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今だからわかる社会人が博士を3年で取得する方法

   博士を取得するのは大変である。私は学部や修士課程とは全く異なる分野で博士を取得したため6年かかった。しかし、自己分析すると、それとは別に私が博士取得に時間のかかった理由は2つある。戦略のなさとこだわりの強さである。逆にいえば、この2点だけ気を付けていれば博士は3年で取得できるだろう。いやもっと早く取得することも可能だ。タイトルに社会人といれたがこの記事で紹介する方法は、社会人以外でも使える方法だ。

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博士審査基準を知ろう

 まず、大事なポイントを最初にいくつか。大学院によって研究科によって博士審査基準が異なる。博士審査基準とは、博士審査に進むための条件といったところだ。たとえば、以下のような感じでHP等に書いてある。これは熊本大学大学院自然科学教育研究科のHPからとってきた。

厳正な査読を受け学術誌・専門誌に掲載された論文が2編以上あること。その内、少なくとも1編は英語によって著述されたものであること。

 私のいた研究科の場合は、3ポイント必要だった。査読付き投稿論文1本が雑誌に掲載されると1ポイント、国際会議で発表で0.5ポイント。ただし、国際会議は1ポイントまでという条件付き。このポイントの合算が3ポイントないと博士の審査をしてくれなかった。これは比較的厳しい基準だ。きいた話では東大のどこかの研究科でも査読付き投稿論文1本でいいところもある。つまり、よく事前に調べたうえで入学する研究科を決めた方がいい。この先生に指導してもらいたいといったこだわりがないのであれば、博士審査基準の甘い研究科に入学したほうが博士を取得しやすい。

査読付き投稿論文とは

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 査読付き投稿論文とはいわゆる大学が発行している雑誌とかではなく、学会などが出版している学術誌だ。有名なところでは、サイエンスやネイチャーといったところか。これかはかなり有名な雑誌だが、それ以外にも各分野での一流誌というものがある。たとえば、社会心理学でいえば、Journal of Personality and Social Psychologyや、Psychological Scienceなどがある。
 査読というのは、投稿された論文の審査である。その雑誌の質を維持・高めるためにも必要なシステムで投稿された雑誌はその雑誌の編集者が査読者(同業者のことが多い)にわたり、審査される。審査の結果、さまざまな指摘をうけ、一発で掲載不可になることもあれば、指摘点を直したり、指摘に対する反論をしたりといったことをして再投稿して、また、コメントが返ってきて、それにこたえて再投稿して、リジェクト(掲載不可)になることもある。私の研究のひとつは、初投稿からやりとりして1年後にリジェクトが確定したものもある。つまり、投稿論文ができて投稿してなんだかんだ1年頑張ったがなんのポイントにもならなかったのだ。

論文の審査には時間がかかる

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 このように、近年は昔に比べれば短くなったとはいえ、論文の審査には時間がかかる。逆算してみてほしい。

 3年で仮に3本投稿論文が博士審査に進むために必要ならば、だいたい3月に卒業する場合、博士審査に申し込むのは11月くらいだったはずなので、その一年前、博士課程の2年生の秋には、3つの投稿論文を投稿して審査待ちでありたい。3年で博士を取得するならば。そうすると研究に使える時間は、1年9ヶ月くらいである。1年9ヶ月でテーマを決めて、先行研究を調査し、仮説を立て、実験計画をたて、被験者を集めて、データを取り、データ分析して、投稿論文の体裁にまとめることを3本分やらなくてはならない。いや、3本だと心もとない。なぜなら、投稿した雑誌が最終的に受理されるかどうかなどわからない。もう2本分くらいネタがほしい。それに計画した実験があなたの仮説を支持するようなデータが得られるかわからない。無理じゃないですか。。。そんなの。

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こだわりを捨てよう

 あなたがただ博士という資格がほしいのなら、よい雑誌に載せたいとかインパクトのある研究をしたいといったこだわりをすてよう。博士をとってから投稿したっていい。とにかく審査の過程に時間がかかるのだ。特によい雑誌というのは本当に質にこだわらなくてはいけないので社会心理学でいったら、ひとつの仮説を実証する論文で、4つ、5つの異なる実験でそれを実証してみせたり、かつ一貫した強い結果がでないと一流誌には掲載されない。ではどうするか?

国内の人気のないけど査読している雑誌をねらおう

 できて間もない学会、雑誌をさがそう。ここで注意したいはよく確認することだ。この雑誌でも博士審査基準のポイントになりますか?と偉い人に確認しておこう。

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自分がよく知っている分野で勝負しよう

 私の失敗というか失敗ではないのだが、挑戦だったところはまったく知識のない分野に挑戦したところだ。当たり前だが社会人は仕事と密接な分野がよい。一番いいのは仕事をしていたら論文が書けるというもの。もし3年で博士を取得したいのであれば博士課程に入ってから勉強するのは遅い。

投稿論文のドラフトを書いてから入学しよう

 もういっそのこと自分で投稿前の論文を入学前にかいてしまうのは手だと思う。実験によるデータ収集が必要な場合は、実験計画書をかなりのレベルまでに仕上げた方がよい。理由は前述のとおり、投稿論文は時間がかかるからだ。
 先行研究の文献調査は、大学などからアクセスができる論文の本文が読めないと厳しい面もあるが、Google Scholarならアブストなら読める。
 さらにいえば、最近はpdfで公開している場合も多く、著者のHPにいけばダウンロードできることもある。必要であれば、メールして論文くださいと言ってみるのも手だ。メールを返してくれることもある。

受験前(入学前)に指導教員とたくさん打ち合わせしよう

 入学前でも指導してくれる先生もいると思うので、自分の論文のドラフトや実験計画書、もしくは先生が忙しそうなら2ページくらいにまとめたものを用意して先生と打ち合わせしよう。先生との相性や方針のすりあわせ、先生の出したい学会、学術誌もあるかもしれない。

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まとめ

1. 博士審査基準の甘い大学院、研究科をえらぼう
2. 自分の知っている分野や実務に関連のある分野で挑戦しよう
3. 一流の雑誌はあきらめて、できて間もない学会や雑誌をみつけて投稿しよう
4. 入学前に投稿論文ドラフトや実験計画書を高レベルで用意しよう

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それでも自分のやりたい分野で一流誌を目指したい場合

 がんばるしかない。しかし、本当に博士のうちにそれを投稿する必要があるかよくかんがえよう。博士を取得してからでもいいのでは?すくなくともハイレベルの論文はその学会の一流の先生でも構想から掲載まで5年程度はかかるかもしれないということは理解しておこう。自分の仮説とどういう理論をどのように更新するか、どうやって実証するかを説明する資料をつくって、自分が投稿したい一流誌に掲載経験のある先生にみてもらってもいいと思う。 一流誌への掲載は本当にむずかしいし運とコツと流行がある(多分)。

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