキーはじめ芸達者の3人に泣かされる秀作

時にユーモアも混じる、淡々とした語り口。

それがかえって、泣けた。

うだつの上がらない自称作家の教師、兼三郎(リリー・フランキー)。最愛の妻明子(木村多江)の遺言により、英国のウインダミア湖に向かう。

思い出の地に遺灰を撒いて欲しいという彼女の最後の願いを叶えるためだった。

いつも自分の殻に閉じこもりがちな不器用な父。そんな父に寄り添いたいと願いながらうまくコミュニケーションを取れない、同じく不器用な息子トシ(錦戸亮)。

母の存在でなんとか繋がっていた2人。要を失いバラバラになりそうな様相。いったいこれからどうなっていくのか。

リリー・フランキー、錦戸亮、木村多江。この親子3人が過去の回想と現在の旅の両方のシーンで繰り返し登場。

いずれも芸達者な3人。素晴らしい演技に何度も嗚咽しそうになる。

独特の国宝ものの飄々とした演技を見せるリリー・フランキーはもちろんのこと、錦戸亮も良くてびっくり。この人、ちょっと不器用なうまく周囲と折り合いつけられない役がよく似合う。

そして木村多江。日本女性の健気さいじらしさを演じさせたら天下一品。セリフ少なめ、横顔や背中の儚げさで物語を語る。

よくありがちな普通の家族の諍いやすれ違い、温かな思いやり溢れるやりとり。そんな日常の切り取りが秀逸。誰もが自分の記憶の中に同様の場面を見出すに違いない。

そして舞台となる英国北部の湖水地方の景色の美しさ。

過剰に泣かせようとしない静かな演出は、PERFECT DAYSとも類似。日英の合作映画。

96分という尺もちょうど良し。

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