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ガンダムファンに解説したいドリカム新曲『G』のヤバさ

ガンダムファンの皆さま、はじめまして。そうでない人は「いったいおおやはどうしたんだ」とお考えかもしれませんが、ドリカム1年3カ月ぶりの新曲『G』を聴いて、居ても立ってもいられず他の原稿を置いて筆を執っております(すみませんすみません)。

皆さん、聴きましたか。聴いてない人は何を差し置いてでも聴いてください。はい、DREAMS COME TRUE『あなたとトゥラッタッタ♪/THE WAY I DREAM』(2018年)以来の新曲で、劇場版『Gのレコンギスタ』のテーマソング『G』です。

私、何を隠そうガンダムを一作も観ていない、完全にサブカル未履修生なのですが、シンクロ率1000%のこのコラボムービーを観て、心の底から「富野総監督って、神なんだな」と思いました。本当に素晴らしい映像をありがとうございます。(MVは他の方が編集してるのだろうけど……)

で、その代わりと言ってはなんですが、今回の新曲『G』がドリカム楽曲の中でどういう位置付けなのか、的なことをザックリ解説してみたいと思います。(※参加ミュージシャンのクレジットはまだ発表されてないので、聴いた印象だけで話します。間違っていたらごめんなさい)

シングルとしては約5年振りの中村正人作曲

DREAMS COME TRUEではボーカルの吉田美和(以下、美和ちゃん)、ベースの中村正人(以下、マサさん)、いずれも作曲を行なうのですが、ここ20年くらい、ふたりが共作の「作曲:吉田美和・中村正人(あるいは、中村正人・吉田美和)」表記が非常に増えています。

キャリア初期はリーダーであるマサさんが中心となって楽曲制作を手がけ、美和ちゃんはシンガーソングライターであるものの、楽器を弾けなかったため、「口コピ」でテープにメロディを吹き込んだものをマサさんが打ち込み音源化し、レコーディングに臨んでいたといいます。そしてマサさんは自作曲に「美和ちゃんの歌詞が降りてくるのを待つ」形で、双方の楽曲が共存していました。

けれどもキャリアを重ねるにつれ、美和ちゃん自身が楽曲アレンジに関与することも増え、近年は共作楽曲の割合が高くなってきました。それに従って、たとえば『決戦は金曜日』に代表されるような「洋楽をオマージュしたソウル・ファンクチューン(主に中村正人作曲)」は、シングルではあまり聴かれなくなったのです。

それが今回の『G』では、2015年のデジタル配信シングル『愛しのライリー』(『インサイド・ヘッド』主題歌)以来となる中村正人作曲。一聴して、「あれ、なんかドリカムの懐かしい曲っぽいな」と感じた人も多いはず。

今回、どういった経緯でこういうサウンドディレクションになったのかはインタビューなどが待たれますが、楽曲全編を通してどことなく感じられるのは、マサさんが私淑するミュージシャンの一人、バリー・ホワイトと彼率いるラブ・アンリミテッド・オーケストラのようなソウルフィーリングです。

ラブ・アンリミテッド・オーケストラ風味のソウルサウンド

ジーン・ページによる高揚感あるストリングスやデヴィッド・T・ウォーカーの歌うようなメロウなギター。そのきらびやかなサウンドディレクションは、『G』が志向しているものとも近いように感じました。(ちなみにジーン・ページは吉田美和ソロ作『beauty and harmony』(1995)に参加、デヴィッド・T・ウォーカーとは同作以降、『ア・イ・シ・テ・ルのサイン〜わたしたちの未来予想図〜』(2007)など何度も競演し、ライブでも客演しています)

ギターの音を一聴したとき「ん? これはデヴィッド・T……?」と思ったのですが、Twitterで外園一馬さんという方が演奏していると知って、とても驚きました。外園さんはこれまでドリカムでは起用されてないはずなので、今後のコラボレーションも楽しみです。

それとアウトロの流れるような、でも自由度高いピアノの旋律……おそらくこれは『ワンダと巨像』のサントラを手がけたことでも知られる大谷幸によるもの。彼はドリカムとは1993年以来、レコーディングでもライブでもたびたび競演していて、ドリカムサウンドの要と言っても過言ではありません。(で、いまちょっと調べてみたら『新機動戦記ガンダムW』の音楽を担当してたのが大谷さんですね! こんなところでガンダムとの接点が!)

吉田美和の真骨頂、具象と抽象のバランス

ドリカムファンの多くは「美和ちゃんの詞だからこそ」ファンになっている、というのは確実にあって、恋愛の楽しさや切なさ、具体的かつ同時代的な情景の表現に惹かれている人がほとんどでしょう。だからこそ、最初にGレコとのコラボレーションが発表されたとき、「え? ドリカム?」みたいな反応もガンダムファンには特にあったのだと思います。けれども多くの方が言及している通り、

モビルスーツは進化するのに 

歌い始めがこれですよ。ガンダムシリーズの楽曲である、とハッキリ明示しているわけです。でも、モビルスーツって解釈によっては、人間の機能を拡張するものでもあり、デジタルデバイスやインターネット、SNSに置き換えられなくもない。すごく普遍的な表現だと感じるんです。そして、

even Shakespeare musta tasted fear or shed a tear

このフレーズから続くサビの英語詞。"gear"もまた、ガンダム的な言葉ではあるのだけど、私たちが日常的に使うものであり、みんなそれぞれ自分の中に"my gear"を思い浮かべられるのではないか、と。ここでの韻の踏み方も、美和ちゃんがデビュー当初から、そしてUS市場挑戦以降より自覚的に追求してきた「英語でしか成し得ない表現」の、一つの到達点である気がしています。

『G』こそドリカムアレルギーの特効薬になるかもしれない

ほかにも、「あれ、これ『あの夏の花火』のシンセの音と同じじゃない?」とか「ここまでオートチューンを効果的に使った曲、ドリではいままでなかったんじゃないか??(『ケロケロ』とかはあったけど…あ、『THE WAY I DREAM』でも軽く使ってたか…?)」とか「美和ちゃんとマサさんがオクターブ違いでユニゾンするの最高だな」とか、いろいろと語りたいことはありますが、これこそいま最新型で薦めたい曲だし、”ドリカムアレルギー”な人でもスッと聴いてもらえるんじゃないかな……と思っています!!



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