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【枕草子】胸つぶるるもの

胸つぶるるもの。競馬見る。元結よる。
親などの心地あしとて、例ならぬけしきなる。
まして、世の中などさわがしと聞ゆるころは、よろづのことおぼえず。
また、ものいはぬちごの泣き入りて、乳も飲まず、乳母のいだくにもやまでひさしき。
例の所ならぬ所にて、ことにまだいちじるからぬ人の聲聞きつけたるはことわり、こと人などのそのうへなどいふにも、まづこそつぶるれ。
いみじうにくき人の来たるにも。またつぶる。
あやしくつぶれがちなるものは、胸にこそあれ。
よべ来はじめたる人の、今朝の文のおそきは、人のためにさへつぶる。

【解釈】

ドキドキして心臓に悪いもの。競馬を見る。切れやすい元結をよる時。
親などが具合が悪いと言って、ただならぬ様子の時。まして世の中に疫病などが流行っている時には、いてもたってもいられない。
また、まだ何も話せない赤子が泣いてばかりで乳も飲まず、乳母が抱いてあやしてもずっと泣き止まない時。
意外なところで、特にまだお付き合いしていることを周囲に知られていない恋人の声を聞きつけた時。他の人がその恋人の噂などをしているだけでも、たいそうドキドキする。
すごく嫌いな人が来た時にも心拍数が上がる。何かにつけドキドキして潰れがちなのが心臓というもの。
夜に通い始めたばかりの男から、今朝の手紙が来ないのは、他人事であっても心臓に悪い。

清少納言が、何かにつけドキドキしていてかわいいです。

感染症が流行っている時に、親の具合が悪いなんて言われたら心臓に悪い。
今まさに同じ思いをしている人も、多いのではないかしら。

枕草子の時代に流行病と言えば、天然痘とかだったのかな。
1,000年たっても、また新たな未知の感染症にこんなに悩まされているなんて、困ったものです。

一方で清少納言は美貌の人というイメージはあまりないけれど、「思いがけない場所で、内緒の恋人の声を聞くとドキドキする」なんて、実はモテる女子だったのでしょうか。

流行病のあるあるも話が合いそうだし、恋愛トークも聞きたいし、清少納言とおしゃべりしたら楽しそうです。かわいいスイーツとか用意して、お茶会してみたい。


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