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私の心地いい場所はどこだろう。海外で育ち、旅をして、子供を連れて。

チリに訪れるのはこれで何度目だろう。
5ヶ月前に生まれた娘と、甘えん坊な2歳の息子を連れて旦那と家族4人でチリのサンチャゴに向かっていた。私が18年間育ったチリ。今も両親が住んでいて、育休を機に里帰りをするためだ。

みんなから知った考え方

1歳の頃からスペイン語を聞きながら育ち、小学生になると日本人学校へ通った。親の仕事でチリへ転勤になって来る友達は、ほとんどが3年で日本に帰っていく。その中でまだまだチリに残る予定だった我が家は、中学生になるタイミングでインターナショナルスクールへ転校することが決まっていた。

約80人いるクラスには、アジア、ヨーロッパ、南米、アフリカと色んな国から生徒が来ていた。そんな多国籍の同級生たちと過ごす中で、いろんな考え方、感じ方があることを知った。

モーガンとパブロが付き合ってると噂を聞き、お昼休みに2人の姿を見たら昨日まで友達だった2人が嬉しそうに何度もキスをしていた。中学生で、付き合ってすぐキスしちゃうんだ!チリにいながらも、日本人の両親の元、日本人学校に通っていた私にとっては衝撃だった。

チリでは挨拶の時に頬にキスをする。家族でハグをすることも多いし、愛情表現が豊かな国だ。好きという気持ちを目一杯伝える。そう思ええば、2人のキスは自然なものなのかもしれない。

日常的に、Te Amo(大好きだよ)と家族や恋人に伝えたり、普段の会話で子供や大人関係なく愛おしい相手に対してMi Amor(私の大好きな人)と呼ぶことがある。「Mi Amor, Tienes hambre?(私の大好きなあなたはおなかすいてる?)」なんて会話をよく耳にする。

日本語に訳すとなんだか笑えてしまうけど、チリでは当たり前のようにみんな使っている表現なので、スペイン語で言うと違和感はまったくない。むしろ日々好きだとと伝えられるのはすごく素敵なことだ。

ある放課後、女の子たちでクリスマスプレゼントは何をもらうの?とおしゃべりをしていた。私はローラーブレードを買ってもらうの!私は新しい洋服を買ってもらうよ!と言っている中、ノエルが「私はパパが2人いるから、プレゼントを2つももらえるの!」と得意げに話し、「わー!いいなー!」とみんなも羨ましそうにしていた。

両親が離婚していることを普通に話し、周りもそれに対して驚いた様子もなかった。「あれ、離婚してることをそんな簡単に話すのか…!」と心の中で思いながら、みんなと同じように驚いた顔をせず内心ドキドキして聞いていた。

離婚していることや、子供がいるけど結婚していないことをオープンにする人は多い。お父さんが2人いてラッキーでしょ!なんていうスタンスで話してるノエルを見て、なんてポシティブな考え方なんだろうと尊敬した。

日本に住んでみよう

今まで私の中で考えもしなかったことをたくさん知り、日本やチリ以外の国にも興味を持った。でも、高校卒業後は日本へ行くことを決めた。日本人だけど日本に住んだことはなかった。夏休みに遊びに行ったことはあるが、住んでみないと分からないことがたくさんあるという事はよく知っていたので、日本の大学を受験した。

実際に日本に住んでみて分かったことがたくさんあった。電車は1分単位で時間通りに到着すること。レジの店員さんはいつも丁寧で、姿勢を正していつお客さんが来てもいい準備をしていること。カフェで泣いてる子がいても、みんな怒らず泣き止むのを待っていること。

それと同時に気づいたこともある。チリでは、ちょっと電車が遅れても怒る人はいなかった。レジの店員さんは、お客さんがいないと店員同士でおしゃべりをして楽しそうだった。カフェで泣いてる子がいると、お母さんと子供に優しく話しかけてくれる人がいること。

どっちを見ても良く見えたり、考え方によっては悪く見えたりもする。この両面を知ってることが大事で、自分で好きな方を選択できるといいなと思った。片面しか知らないと、もしかすると悪い面しか見えていないかもしれない。そう考えるともったいない。世界を知ることで、生き方の幅が変わるんではないだろうか。

心地いいってなんだろう

大学生になり、長期休みには海外へ行った。

同じアジアでも、カンボジアは田舎のような風景を目にすることが多く穏やかだが、シンガポールは高いビルが並び活発な人が多くいる印象だった。ミクロネシアに訪れた時は、コンビニも自動販売機も見かけないが、手つかずの自然が広がり美しい海がどこまでも続いていた。昼間からおじさんたちがお酒を飲んでおしゃべりをして楽しそうだった。ゴールドコーストでは、朝サーフィンをして海で時間を過ごしたあとに仕事へ行く人たちがいた。

ケアンズで出会った43歳になるおじさんは一人自由気ままに旅をして、毎日楽しくて仕方がないと言っていた。バルセロナで出会った19歳の女の子は高校卒業後、ギャップイヤーをとってヨーロッパを周遊していた。

世界には、想像もしなかった環境があり、国によって流れる空気感が違った。こんな人っているんだ!こんな生き方もありなの?と思わせてくれる生き方をしてる人たちもいた。

自分にとって心地よく感じるのはどこだろう。どんな生き方なんだろう。小さい頃から海外で育った私は、自然とそんなことを考えてきたのかもしれない。もちろん、旅をして新しい景色や人と出会う刺激や、嬉しさもたくさんある。

小さいうちから旅をさせたい

子供が生まれた今、小さいうちから海外に連れて行っている。
小さいうちから旅をさせても忘れてしまうというけど、行ったことによって写真も残るし、これから先の会話に海外へ行った話は出てくる。小さい頃の記憶は、自分で本当に覚えてることよりも、写真で見たり親が話してくれることによって、ずっと記憶に残ってるのではないかと思う。一度経験してることで、海外へのハードルは下がり、もう一度行ってみたいと将来興味を持ってくれるかもしれない。

大きくなった時に、好きな道を生きていけるようにしてあげたい。世界中には色んな考え方をしている人、生き方をしている人がいることを知っていると、そこから自ら選択ができる。万が一今いる場所が生きづらいと思えてしまった場合、じゃあ違う選択をとればいいんだと思ってもらえるように。それが日本国内であるかもしれないし、海外かもしれない。

チリへ里帰りをして、家族といるからか、日々追われることのない開放感からか、チリの空気に包まれたラテンな流れの中で過ごしているからかはわからないけど、日本にいた時より肩の荷が降りて、なんでもない日を家族と過ごし、季節のフルーツを楽しみ、焦りのないこの生活に心が落ち着いていた。

私の原点であるこの場所は、どんな生き方をしたいかいつも考えさせてくれる。


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