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【小説】SNSの悪夢

数日見ていると、マンションを退去するのか、引越しの様相で荷物を運んでいる。

マンションの部屋の近くでは、引っ越しらしいガサガサとした大声が聞こえてくる。

『あいつはここで暮らす気概も無いのか。』あれほどSNSで吠えてたのに、自分の身に降りかかると、逃げ出すんだな、立花は冷笑していた。

あの女がペコペコ頭を下げて、家から荷物を運び出しながら、近所の人間と話している。

こう見ると普通に見えるのに、何故SNSではああなってしまうんだろう??不思議にそう考えていた。

あの女が何処へ行こうともう関係ない、ここには住めない状態になったのだ、自分も大変だったんだから、お互い様だな。

これで、気が晴れた訳で無いのが不思議だ、本当なら気が晴れる筈だろう。

そうか、もう1人問題の或る奴がいたな、そいつが気になるから、気が晴れないんだ。

そいつも如何してやろう、気持ちが次に向かうと、自分の気が晴れない意味を考えなくなる。

本当は自分がやり返して、それで気分良くなる訳で無いのを知っている、SNSでは何も解決しないのが分かっているのだ。

だが、それは見たくない、知りたくない事実だ、人生はもっと簡単で良かった。

自分が批判してきた人間と同じ位置にまで落ちたことは、考えたくもないことなのだ。

さて次はもう1人の奴を探そう。

気を取り直して探す気になった、何もないマンションが自分に迫ってきて、早くそれを終えてしまえと言っているみたいだ。

この人間を最後にしたのは訳がある、なかなか見つけられないのだ、自分はSEとして仕事をしてきて、出来なくはないと思っていたが、如何にも見つけにくい。

考え込んで探している間に、家は暗くなってくる、カーテンも何もない部屋に明かりをつけると、窓には寂れた中年が立っている。

『こんな筈は無い、俺は自分を律して生きてきた、何が有ってもこんなしょぼくれた人間には成ってないんだ。』

立花は嫌な現実が迫ってきた時に、人間がするであろう行動をした。

窓の近くの電気を消して外に出たのだ、いつの間にかいい匂いが漂ってくる。

『もう食事の時間か、そう言えば腹が減ったかも知れない。』余り動いて居ない体は、左程は食事を求めていない。

それでも、現実から逃れるために、食事を調達しようと歩き出す、今日は何を食べようかな。

家で弁当を食べるのも良いが、偶には外食も良いな、家にばかりいるから気がめいるのだ。

外食はいい考えだ、家であの寂れた姿を見なくて良いんだから。


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