映画感想文「アイスクリームフィーバー」スタイリッシュな映像の裏に潜む女子たちの切なさ
意外な拾い物で嬉しい。
どこを切り取っても絵になる、お洒落でポップな映像。雑誌に出てくるようなファッションに身を包んだ、美しい登場人物たち。流れるは、気の利いた渋谷系楽曲。
冒頭の出だしからしてあまりのオシャレさに「あれ?もしかして、間違えた?」と身構える。
しかし、物語が進むにつれ、気付く。
その裏に見え隠れする、なに不自由なく見える女子たちのひとり抱える敗北感。自尊心が持てなくて一歩が踏み出せない、もどかしさ。
わかりみがすぎて、切ない‥。
美大を卒業しデザイン会社に就職。夢溢れていたはずかいつの間にか挫折。今はアイスクリーム屋のアルバイトの菜摘(吉岡里帆)。
そのアイスクリーム屋に不意に訪れ、ミステリアスな存在感で菜摘を魅了。デビュー作が大ヒットするも2作目が書けず、毎日当て所なく街を彷徨う作家の佐保(モトーラ世理奈)。
恋に敗れた過去をひきずり、銭湯とアイスに癒され仕事に邁進する、アイスクリーム屋の常連客、優(松本まりか)。
田舎から突然上京。叔母である優の家に転がり込み失った家族を探す女子高生、美和(南琴奈)。
誰もが足りなさを抱えて生きてる様が丁寧に綴られていく前半。
そして後半。
彼女たちは、悩み苦しみながらも自分なりのやり方でそれぞれの一歩を踏み出してく。
予告にも出てくる松本まりかの名セリフ、
「幸せか、幸せじゃないか、じゃないの!私か、私じゃないか、なの!」
が、胸にどーんと、ぶっ刺さる。
本当に、それだわ。
後味良好。元気をもらえる映画。最後に、登場人物たちが線で繋がる伏線回収が見事で、一見の価値あり。
4人とも素晴らしかったが、特に松本まりかの好演が際立ち、強く印象に残る。いい女優さんだ。
アートディレクターとして活躍する千原徹也氏の初監督作品。原作は芥川賞作家川上未映子氏の短編小説。
ちょっとお疲れ様気味で元気ない時に、超絶オススメ。
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