【小説】不器用な私はいつも嘘を見抜くー2日目

「あのね、人間にはそれぞれ神様からギフトを授かってるのよ葵、あなたにもねちゃんとあるのよ。」母が居なくなっても、私は憶えて居る。

それが母との最後の絆だと思うと、忘れてはいけないんだと思って、何が有っても心から離れない。

人間の心って何処にあって如何なっているんだろう、心が頭脳の一部なら、都合の悪い記憶を消してしまえばいいのに。

自分の礎になっているのはその言葉だから、無くなったら全てないことになってしまうけどと笑ってしまう。

部屋で2人で本を読んでいると祖母が入ってくる。

「警察の人と話をしたんだけどね、子供を探しているお母さんが居るみたいだから、警察で話をしようか。」優しい声で話しかけている。

何時もの祖母と違って優しいんだ、五月蝿いおばあちゃんは何処行ったんだ。

「嫌だ、行きたくない、ここに居る。」この子は必死に言っている、何かされちゃうって声が身体から聞こえる。

「でもね、お母さんは心配してるらしいよ。」祖母が諭すように言葉を出すと、この子はヤッパリ帰らなきゃいけないんだってガックリしている。

「おばあちゃん、私も行く、この子なんかお母さんにされそうな気がしているみたい、私が止めてみるから。」

「葵が行ってもね、話がこじれるだけかも知れないしね。」祖母が困ってるのが解る。

「葵ちゃんと一緒じゃ無きゃ行かない。」この子がそう言ったから、おばあちゃんが折れた。

「仕方ないね、一緒に行こう。」

「名前を教えて。」私の中のこの子に名前を付けないと、一緒に居るんなら不便だ。

「茜って言うの、茜色の茜なんだ、お父さんが付けてくれたんだって。」嬉しそうだ。

「茜ちゃん、お父さんは一緒に居ないの?」お父さんが好きそうだから聞いてみる。

「お父さんとお母さんが離婚して、今はお母さんと暮らしているの。」悲しそうな声だ。

「きっとおばあちゃんが一緒に住むようにしてくれるよ。」本気でそう思って居るから言ってみる。

「そうだと思う?」不安気に茜が聞いてくる。

「お父さんとは住みたくないの?」それも大事だからな。

「お父さんは遠くに居るの。」一緒には居られないんだ。

それだけ分かったら、警察に行って一緒に住めるように話すだけ、妹が出来たみたいで楽しくなっていた。


警察に着くと、祖母がいつもの警察官と話している、私達は2人でキョロキョロしている。

警察なんて初めてでどうしていいのか解らない、したことが悪かったら捕まる位しか考えてなかった。

「こっちに来てください、その内みえると思うので。」警察官が会議室に促している。

そうか、茜の親は直ぐには来ないんだ、祖母もそう思って居るみたいで、嫌な顔をしている。

「お母さんは来て居ないんですか、心配していたって言ってましたよね。」厳しい声が響いて、2人でビクッとした。

お母さんが居なくなった時を思い出していた、あの時も祖母は怒っていた、私が分る位には。


部屋で待って居ると、トントンとドアを叩く音がする、茜のお母さんかなと思う間もなくドアが開く。

「あんた、何していたの、こっちは探したじゃ無いの。」いきなり大声が響いている。

茜は私の背中に隠れた、祖母はさっきより怒っているみたいに見えている、怖いなって感じていた。

「お母さんですか?いきなり入ってきてそれは無いでしょ。」祖母の声が大きくなる。

「何あんた、勝手に人の子を連れて行って文句を言う訳、こっちが訴える立場なんだからね。」何を言っても聞きそうにない。

茜を後ろに従えて、このお母さんの背中に回って触ってみる、祖母が声を出しそうになっていた。

「おばさん、茜が居ないと養育費が貰えないから一緒に居るの?」聞こえた声を話してみる。

「何言ってるの、子供が可愛いからに決まってるでしょ、茜行くわよ。」赤い顔で手を引こうとする。

「嫌だ、家に置いておかれるだけだし、食べ物も無いし、帰りたくない。」泣いている。

「あんたね、何人聞きの悪い事言ってるの帰るよ。」赤い顔がもっと赤くなって、鬼みたいだ。

「それ以上したら児相に言うよ、この子の体の傷はあんたがやったのかい。」祖母が聞く。

ギクッとした赤い顔が震えている。

「子供がわるい事したら、叱るのが当たり前じゃない、何言ってんのおばあさん、自分の子育てして無いの?」言い返している。

「違うよ、あなたが茜が居たら養育費取れると思ってるから、おばあちゃsんが言ってるんだよ、丁度警察だし茜の体お医者さんに見て貰えばいいんじゃない。」これぐらい言っても感じないかも知れない。

「嫌な子だね、この子は私の子なんだよ、何しても私の自由でしょ。」鬼が言う。

「それ聞いたら、返すわけにはいかないですよ、関係機関相談することにします。」警察官が言った。

「もう良いよ、勝手にしな。」茜に言うと、部屋から出て行った、茜を見ると安心した顔をしている。

「お父さんは如何しているか解る?」警察官が聞いている、茜は緊張して言葉が出ない。

「お父さんは遠い所みたい。」代わりに言った。


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