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エジプトの教育


【教育制度】

◆基本的に日本と同じで、小学校(6年間)中学校(3年間)高校(3年間)大学(4年間)で、義務教育期間は、小・中学校の9年間

◆原則として英語やフランス語のみで授業を行う「ランゲージ校」と呼ばれる私立校が多くある。

◆エジプトは金曜日と土曜日が休日なので、授業も日曜~木曜日の朝8時~午後2:40まで。


【教育課題】

1.文部科学省が定めた、生きる力「確かな学力」「豊かな人間性」「健康・体力」のうち、テストの成績(学力)を重視した教育

2.読み書き、計算についての基本的な能力が足りていない
→2019年TIMSS(Grade8のみ参加)の結果 数学39ヵ国中34位、理科39ヵ国中37位

3.教師による一方的な暗記重視、詰め込み型教育が一般的で、生徒は受け身の授業が中心となっている→新カリキュラムには人間性と思考力に関する事項は記載されているが、浸透していない

4.人口増加に伴い、学校の数が足りず1クラスあたりの人数が多い。また、学校によっては2部制を用いている。それでも長机、椅子に詰めて座って受けており学びにくい環境。
→省令で現在36人/1クラスを規定、2030年までに30人を目指しているが、実際は中学校の平均50人/クラス、小学校の平均55人/クラス(2021)

5.教員の給与が低いため、授業の質が低いことや、非公式な有料家庭教師が蔓延し裕福な家庭とそうでない家庭の間で学力差がうまれる。
→公立中学校の生徒64%、小学校56%が家庭教師を受けている


【日本式教育(EJS:Egypt-Japan School)のはじまり】

上記の教育課題に対して、エジプト政府が動き出した!

エジプトのシシ大統領が来日して、日本の小学校へ視察に訪れた際、学力だけではなく、生徒たちが協力して清掃や学級活動などを行い、規律ある風土や、主体性、協調性、社会性などが身につく日本式教育に感銘を受けたのだそう。

その視察がきっかけとなり、日本に協力を要請し2016年2月に安倍晋三首相と「エジプト・日本教育パートナーシップ(EJEP)」を締結した。

概要は、就学前教育から基礎教育、技術教育、高等教育に至るまで、エジプトの教育システム全体に対し、技術協力及び資金協力を通じて、日本の教育の特徴を生かした包括的な支援を行うこと

この「エジプト・日本教育パートナーシップ(EJEP)」のもと、エジプト日本学校(EJS)への「特別活動(特活)」の導入と、エジプト日本科学技術っ大学(E-JUST)の設立・強化という2大プロジェクトが進行中

そのうちエジプト日本学校(EJS)については、
2つの公立小学校に学級会などの活動を試験導入し、
2016年9月は更に10校で導入
2018年9~10月には※日本式の活動を取り入れ、かつ下記のようなガイドラインに沿って建てられた公立校として、35の新設EJSが開校された
→「教室の広さは64平方メートルとする」「移動が容易な学校家具(机や椅子)を備える」など

2024年3月現在、全51のEJS校があり将来的には100校を目指している。
※EJSは公立学校で私立学校よりは安いものの、中間層が通える学校となっている。



◆具体的な日本式の活動の内容

①学級会(行事など様々なテーマを元に児童の話し合いで決める)

②学級指導(手洗いや歯磨きなどの生活指導、挨拶や友達を思いやる心の大切さ、自ら行動する力を身につける)

③日直(プリントの配布や回収、照明のオンオフなど)

④遊びを通じた学び(遊びを通じて、仲間を思いやる気持ち、コミュニケーション力、想像力などを養う ※EJSでは幼稚園児のみ対象

⑤掃除(教室や校内は自分たちの手できれいにする)

⑥保護者参加活動(保護者が遠足や誕生日会などの行事を手伝う)

⑦朝学習(毎朝集中して自主学習をし、1日のはじまりへ心の準備、自習学習の習慣づけ、それに伴う基礎学力の向上を目指す)

⑧朝の会・帰りの会(生徒の出欠や健康状態を確認。1日の始まりと終わりを明らかにする)

⑨職員会議・校内研修(お互いの授業を参観し助言し合う授業研究型の研修などの導入)


またエジプト政府の人材育成事業として、EJS教員(校長、特活担当など)これまでに379人が福井大学へ研修に参加し2026年までに計680人、最終的には2,500人の派遣を目指している。



【JICA海外協力隊との連携】

上記、EJS(日本式教育)の普及・浸透のため現在エジプトには多くのEJS隊員が派遣され活動している。
それぞれの配属先(学校)での活動だけでなく、EJS分科会・体育分科会があり、EJS教員を集めて各地域で研修を実施している。そこで学んだことをそれぞれの学校に持ち帰り更なる教育の質向上に努めている。

協力隊としてではなく、エジプト政府が独自に雇用しているスーパーバイザー(元校長や教員経験のある日本人)が現在11名、各学校の校長のアドバイザーとして赴任している。中には、日本からのスーパーバイザーと隊員が連携して活動している学校もある。
今後は、JICAとしてもEJS校だけでなく、一般校にも特活を普及させていきたいとのこと。



【最後に】

自分は青少年活動隊員で、配属先は現地NGOなので、直接的に学校やEJSに関わる活動はしないものの同じ教育分野の隊員として、より理解を深めて何らかの形で連携できたらいいなと思います!

この内容は赴任前オリエンテーションで受けた研修を元にしています。
今後活動外で学校にも行ってみたいので、また情報が集まれば共有します!


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