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0→1 iPhoneアプリ "ペンギン日記" の誕生から現在までの軌跡

ペンギン日記(カレンダーまるばつ法)というiPhoneアプリを2018年9月にリリースした。このアプリは私が初めて0から開発したアプリである。この記事では誕生から現在までのこのアプリの軌跡を紹介する。

誕生

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13年ほど前、私はサラリーマンをしていた。当時、スマホなどなかったのでFilofaxの手帳を持ち歩きしてスケジュール管理をしていた。月間カレンダーの空白部分に予定を書く日々。しかし、ある日、月間カレンダーの日付部分になんとなく日記的にまるばつをつけるようになる。きっかけはおぼえていない。あとで知ったのだがジェリー・サインフェルドのDon't Break the Chainに似ている。Don't Break the Chainは身につけたい習慣を助けるツール。共通点はカレンダーで俯瞰すること。

半年くらいやって過去のまるばつと現在のまるばつでは基準が違うのではということに気付く。これは私の価値観の変化の表れだと思った。そして、このまるばつを続けるということは自分自身を知ることにつながるのではないかという仮説をたてた。

研究

私は社会人向け大学院の博士課程に入学していた。まるばつのことは忘れていた。カリキュラム目的で入学したが、当然研究をしなくてはならなくなった。何を研究してもいいということだったので、研究案についていろいろ自由に考えていたらまるばつ法のことを思い出す。当時の指導教官に提案したら面白いと言ってくれた。「これは幸福の研究だ」と。その先生が幸福の研究がしたかったというのもあり幸福の研究をすることになる。指導教官が認めてくれなかったらまるばつ法の活動を続けていなかったかもしれない。

指導教官であった前野隆司教授のインタビューでもまるばつ法の話をしてくれている。その頃はカレンダー○×法と呼んでいた。先生には気づきがあったらしい。ありがたい。

以下は上記の前野先生のインタビューの抜粋。

そしてあるとき一つの転機がやってきました。それが「カレンダー○×法」というものです。一日が終わって良い日だったなと思ったらカレンダーに「○」をつけて、ダメな日だったなと思ったら「×」をつけるという簡単なものなんですけど、それを研究したいという学生が現れました。最初私は「そんなの役に立つのかよ」って言っていたのですが、それが…。私は研究者だから新しいことを発見したり、思いついたりした日が良い日だとずっと思っていたんですよ。自分の心なんて、分かっているよと。ところがやってみるとカレンダーに○がつく日は、新しい人と出会って、幸せについての会話とかしたときなんですよね。人との会話なんて俺は別に好きじゃない、なんて言っていたけれど、○がつく日は全部人と会った日だったんです。人と会って、人と交流してよりよい社会を創ろうとしていることが幸せだったことに気づきました。心の研究をして、幸せの研究もしているのに自分の幸せに気づいてないなんて…。40数年生きてきてようやく気づきましたよ。

私の希望もあって心理学の分野で実証することになった。たくさんデータをとった。たくさん幸福研究の論文を読んだ。そして仮説を実証するいい方法についても思いついた。仮説とはまるばつを行うと自己理解が深まるという仮説だ。自己理解を測定するのは難しいが私が考えた方法なら被験者に意図を気づかれず測定できる。さらに理論の更新もできるものだった。

研究の観点からのカレンダーまるばつ法の意義についての記事を書いたのでこれもみてほしい。

しかし、この仮説を実証する実験には失敗してしまった。そして、そのまま副産物である論文等を投稿しなんとか博士を取得した。とはいえ収穫もあった。主観的幸福研究の第一線で活躍しているヴァージニア大学の大石繁宏教授と共同研究し、ラボに3ヶ月短期留学させてもらったりといろんな経験ができたのだ。

大石繁宏先生の著書。幸福研究のバイブル。

こちらは前野先生の著書。まるばつ法のことを紹介してくださっている。

アプリ開発

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私はふたたびサラリーマンになっていた。まるばつ法のアプリを作りたいなぁとなんとなく思っていた。ある日、まるばつといっしょにその日のカメラロールやツイートをみれるようにするアイデアを思いつく。幸運にもMacBookProを持っていたのでiPhoneアプリを土日に作成し始める。作り始める前にswiftの書籍とかを1ヶ月くらい読んで勉強していたけどあれは時間の無駄だった。目次だけ読んでおいて、作り始めてわからなかったら読むのがよい。プロトタイプは1ヶ月でできた。想像していたより簡単だった。OSSを導入するのが楽しい。開発初めて3ヶ月程度でAppStoreに申請してリリースした。

私がよくみるさまざまなOSSを集約しているサイト。

リーン・スタートアップという本にも感化された。


リデザイン

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アプリはリリースしたけど、それほどダウンロードされない。2回ほどバージョンアップしたが、手ごたえはあまりなかった。今後、どうすべきか悩んでいた。UIデザインについて勉強したことがなかったので我流でやっていたので自信がなかった。煮詰まっていた。

そんな時、ツイッタ―でTaiki IKEDA(@iTiekey)さんが勝手にリデザインを募集しているのをみつけて、だめもとで依頼してみた。ありがたいことにリデザインしてくれた。自分では思いつかないようなデザインだった。とても刺激をうけたし、何より停滞していたやる気が復活した。UIデザインにも興味をもった。

Taiki IKEDAさんのカレンダーまるばつ法のリデザインの記事は残念ながらきえてしまっている。私も以下の画面キャプチャーしかもっていない。

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Taiki IKEDAさんのデザイン面で参考になったブログ。いつも実践的ですぐに役に立つブログを書いてくださる。


機能追加

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これまでのコンセプトは世界一かんたんな日記であった。まるばつするだけでいいと思っていた。しかし要望があったため日記機能をつけてみることにした。そうするとこれまで思いつかなかったアイデアを思いついた。日記を形態素解析して単語を抽出してその頻度を集計して、まるの日、×の日に多くみられる単語がわかるようになれば、このアプリの目的である自己理解(自分がどんな日に満足し、どんな日に満足しないかを知ること)につながるのではないだろうかということに気付く。新しい機能がさらに新しい機能を生み出すのだ。そしてさっそく実装しリリースした。

ピボット(2019/05)

グロースハックの重要性に気付き、ユーザの動作を分析して、どうすればリテンションレートを上げられるかを考えることにした。まず分かったことはアプリをダウンロードしてチュートリアルを完了してもその内の半分しか日記をつけるまで至っていなかったことだ。そこでもっと日記を入力しやすいようにUIを変更した。

そして、これまでアプリのターゲットを絞りきれていなかったので絞ることにした。この時点で、このアプリは、幸福度を測定するアプリなのか、価値観の変化に気づかせるアプリなのかどっちつかずになっていることに気づいた。たとえば、まるばつの判定を当日から遡ってできないようにしていたのは、純粋な幸福度を測定するためであったが、しかし、それは使いにくさを生んでいた。

ここまで書いたようにこのカレンダーにまるばつをつける手法は自分自身の価値観の発見を第一に考えている。幸福度測定はその副産物だ。そのため、私はこのアプリを自分発見日記とすることにした。そして、ターゲットは一人旅をしたいなぁと考えるような人と絞った。そこから、アプリ名も"カレンダーまるばつ法"から"tabi"に変更し、旅から連想した動物であるペンギンをキャラクターとして採用した。

また、これまでiOSの最新版にしか対応していなかったものを過去のバージョンでもインストールできるように変更し、ASO対策も行った。日記らしくテーマカラーの変更にも対応した。さて、どうなるか?

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