【掌編】 クリスマスぼっち
「もしも私の願いが叶うなら、あなたに好きと言いたい」
そんな歌詞の歌をいつか聴いた。
言えばいいのに。
私はため息をつきながら雑踏の中を歩く。
恋なんてしなくなって、どのくらい経っただろうか。
指を折って数えることもやめてしまった。
一人でいることに慣れすぎた。
独りでいることに、慣れすぎた。
「もしも私の願いが叶うなら、あなたに好きと言われたい」
どちらかと言えば、普通こっちだろう。
叶わないことを望むから、願いが叶うなら、なんて言うのだ。
讃美歌の流れる街を、私は一人で歩いていた。
あなたはもういない。遠くに行ってしまった。
あなたの愛する人と、私の知らない遠いところに行ってしまった。
吐き出したため息が白い。
私の隣には、もう誰もいないけれど、
私の心の中には、まだあの頃のあなたがいる。
手を繋ぐ度にはにかんでいたあなたが、
抱きしめ合う度に照れていたあなたが、
よく笑っていたあなたが、
何年経っても私の心の中に居続けている。
冷たい雪が降りだしてきた。
私は傘を持っていなかった。
構わない。このまま濡れてしまえばいい。
あなたとの楽しかった思い出を、涙と雪で溶かしてしまえ。
(こういう人を拗らせ系ぼっちといいます。多分。
冴木も恐らくこの分類に入るでしょう。
歌詞に特定のモデルはいません。妄想です)
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