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【小説】恋の幻想

結婚とは何だろう?

裕子と結婚する気持ちに成っていた時からの疑問だ、その疑問は解けることが無い氷河の如く自分の頭に聳え立っている。

考えると、今の時代結婚の形式を取らなくても良いのかも知れない、形式や法律に縛られずに生きるのも一つの選択肢の筈なのだ。

いや、それでも忍の状況を考えると結婚した方が良い、彼女が実家に連れ去られる心配がある限り、他の場所は必要だ。

それは自分では無くても良い、年を考えると彼女の年に近い人間の方が良い、理性で考えるといく方向に、感情が向かっていかなかった。

昔、結婚するのは何故だってテレビで討論になった時、何かあった時に妻(夫)に最初に連絡が行くのを挙げていた人が居た。

忍に何かあったら親に連絡が行くのを考えると、それは困ると言う言葉では表しきれない。

自分に何かあった時も、親がもう居ないから、連絡先って友達や親戚になる、其処は忍であって欲しいと思うのが結婚という話なのだな。

急に夫と妻と言う名前の人間が出来るんじゃなくて、出来上がった人間2人が意志を持って連れ添っていくのが良いんだろうな。

求婚してあと少しで同居になるのが、待ちきれないような、怖いような感覚がある。

彼女の方は若い分もっと心配なのじゃ無いだろうか、年上の人に相談しているんだろうが。

裕子に相談するかもしれないな、ふとそう思った、彼女はここに連れてきた時から初めて目を開けた雛の様に、裕子にくっついて回っていた。

自分よりも裕子が好きなんじゃないかと心配になった時期もあった、まあ裕子が他の男と付き合いだして、ここに来なくなると、余り裕子の事は言わなくなったが。

ふうと声に出して溜息をつく、ここに来るのは新しい職場に馴染めなくて、相談したいからだと思っていた。

こちらが意識しているほど、彼女は男女を意識してないだろう、親みたいなもんだしな。

そう思っていた自分が彼女の方から告白されると舞い上がってしまう、こっちは結婚まで云っていた彼女とあと少しの所で駄目になったからな。

「あの、一緒に暮らして貰えませんか?」改まって忍が言った。

「えっ、俺と?」思わず声が漏れる。

「他に誰かいますか?」忍が不服そうに頬を膨らます。

「勇気を出して言って見たのに、本当と思われないなんて。」折角の勇気を悪い言い方をしたみたいだ。

「俺は嬉しいよ、でもおじさんだぜ。」自嘲気味に言ってから、忍の顔を伺ってみる。

「ずっとプロポーズ待ってたのに、自分で言わなきゃいけないなんて。」忍が茶化してくる。


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