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【論文レビュー】ベンチャー企業の成長について考える

こんにちは、ゆあさです。
4月からは修士課程2年次です。
立教大学院LDCでは、「リーダーシップ・ファイナル・プロジェクト」という在学生個々が組織に介入するプロジェクトを行うことで、修士論文を作成します。
このプロジェクトを開始すべく、ただいま準備真っ最中です。(遅い)

ちなみに、介入先の組織は在学生が個々で交渉しながら決めていきます。
入学時には自社でプロジェクトを行うことを想定していたのですが、悩みに悩んで(いや本当に2日前まで悩んでいた)、本業では経験ができない場を探したいと思い、社外クライアントにお願いすることに決めました。

今回のプロジェクトをお願いしたのは、ベンチャー企業様。
しかし、ベンチャー企業での勤務経験も、ベンチャー企業と一緒にお仕事をした経験もない私・・・
そもそものビジネスモデルなどを理解することから始める必要があると思いました。

そこで、今回はベンチャー企業を含めた中小企業の成長モデルについて、知見を深めていきたいと思います。

お付き合いいただけますと幸いです。


中小企業の成長モデル

今回、レビューしたのはこちらの論文

The Five Stages of Small-Business Growth
Neil C. Churchill and Virginia L. Lewis

ハーバード・ビジネス・レビュー(1983)

40年以上前に掲載された論文ですが、2024年現在でも被引用されおります!(被引用数は4400件Over)
ベンチャー企業の成長に関する論文を探していた中で、こちらのフレームが引用されているのをチラホラ目にしたため、漁ってみたのでした。

研究の背景

この論文では、これまでの研究されてきたフレームワークで、中小企業には適合できない点として、以下の三要素を挙げています。

  1. 既存のモデルでは、企業が成長し、すべての発展段階を通過しなければならないか、あるいはその試みが失敗に終わることを前提としている。

  2. 既存のモデルは、企業の起源と成長における重要な初期段階を捉えることができない。

  3. 既存のフレームワークは、企業規模を主として年間売上高で特徴づけ(従業員数に言及するものもあるが)、付加価値、拠点数、製品ラインの複雑さ、製品や生産技術の変化率といった他の要因を無視している。

これらの観点から、経験・文献検索・実証研究を組み合わせて、5つの成長ステージが定義されました。


中小企業における成長の5段階

N. C. Churchil, V. L. Lewis (1983)は、 “The Five Stages of Small Business Growth”の中で、中小規模の成長企業において、組織に重要な影響を及ぼす要因を5段階に示しました。

  • Stage Ⅰ:起業

  • Stage Ⅱ:サバイバル

  • Stage Ⅲ‐D:成功‐離脱

  • Stage Ⅲ‐G:成功‐成長

  • Stage Ⅳ:拡大

  • Stage Ⅴ:成熟

N. C. Churchil, V. L. Lewis (1983), 「The Five Stages of Small Business Growth」


Stage Ⅰ:起業

この段階では、顧客を獲得し、契約した製品やサービスを提供することがビジネス上の課題となります。
事業を継続できた企業は、StageⅡの企業となる。

Stage Ⅱ:サバイバル

この段階に到達することで、事業は実行可能な事業体であることを証明できたと言えます。十分な顧客を抱え、その顧客を維持できるだけの製品やサービスを提供しているため、次の課題は、単なる存在から収益と費用の関係へと移行します。

具体的には、収支を均衡させ、資本資産の摩耗に伴う修理や交換を賄うだけのキャッシュを生み出すことができるか、など。
(最低でも、事業を継続するのに十分なキャッシュ・フローを生み出すことができるか)
また、組織はまだ小規模と予想されるため、指示命令系統はオーナー起点となると考えられます。

Stage Ⅲ:成功

この段階では、会社の業績を活用して拡大するか、それとも会社を安定的に収益性を維持し、別のオーナー活動の基盤を提供するかという選択があります。
ここでの課題は、会社を成長のためのプラットフォームとして利用するのか(第III期Gの成長ー成長)、それともオーナーが会社から完全にまたは部分的に手を引く際の支援手段として利用するのか(第III期Dの成長ー離脱)ということです。

Stage Ⅳ:拡大

この段階で重要な課題は、いかにして急成長を遂げるか、いかにしてその成長のための資金を調達するかにあります。
最も重要な課題は、以下の分野となります。

  • 権限委譲:オーナーは、急成長し複雑さを増す企業の経営効率を高めるために、責任を他者に委譲することができるか

  • キャッシュフロー:成長がもたらす大きな需要(多くの場合、オーナー側には高い負債比率を容認する意志が求められる)と、オーナーの焦りによってもたらされる不適切な経費管理や不用意な投資によって侵食されないキャッシュフローを満たすのに十分な資金があるか

  • 組織:分権化され、少なくとも部分的には事業部化されていると考えられます。主要なマネジャーは、成長し複雑化するビジネス環境に対応することが求められます。(しかし、オーナーの影響は色濃く出る)

Stage Ⅴ:成熟

資源が成熟する時期であり、この段階に入る企業の最大の関心事は、第一に、急成長によってもたらされた財務上の利益を統合し、管理すること、第二に、対応の柔軟性や起業家精神を含む小規模の利点を保持すること。
企業は非効率を排除し、予算、戦略計画、目標管理、標準原価システムなどのツールを用いて企業を専門化するのに十分なスピードで管理職を拡大しなければならない状態です。
ステージVの企業には、詳細な事業計画や戦略計画を立てるための人員と資金があり、オーナーの直接的な影響力は分離できている状況になります。

経営者との関わりから見ると面白い!

山本(2011),「中小製造業の進化のための戦略モデル―山本貴金属地金㈱第二創業の事例―」,高知工科大学大学院

組織開発の視点から考察

事業拡大するStageⅢ〜Ⅴのタイミングでは業務を分散させていく必要があり、従業員も増えたり、業務の権限を委譲していくなど、人と組織の体制自体にも変化が必要になってくると思われます。

こういった事業の変化が大きいタイミングでは、マインドや慣習などソフト面はもちろん、組織としての体制や制度といったハード面も変える必要があり、多方面に組織開発で介入していくことができるのだろうと思いますが、介入企業がStageがどの段階にあるのかによって必要な支援も異なってくると思われます。

今回、介入させていただく企業様はStageⅣなのかな?!と思いつつ・・・
こういった理論化されたフレームを頭に入れながら、介入を楽しみにしたいと思います。

お付き合いいただき、ありがとうございました。

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